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GHOST HUNTER  作者: 火取閃光
第1章 造形士
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1-7 自己紹介! みんな個性が強いのよ…

 土御門景政と神楽坂真の睨み合いが続く。彼にどう言う意図があってこの発言をしたのかは分からない。ただ、1つ言える事は教室内の空気は間違い無く死んだのだった。


「ふっ、豊ちゃん……俺、これから依頼があるんだわ。だからもう行くわ。後の事はよろしくー!」


 景政は突然笑い出してそのまま立ち上がるとさっきの空気は何だったのか? と思わせるほどに雰囲気を変えて廊下をダッシュして消えた。


「え、えぇ〜〜?! ちょ、ちょっとっ!? 土御門くんっ!? ま、待ちなさい〜〜!!」


「えぇ〜?? 土御門景政(ツッチー)、この場の空気を最悪にして出ていきやがったんですけどー? 花蓮ちゃんその辺幼馴染としてどうなん?」


「はぁ……。私振らないでよ……」


「ふんっ! やはり、イケメンは糞です。景政(イケメン)なんて死ねば良いのに……!」


「あわわわっ……! よ、与四郎君……ど、どうしようっ!?」


「チッ。隆盛、五月蝿ぇぞ。あの天才様の言動や行動なんざいつも通りだろうがよ。どうでも良いから適当に自己紹介とかして終わらせんぞ」


「そ、そうだねっ! 初めまして! ぼ、僕は、賀茂(かも) 隆盛(たかもり)です。真君はその……お久しぶりです。その、元気……そうで良かった。2人ともよろしくね」


 賀茂隆盛と名乗った小柄な少年はオドオドとした態度で何度も視線を向けては逸らしてを繰り返す。とても自分に自信が無いのが伺えた。


 彼は強そうな名前のイメージに反して背丈は150cmあるか分からないほど小柄で可愛らしい見た目をしていた。


 しかし、やはり名家生まれだとひと目見たら分かる程に整った顔立ちをしていた。それは、女性的な顔立ちのオトコの娘と言うよりもショタっぽさの方が似合いそうな男子生徒だった。


「お、おうっ! よろしくな!」


「うん。元気そうで何よりだね。賀茂君」


「っ!? うん! 僕の事は隆盛って呼んでね! それでコッチの不良っぽい見た目の「不良言うなや」っ!? イダッ!?」


「おう。神楽坂、報告会以来だな。そっちのお前は初めましてだ。俺は幸徳井(かでい) 与四郎(よしろう)ってんだ。唐突で悪ぃがモフっても良いか?」


 幸徳井与四郎は大柄で筋肉質な少年だ。とても同い年くらいには見えない程に強面で目付きが鋭い生徒だが狼怪異(オレ)を見る目はとても幼く見えた。


 隆盛と与四郎の関係から見ても分かる通り賀茂家と幸徳井家は五大名家の中でも特に近しい家柄をしている。彼等は幼馴染と言う関係だがまるで兄弟の様に接している。


 自己紹介の時に緊張や不安で自信が無かった隆盛が与四郎と関わった時に年相応の明るさを発揮していた事もありその関係は良好だと伺えた。


「あっ! 僕も触りたいっ!」


「お、おうっ! 優しくな?」


 狼怪異になって良かった事があるとすれば彼等の様に初対面でもコミュニケーションが取り易くなった事だろうと思った。


 勿論だが同性である彼等に撫でられたり抱きつかれたりして喜ぶ性癖では無い。どうせされるなら異性の方が良いに決まっている。


 それに加えて自虐ネタとは言え人間に撫でられたりする対応へ少しだけ悲しさもまだある。ただ、それを引っくるめてもこの狼怪異(みため)はまだマシなのかと思っていた。


「ふふっ。2人とも、相変わらずだね」


「あぁ? あぁ…….まぁ、俺も隆盛(コイツ)もあの天才様から目の敵にされてっからな……。俺は去年、暴力沙汰で留年してるし……」


「僕は"賀茂家の落ちこぼれ,,だしね……」


「それを言えばボク達神楽坂と土御門の因縁も相変わらずだよ……」


 俺達が通う私立遊戯高等専門学校、通称"遊専"は100年程前に神楽坂一族が創立した歴史ある私立の高専だ。この学校は主にエンターテイメントに特化した学業を学ぶ事で社会へ羽ばたく事を目的としている。


 この学校を創設した神楽坂真の祖先である尽賀(ジンガ)は、怪異討伐で傷付いた心や身体を癒して欲しいと言う思いとGHOST HUTERとして活躍出来ない人達の就職先を作る為に創立したそうだ。


 覚醒者は生まれや怪異に襲われるなどして目覚める者が多いが、目覚めた人達全員が戦いに向いている訳では無い。


 個人の性格や価値観などの適性上から向いていない若者達が先に戦場で命を落とす。尽賀を含めた当時の聖十字教会の幹部達は彼等の逃げ道が無い事を悩んでいた。


 覚醒者として目覚めればどの道一般の人から外れた存在になる。それは一般社会にとって悪い影響しかない。それも当時は今ほど怪異についてオープンでは無かった事も要員の1つと言える。


 そんな中で生まれた逃げ道こそが尽賀の作ったこの学校だった。しかし、当然ながら創立当初は五大名家、それも土御門家から強い非難があった。


 今もそうであるが当時はGHOST HUNTERの人手はまるで足りていない。怪異は増える一方なのに人手は減る一方。状況が悪化し続ける中での尽賀の策。


 減った分の負担は名家に皺寄せが来るとなれば堪ったもんじゃ無いと言う思考になるのは必然だった。元から神楽坂は五大名家の中でも異質な一族だった事もありこれを機に名家筆頭の土御門家との因縁が始まった。


 彼等は寛への撫で回しを止めると気不味そうな表情で視線を逸らした。今でこそ神楽坂尽賀が若者の未来を切り開いた結果、巡り巡って名家の負担が減った事もあり非難をした家としては申し訳なさがあった。


 そんな空気が漂う中、当の本人である土御門景政が教室から居なくなった事で頭を抱えていた黒髪の大和撫子みたいな少女が俺達の方へ歩いて来た。


「ちょっとよろしくて?」


「お、おう……。こんな状態で良ければ……」


「さっきはあの景政(バカ)がごめんなさいね? 私は倉敷(くらしき) 花蓮(かれん)。本当に、本当に、不本意ながらあの馬鹿の幼馴染をしているわ。

 

 神楽坂君、景政(つちみかど)に代わって謝罪するわ。あの馬鹿がごめんなさいね。そっちの貴方も気分を悪くさせてごめんなさいね」


「いや、倉敷(きみ)が謝罪することなんか……」


「いえ、私にとってあの馬鹿は手の掛かる弟だわ。だから、あの馬鹿が謝らないなら姉貴分の私が代わりに謝るわ」


 倉敷花蓮はため息混じりにヤレヤレと頭を張った。そのお嬢様然とした整った顔立ちから見える鋭い目付きはまるで豹を彷彿される一方、美しさと気品を寄り際立てていた。


「えっ……? そうなん……??」


「いや……? 確か花蓮さんも景政(アイツ)もボク達と同い年だったと思うよ……」


 真から話を聞くに倉敷花蓮と土御門景政はお互いがお互いの事を弟や妹として見ている仲らしい。何かある度に衝突する景政の尻拭いをする一方で術者として景政が教える事もあるから自然とそうなったらしい。


 景政によって死んだ空気が段々と賑わいを見せ始めた。そんな時、恐らく一般人に誰よりも近い空気感を漂わせた女子達が近付いてきた。


「うはぁ〜! 本当に犬が喋っている。面白〜い。あっ! アタシは斉藤 優希(ゆうき)ね。寛? と同じく一般人から覚醒した元一般市民だよ。よろしくね♪」


 斉藤優希と名乗る女子はギャルっぽさがある軽い感じで近付き明るくピースして笑った。


「イケメン死すべし。慈悲は無いっ……! リア充、陽キャ、男なんてみんな爆発すれば良いのに……!!」


 対して優希が連れて来た眼鏡でキリッとした古風な委員長風の女性は真や隆盛、与四郎を見て何か物騒な事を呟いていた。


(オレ)もダメですか?」


「ダメです」


「はぃ……」


「あはは……。この子は田中 小春(こはる)。眼鏡で三つ編みの委員長感あるけど何故だかイケメンと陽キャ、リア充に恨みを持つアタシと同じ元一般市民だよ。昔はそんな事無かったんだけどね……」


 どうやら優希と小春は顔見知りらしい。小春の変わり様に優希は苦笑しながら寛を撫で回した。


「真……みんなして俺より個性(キャラ)が濃すぎるっ……!! 俺の存在感薄れちゃう!? どうしよう……!?」


「あはは。ボク達、空気だね……」


 こうして俺達の学園生活が始まったのだ。

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