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GHOST HUNTER  作者: 火取閃光
第1章 造形士
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1-6 新生活とトラブル!? 

 一般人が通う正門から少し離れた西門に俺達は居る。西門は一般人には気が付かれない様に隠蔽と人払いの結界が施されている。だから俺達の存在など誰も気に留めない。


「おぉ〜ここが、今日から俺達が世話になる[私立遊戯高等専門学校]か〜。それにしてもよ〜真、本当に俺も転入出来るのか……?? 


 俺、元は確かに人間だったけれども……今は狼怪異だし見た目は大型犬に近い感じだから超絶不安なんだけど……??」


 俺は新しい学校生活や新たな出会いにワクワク、ドキドキしていた。その反面、同時に自身の見た目や事情に対してこれから同級生になる人達へどうしようもない不安を感じブルーな気持ちになっていた。


「もう、まだそんな事言って居るの? この前、説明したでしょ? "私立遊戯高等専門学校(ここ)はボクの曾祖父様が創設した学校でボクの一族が代々理事を務めている"って。


 それに、一般入学者とは違ってボク達が行く校舎は第二校舎だから基本的に他の学生には会わないし周辺には結界とか貼られて居るから来れないよ」


 そんなグダグダしている俺を見て真は呆れながらも少し安心した。それは、寛の人間らしい表情や感情を感じ取れたからだ。


 真は寛に見せていないだけで心の中では少し不安だった。親友(ヒロシ)が怪異になってまだ数ヶ月しか経っていない。


 それまでの間、お互いに自身の事で手一杯だったからこうして人だった頃の親友との何気ない会話が少し遠い記憶の様に思えて懐かった。


「で、でも……! 真の実家のコネで裏口入学とか……他の学生よりも優遇処置とかされているから虐められないかな……??」


「今更じゃ無い? そもそも、裏口でも無ければ怪異(ヒロ)が転入なんて無理だと思うよ」


「そ、そう言われると、そう、だよな〜〜はぁ……。でもなぁ……」


霊的関係(このぎょうかい)者がそんな事を一々気にするわけないよ! ほらっ! グダグダ言っていないで早く行くよ!」


「チョッ!? 待てよ〜〜!!」


 ちょっとだけ情け無い表情をした親友(ヒロ)を見て真は笑う。自身の事に少しだけ余裕が出来たから見えた人間だった頃に見てきた光景。姿形が変われど変わっていない所に安堵しながら2人は校内へ向かった。



 ーーー


 ーー


 ー



 職員室で挨拶をした後、担任の先生へ案内されるまま俺達のクラス教室に辿り着いた。教室内には10人にも満たない生徒達がおりそれに伴って普通の学校よりも教室が狭く造られている。


 一般入学者が通う本校舎とは違い俺達が居る校舎は旧校舎と言う認識だ。所々が少し本校舎よりもボロいが教室内にはエアコンが完備され快適な造りになっている。


「えーっと……今日からこのクラスに転入してきた神楽坂真君とその契約怪異の寛君よ。みんな、よろしくね」


「神楽坂 真です。岳南高校から転校して来ました。気軽に話しかけてくれると嬉しいです。よろしくお願いします」


「えっ!? えーっと……同じく岳南高校から来ました佐久間 寛です! こんな身体(ナリ)ですが少し前まで一般人の元人間でした!


 ぶっちゃけ、(コイツ)ん家のコネで裏口転入しました! その辺りも気軽に弄って良いのでどうぞよろしくお願いします!」


 狼怪異(こんな)姿ではまともな転入手続きなど出来ない事は誰が見ても分かる。それはさっき真から指摘された事だ。だからこその自己暴露だ。


 この学校に転入試験があるか分からないが裏口入学を事前に暴露する事でこの先起こり得るトラブルを無くそうと思った。


 その結果、半数近くに笑いが起きた。掴みは上々といった所だろう。内心で高らかにガッツポーズをした。


「2人とも自己紹介ありがとう。私はこのクラスの担任で橋田 豊子(とよこ)と言うわ。よろしくね」


 俺達の担任である豊子は小柄で優しそうな見た目だった事もあり、何と言うか凄く普通の先生って感じで少し拍子抜けした。


 怪異関係者は何処か普通の人とは決定的に違う雰囲気を漂わせている。それが、覚醒して得られる霊力や殺伐とした強者感(くうき)などである。


 しかし、目の前にいる豊子はそれが感じられない。何処にでも居る明るい優しそうな一般人。それがとても可笑しく思いながら俺達は挨拶を交わした。


 そして、いざ真と共に席は案内されると言う時に1人の男子生徒が胡散臭い笑みを浮かべながら挙手をする。


 その生徒は不良とまではいかないが制服を着崩した格好で居たが、同時に何処か外面の真に似た気品の様な空気感を漂わせていた。


「ハーイ、(とよ)ちゃん。しつもーん」


「土御門君? 豊ちゃんは辞めなさい。それで何かしら?」


 土御門と呼ばれた男子生徒に呆れた表情でため息を吐く豊子。


「霊能力者を育成する神聖な学舎でー、元人間の現怪異(いぬ)畜生と一緒に学びたくありませーん」


 土御門はニコニコと皮肉たっぷりの笑みを続けるとまるで何でもない様な雰囲気のまま言った。和気藹々とした教室の空気が一瞬で凍り付いた。そして、俺の隣から殺気に似た怒気を放ち彼を睨み付ける真が居た。


「……土御門君、先週も言いましたよね? 彼の転入は学校側としても実験を加味して居ると。それに彼の存在はレアケースよ。


 彼は造形士(メイカー)が直々に怪異にした存在であり神楽坂家の秘術により契約した怪異。通常の怪異と何処がどう違うのか? 


 それを調べる為に管理する為に契約主である真君の側に置いておく事方が双方に良い結果を齎すと判断したからだと。貴方の言い分は少し言葉が過ぎるわ。撤回しなさい」


「嫌でーす。俺達はこの学舎で(おまえ)の様な化物供をぶっ殺す技術や知識を得る為にここに来てんだよ。だから、お前はお呼びじゃねぇんだ。さっさと早く失せろ」


 さっきまでの笑みは何だったのか? と思うほど厭らしい笑みを浮かべた土御門は狼怪異(オレ)を見下した様な態度を取る。


「な、なんだとーっ!? お前、凄え嫌な奴だなっ! 第一印象最悪だ! 俺、お前の事が大っ嫌いだ!」


「ハンッ! あぁ、そうかよ。俺もお前の事が大っ嫌いだ。それにコイツ等も教室(ここ)じゃ言わないだけで心の中じゃ大なり小なり俺と同じ事を思ってると思うぜ?」


「な、なんだとーっ!!」


 土御門から視線を外して他の人を見る。露骨な反応は居なかったがさっきまで好意的な視線を向けていた女子2人が少し俯いて居る気がした。


 彼女達は他のメンバーよりも一般人に近い雰囲気だった。しかし、それは豊子先生とは違う違和感が無い雰囲気の子達だ。それが故にその事実に愕然とした。


 やはり、怪異(バケモノ)である自分は人間に受け入れて貰えないのか? と落ち込んでいると一歩前に出た真が土御門を睨み言い放つ。


「土御門 景政(かげまさ)。彼はボクの契約怪異(あいぼう)だ。彼への侮辱はボクの"神楽坂,,への侮辱だ。早く撤回しろ」


「やぁ、やぁっ! 神楽坂君じゃ無いか! 久しぶりー! 元気してたー?」


「っ! おい、巫山戯るなよ……!!」


「別にぃ? 巫山戯てないよ? って言うか君の方こそ巫山戯るのも大概にしなよ? 日ノ本五大守護名家である土御門と神楽坂は対等な関係だ。


 五大名家は古くより天皇陛下の命令で怪異から日本の民達を守護して来た一族だ。仮に君のお父君や亡くなった兄君の契約怪異(パートナー)なら今の発言は撤回するし謝罪もしよう。


 しかし、(コイツ)はどうだ? 俺達の義務を果たせる実力があると思っているのか? こんな弱者(カス)みたいな怪異(バケモノ)に務まる程に俺達の使命は軽くはなかった筈だが?


 俺の言葉に誤りはあるか? "落ちた神童,,の神楽坂 真君?」


「っ!?」


 景政のドロリッと暗く粘ついた視線と表情を受けた真はその言葉を聞いて顔を顰めた。彼の言葉は過激で看過出来ないモノだったが同時に理解出来るだけに言い返す事が出来ずただ睨み付けるしかなかった。

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