第89話〜社交ダンス?〜
それではどうぞ〜
「ダンス…?」
いきなり出てきたダンスと言う単語に理解が追いつかなかったためにそう聞いてしまう。…タンスなら知ってるんですけどね。
「ダンスと言っても社交ダンスです。」
もっとよく分からんの出てきた。社交ダンス…?何それ……
「親睦とかつきあいを深める目的で行われる男女1組になって行われるダンスです。」
「なるほど………」
「その反応を見るに、やはり知らなかったようですね。」
安心してください、私がちゃんと教えますからと言う綾香さん。運動はあまり得意ではないからお手柔らかにお願いしたい。
「数時間でマスター出来ますよ、簡単ですから。」
他にもあるし…とボソッと呟いた綾香さんを見ながら、難しいのだけは勘弁してくださいとお祈りする俺だった。
「つきましたよ。」
あれから20分程で目的地についたようで。つくまでは何気ない雑談をしていたので退屈は一切無かった。
「ここが?」
「ええ、ここです。」
…でかくね?まずはダンスの踊り方を教えてくれるらしい。
踊る機会があるかどうかはわからないがせっかく教えてくれるのだ。真剣に頑張ってみよう。
「ようこそいらっしゃいました、綾香お嬢様」
入口に向かうと執事のような人が声をかけてきた。お辞儀してる。様になってる……
「人の前でお嬢様はやめてくれないかしら…」
今更ですよ綾香さん、と思ったものの口には出さなかった。
「それに、彼を狙ってるのは海莉です。あなたが心配する事はありませんよ」
「そうですか、それは失礼しました。」
お辞儀の時チラッとこちらを見られたのは何か意味があったらしい。というか狙ってるって何を!?
「私の口から言うのは…ねぇ?」
「その通りですな。彼女の気持ちに気付いて上げるのが男の務めかと。」
何の話かさっぱりわから無いんですけど……
「それよりも、どうぞ中へ。いつまでもこんなとこで話してても仕方ありませんから」
「案内しましょう。こちらです」
そうやって案内してもらった先は…個室?
「社交ダンスにはそれに適している服装があるので、まずはそれに着替えてもらいます。…お願いね」
「お任せ下さい。こちらへどうぞ、佐久間様」
佐久間様はちょっと……様をつけられるほど偉く無い。
「ではまず、サイズの方を測らせていただきます。」
そう言って色々と確認していく執事さん。手際が良いなこの人…
「ふむ…こちらの方を、どうぞ。」
「ありがとうございます。」
そう言って渡された服を着ていく。動きにくいんじゃ…?と思ったが、そんな事は無かった。普通に動きやすい。
「それが、社交ダンスにおける正装でございます。どれが何かまではわからなくともそれがあれば社交ダンスは完璧でしょう。」
お嬢様から譲渡するように言われておりますので、お持ち帰りくださいと言う執事さん。…え、くれるのか?本当にいいのだろうか…。
何となく、高そうなんだけど…
「何度も着ることになるでしょうから、その都度店から借りるよりお得になるとの事です。」
何度も着ることになるのか、俺……。つまり何回も社交ダンスをやることになるわけですね。
「慣れれば案外楽しいものですよ。」
そんなものなんですかね…。まぁでも楽しむのって大事だしな。
「おや、綾香様の方も準備が出来たようですな。では行きましょうか。」
「あ、はい。お願いします。」
まぁ俺が着替えてるんだから、綾香さんも着替えてるよね。
「こちらから入れます。どうぞ、頑張ってください」
「ありがとうございます、本当に」
色々してもらったし応援してくれたので、お礼を言って入っていく。
歩いていくと……1人の女性が立っていた。綾香さんだろうけど……
「あら、お似合いですよ優成くん」
「ありがとうございます。…綾香さんの方もよく似合ってますよ」
やっぱり綾香さんだった。近付くと分かるけど、遠くからだと誰かわからないぐらいに美人だった。服も相まって近付きにくいというか…
「そう言って貰えて嬉しいですね。…さ、では早速始めましょうか。」
「はい!お願いします!」
それではまた次のお話で会いましょ〜




