第37話〜珍しい登校〜
それでは〜どうぞ
「気を付けてね……?」
「危ないことは何も無いから大丈夫だよ。行ってきます」
あの後2日経ち、転校する通信制が決まったのは良いが、書類やらなんやらの関係で1回は行かないといけないらしい。なのでこうして久しぶりの登校という訳だ。
あまりにも海莉が心配しすぎだし、帰りになんか買って帰ろうかな…何がいいかな…と考えながら登校してたらついた。さて、今日は何が起こるかな〜
……起こって欲しい訳じゃないからね?
「それでは、今日の授業はここまで。昼しっかり食えよ〜」
…何も無かった。びっくりするぐらい何も無い。いや、正確には数人が恨みの籠った視線でこちらを見ているような気がしないでもないが……まぁ気のせいだろう。恨まれるようなことした覚えがない。
あと数人の先生からも恨みの視線で見られてる気がするが……それも気のせいだろう。うん。
「さて、いつものとこで飯食いますかね…」
いつまでも教室にいるのはちょっとな。
「ああ、佐久間。書類、放課後帰る時に取りに来てくれ。職員室な。」
「あ、はい。OKです。」
放課後か。帰る時についでに寄ればいいし確かに楽だな。……ん?たしか今一瞬こっちを見てきたあいつ生徒会だったような……
まためんどくさい奴らに絡まれるのか。今日は全部無視でいいかな?いいよな、うん。海莉にも無視して早く帰ってきてって言われてるし。
…うん、上手い。海莉ほんと料理上手だよな。午後のやる気も出る。あと数時間だしな、頑張るか!
「失礼、佐久間優成くん。今すぐ生徒会室に来て貰えるかな?どうしても忙しいのなら放課後でも構わないが……」
話しかけてきた生徒会の人の方をちらっと見て、スマホに視線を戻す。
「え、ええと…聞こえているだろうか?」
お、フォロワー増えてる。…そういや、メンバーって言って有料会員限定のLIVEとかできるからやりましょうって進められたな〜。あれ、そろそろ返さなきゃ。
「し、失礼?佐久間くん。聞こえている…かな?」
「うるさいな。で、何?」
「い、今からか放課後に生徒会室に…」
「断る。せめて要件を言え要件を。来いっていえば来て貰えるとでも?」
「か、会長が謝罪したいことがあるとの事で…」
「ほう。謝りたいのにこちらから出向けと?」
随分と舐めたこと言ってるな。謝る気あるのか?普通謝りたかったらそっちから謝りに来るべきだろうよ。
「謝る気がないのはよく分かったから帰ってくれ。そんなのに時間を使ってる暇はないんで。今日は寄り道したらまじで怒られる」
海莉が本気で怒ったら怖い。怒らせるわけにはいかないし。
そもそも来いってどゆことよ。偉そうな貴族じゃあるまいし。いや、まぁ声といい話し方と言いこちらの話を聞かない感じといい貴族っぽかったけど。
「そ、そうか。そう、伝えよう……」
わかってくれたようで何よりだ。…さて、面倒なことになる前に戻るとしよう。あと4時間ぐらいか…?早く帰りたいものだ。
「じゃあ、今日の授業はこれで終わり。お疲れさん、気を付けて帰れよ〜」
結局、今日は何もされなかったな。珍しい、こんな日があるとは。…珍しい所かほぼ無いんだけど。
「失礼します。佐久間です。」
「ああ、佐久間か。…これだ。」
ふむふむ。…うん。必要な書類は全部揃ってるな。
「ありがとうございます。」
「おう。元気でな」
その声とともに扉を閉める。元気でな、が何故かもう来るなよ、関わるなよみたいな感情が聞こえてくるが…なんでだろう。今日こういうの多いな。
よし、これで学校の用事は終わり?かな。
「あ、いた…!あの、佐久間さん!」
途端、全身が冷たくなるような感覚に襲われる。この声は………って、電話?誰?
「…ったく誰だ?…もしもし?」
「あ、優成くん?そろそろ学校終わる頃かなって思って!」
「えらくタイミングのいい事で…ちょうど全部終わったよ。書類も貰ったし、今から帰るよ。」
「そっか!待ってるね?」
「なるべく待たせないようにするよ。あ、そういや………」
「い、行ってしまった………」
声をかけたはいいものの、ちょうどそのタイミングで電話がかかってきて彼はそれに出て帰ってしまった。
謝り損ねちゃった……失礼なことをいっぱいしたから、せめて…って思ってたのだけど。
人として許されないようなことをしておきながら、出向けなんて確かに非礼もいい所だ。彼が怒るのは当然だ。
いや、彼は多分怒らない。自分の事で本当に怒ることは多分無い。そういうのが欠落しているから。
………次、次こそは、ちゃんと。
それではまた次のお話であいましょー




