第241話〜仕事帰り〜
それではどうぞ
「しまったしまった……やってしまった」
思わず寝過ごしてしまった。……事務所の近くの駅からうちの最寄り駅まで少し時間があるため、つくまで寝てようかなと思ったのが失敗だった。
人生で始めて電車で寝過ごしてしまった。……しかも4駅も。
気付いた時は慌てて降りたよね。…戻れば問題ないんだけど時間を無駄にした感じ。
事実、普段ならそろそろ帰れる時間なのに海莉から大丈夫?って言われてるしな。
…電車で寝ちゃって駅通り過ぎた、今から戻ると伝えておかなきゃ。
というか俺、ここ最近寝落ちしすぎじゃないか?…海莉の膝で寝て電車で寝て。
いやまぁ今回のは純粋に仕事で疲れてたというのもあるんだが……
気を付けなきゃな。流石に自分の枠で寝落ちするような事はないと思うが、そんな事が起きたら目も当てられない。
そんなこんなでそろそろ最寄り駅に到着だ。今度は乗り過ごさないようにしつつしっかりと降りる。
時間も時間だし今日はタクシー使わせてもらおうかな?なるべく早く帰りたいし…
運転手さんに住所を伝えて走ってもらう。ほんと、タクシーって便利だよな。
当たり前かもだが乱暴な運転じゃないからある程度リラックスできるし、車だから早いし。
値段は相応に高めだが便利な分それは仕方がない。
自分で免許を持ってないからこういう移動の時には凄く重宝するんだよなぁ……
やっぱり免許は取得した方がいいのかな。割と悩むことも多いけど無くても生活はできるからいいかなってなるんだよな。
でも身分証としても使えるしな〜…本格的に検討してみるのはありだよな。
そんなことを考えているとどうやらついたらしい。
料金を支払ってお礼を言って降りる。荷物も忘れないようにして…っと。
は〜、ようやく着いた。今日は一段と疲れたなぁほんと。
「ただいま〜」
ドアを開けてそう声をかける。…もちろん、ちゃんと戸締りはすぐにする。
「おかえり〜!!」
凄く元気な声が聞こえてくる。…ドタドタと足音もついでに聞こえてくる。
そんなに慌てなくても俺は逃げないし危ないから走るなと……
「おかえり〜!」
「ただいま。ごめんね待たせて」
「無事に帰ってきてくれたからいいの。…あそうだ」
ん?なんだろう何かあったのか…と思い海莉を見ると、上目遣いで海莉は
「ご飯にする?お風呂にする?…それとも、私?」
と言った。……いやいやいや、あの…お決まりでしょ?みたいな感覚でそんな事言わないで貰えますかね。
「どうしようかな…海莉をお願いしたいけど流石に汚いから先にお風呂かな」
「そんなこと気にするなんて…もしかしてっ」
「純粋に海莉が汚れるからなんだけど……」
何を考えたんですかね、海莉さん?そんなやましいことなんて考えてませんよ?
「…ご飯って食べた?」
「まだ。用意はしてあるよ」
やっぱり待たせちゃってたか。先に食べててくれても良かったんだけどな。
「待つに決まってるでしょ。」
「そう言うと思った。…ありがと、お風呂入ってくるね」
「うん…あ、お風呂で寝ないようにね?危ないから」
流石にお風呂で寝ることは無いよ。じゃあちょっと待っててね、すぐ入るから。
「どうかな…最近よく寝るもんね」
ほんとによく寝すぎてどうしようかと思ってるよ俺は……
前まではこんなに寝るような体質じゃ無かったんだけどな。
「それだけ落ち着ける環境が増えたんだよ。…心が安らぐ事が出来てるんだよ。」
なるほど、確かにそうかもしれん。…17年ぐらいはまともに寝れない生活を送ってたんだしそう考えると悪くは無いのかな。
「じゃあ、ご飯用意してくるね。」
「うん、お願い」
「着替えも持っていくね!」
そこまでしてもらうのも悪い気がするけど……大人しく甘えておこうかな。
というか俺の下着の位置まで完璧に把握してるあたり妻感があるよね。
「つ、妻だなんて…」
「おっと。…じゃあ入ってくるね」
ついでに心の声がダダ漏れになるのもなんとかしなければなと思いつつお風呂に向かう。
いや、仕事から帰ってきてお嫁さんに出迎えられるって完全に夫婦だよなぁって思っただけなんだよ……
はい、余計なこと言わないでお風呂行きますね。お腹すいたし……ご飯食べたいし。
あと海莉を堪能したいし。自分で言ったんだから逃がしませんよ!
「あ〜疲れた……」
「お疲れ様。そんなに疲れてる優成くんも珍しいね?」
「特別労力を使ったから…」
「それを自分から言い出してるんだからすごいよね。みんな喜んでくれるんじゃない?」
喜んでくれると嬉しいな。…今回のは特に。めっちゃ頑張ったからその分売れてくれると嬉しさ倍増だから頑張って宣伝しようかな。
「他の人もあんな時間かかってるんだろうかね。…大変だね」
「私の場合は優成くん程はかからないけど、大変なことに間違いないもんね。」
よく頑張りましたとちゃんと褒めてくれる海莉、好き。
「貴方の妻だもん」
「自分で言ってて恥ずかしくないの?」
「恥ずかしい」
でしょうね。めっちゃ顔真っ赤だもん。…でも、俺は嬉しいよ。受け入れてくれてるってことだもん。
それに遅かれ早かれ妻になるわけだし……今更海莉を逃がすつもりはないからな。
「今日の優成くん積極的だね。…ボイスの影響?」
さあ?…別にいつも通りじゃないか?それか単に疲れてるからそういうのが出てるのかもな。
「…どうしよ、ボイス聞いて嫉妬したら」
「その時は気が済むまで俺に八つ当たりしていいし気が済むまで甘やかして海莉以外は考えてない事を分からせるから」
「…嬉しいような、怖いような。手加減してね」
手加減したら伝わらないかもしれないからするつもりは無いぞ。
…実際ボイスを出したくない理由に嫉妬したらどうしよう?ってのもあったからな。
「じゃあ今…ちょっとだけ甘やかして。寂しかった」
「ごめんな。」
海莉がそう言って抱きついてきたので抱き締め返して、頭を撫でる。
待たせてしまってごめん。今度からもっと早く帰ってくるように頑張るから
「ん…もう大丈夫。ご飯食べよ?冷めちゃう」
「もういいのか?」
と言いつつ、本当は俺の方が足りてないだけなんだけどな。
そう思ってると、ご飯食べた後でもう1回と言われた。
確かに食べないと冷めてしまう。…冷めても十分美味しいのは間違いないんだが、せっかく温かいんだから温かいうちに食べないとな。
その後で海莉に癒してもらおうかな。…今日はちょっと一緒に寝るのもありだなぁ
そんなことを考えながらご飯を食べる。当然、海莉にはそんな思考は見抜かれてるのだが…
そうとは知らず元気にご飯を食べ進める俺。やっぱり海莉のご飯は美味しいなぁ…
それではまた次のお話で会いましょう〜




