第12話〜真に、ここから変わる〜
前半はちょっと暗いお話しかもしれませんが後半はちゃんと癒し?なはずです。それではどうぞ
「あんた、何してんの?」
……………終わった。俗に言う詰んだというやつである。
「なんでもいいだろ」
お前に関係はないと抵抗をしてみる。…まあ、無駄だろうけどさ。
「は?なんでもいいわけが無いでしょ?…そもそも」
近付いてくる。
「誰の許可を得て笑ってんの?…あんたが!楽しんでるんじゃないよ!」
そう言って顔を殴られ、その衝撃で俺は壁にぶつかる。痛い。
「だいたい、あんたがいるから…!」
「あんたのせいで…!!何も知らないで、あんたなんかが人生を楽しんでるんじゃないよ!!!」
そう言って俺を蹴る。殴る。ひとしきり嬲っていく。
「はあ……ったく。消えな。」
「え?」
「私の前から。あ、そうそう。」
そう言って、おもむろに歩き出す。行き先は……
「ふん。あんたなんかがこんなもん使うなんて、贅沢なのよ。」
そう言っていつの間にか手に持っていた棒状のものでモニターを壊し、PC本体をぶっ壊していく。…あれ、いつの間に持ってきてたんだ?てかそこまでするかね普通。
なんでここまで俺を嫌ってるんだろうな。俺がいるから自分が自由に出来ないとか?…だったらそもそも産まなきゃいいのに。
「…ふぅ、これで煩わしいものは何も無いね。わかったら早く消えな。」
そう言い放って俺の横を通っていく。…通る時まで蹴らなくても……痛てぇ。
「ごほっごほっ…。…とりあえず、動かないと」
動かないとこれ以上に酷くなる。動くと全身が痛いが、そんなことも言ってられない。
何となく、そこにあったスマホを手に外に出る。
どことなく歩きながら、考える。なんで生まれたんだろう。なんで生きてるんだろう。
俺が何をしたのだろうか。俺はあそこまでされて当然な事をしたんだろうか。一体俺が、何を…
いつの間にかたどり着いていた公園のベンチに意味もなく座り、意味もなく考える。…どれぐらいそうしてただろうか、いつの間にか携帯が鳴っている事に気がついた。
「はい、もしも」
「優成くん!?大丈夫?何かあった!?」
うるさっ。思わずスマホを耳から離してしまうぐらいにはうるさい。
「海莉…さんですか。何も無いですよ、そんなに慌てなくても…」
「ならどうしてそんなに悲しそうな声してるの?…わかった、今どこに居るの?」
「えっと…公園にいますが…」
わかった、そこ動かないでね!と言われ電話が終了する。こちらに来るつもりだろうか。…なんで海莉さんは、そこまで俺に優しくしてくれるんだろう。なんで…
「はあ…はあ…はあ…いた。」
「海莉さん。……何をそんなに慌てて」
「慌てるに決まってるでしょ!…大丈夫?早まったりしてない?」
「早まる…って、何を?」
「そっちの気はなさそうなのが幸いかな。…ほら、立てる?病院行こ?」
「なんでですか?怪我なんてしてないのに…」
「何言ってるの。所々痣があるのに…それに唇だって切れてるでしょ。」
分かったら私と病院に行くよ、と引っ張ろうとする海莉さん。
「行っても意味なんて無いです。お金がかかって終わりです。ほっといて下さい」
「ほっとけるわけ無いでしょ。君がこんなに傷付いてるのに…」
「あの人は私の前から消えろって言いましたから、傷を直そうが何しようがこれから先生きていけませんし。……もう、ほっといてください」
優しくしないで欲しい。どうせ、みんな……
もうこれ以上、俺に……夢を見せないで…
頭の中で思ってた言葉だが、思わず口に漏れてしまっていたのだろう。その言葉を聞いた海莉さんは少し目を閉じ、何かを考えて…
ゆっくり目を開けたと思ったら、俺の目を覗き込んできた。
「私が君を助けるのは、君が大切だから。君がそう思ってしまうのは、仕方ないとは思う。けど、全員が全員君の事が嫌いなわけじゃない。君に酷いことをする人ばかりじゃない。」
「そんなこと…」
「ある。あるの。私がそう。…私は、あなたの推しとか関係なくあなたを助ける。ね、全部私に任せてくれない?きっと何とかしてあげるから」
……駄目だ。これを、この優しさを受け入れるともっと辛くなるぞと警告する脳内。わかってはいるんだ。これを受け入れると失うことが何より怖くなるって。
けど、その声に俺は勝てなかった。…こんなにも真剣に俺を見て、真剣に話し、真剣に考えてくれる。それだけでも俺には嬉しいのに…この人が向けてくれる優しさを、俺は拒絶出来なかった。
次は、声が出なかった。ただ、頷くことだけで精一杯だった。…ここまで俺のために真剣になってくれて、何より受け入れてくれる。それだけで泣きそうだし。
「うん、偉い。…大丈夫だよ、私が居るからね。」
優しくそう俺の頭を撫でた後、彼女は俺の手を引いて病院に向かった。
本当の意味でここからスタートですね。
それでは、また次のお話であいましょう




