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八剣魔王伝〜奏日女護国物語〜  作者: ふくふくろう
9/13

想定外

平三郎将隆はイライラしていた。

亘理伊達家の総領息子も腹立つがそれより忌々しいのは自分自身である。


将隆は女三の宮に恋をしていた。

叔母は先帝の皇后であり鳥羽帝の母であり皇太后であった。

鳥羽帝は言わば年の離れた従兄。

もっとも従兄の鳥羽帝よりはその息子で東宮である薫の宮の方が仲良しで友達だった。

5年前、皇太后の誕生日の祝の席で二人で舞を舞った。

二人の13歳ながらに大人顔負けの技量であり、見目も麗しい少年に宮中の女房は夢中になった。


その宴に女三の宮も参加していたのだ。

身分の低い更衣ながら帝の寵愛を一身に受けた美しい桐壺更衣によく似た可憐で美しくそれでいて儚げな少女だった。

将隆は一瞬で恋に落ちた。


自分は今をときめく平家一門の本家筋である。

平家であり一目置かれながらも所詮三男呼ばわりされていたが今なら都合が良い。

長男なら内親王とはいえ更衣の娘である女三の宮とは結婚できない。

その証拠に一郎は既に皇后の娘である女一の宮と結婚している。

位の高い女御の娘である二の宮も有力貴族に降嫁が決まっていた。


平家とはいえ三男、三男とはいえ平家の自分には女三の宮はピッタリだった。


それから将隆は「平家だから」と言われないよう武道にも勉学にも励み鳥羽帝に結婚を許してもらえるよう努力した。


にも関わらずである。


先の生き神は急死してしまった。

報告書にはわざとらしい程に病死と記されている。

前カナデヒメノミコトは鳥羽帝が戯れに手を付けた端女の娘だった。

宮中に上がれる更衣よりもさらに低い身分で宮中で洗濯を担当していた。

酒に酔って庭を彷徨った帝が酔った勢いで手に付けた女が一度のことで孕んだ。


これには宮中も困った。

しかし、ちょうど先帝の娘が着任しているカナデヒメノミコトが年齢を理由に退任を願い出ていた。

ちょうどよいとばかりに娘が3歳になったら母親と共に下総国に送り出した。

内親王の称号も与えずに。確かに生き神に成るのに内親王の称号は要らない。

ただ、帝の娘であれば良いのだから。


先の生き神は女三の宮とそう年は変わらない。だから考えもしなかったのに事件は起きた。

生き神の急死である。

表向きは病死とされているが真相は、常乙女であるべき生き神がどこぞの村の若者と恋仲になりあろうことか妊娠してしまった。

焦って子を流そうと薬を飲んだが失敗し生き神は腹の子共々命を落とした。


200年ほど前に同じようなことがありその時は怒ったアマテラスが姿を隠し半年も太陽が隠れた。そのせいで作物は育たず日ノ本に大飢饉が起こり多くの民草が飢えて死んだ。


そのような災いが再び起こることをおそれた権力者達は腹の子の父親だろうど思われた周辺の村の若者たちを人柱にすべく生き埋めにした。


本当に父親かどうかは関係なくただそう思われるという若者を片っ端から捉えて埋めた。

その中にはわずか8歳の子どもも含まれていた。


突然、息子を恋人を奪われた女達は涙が枯れても泣き続けた。

生き残った男達も生き神を恐れそして憎んだ。




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