3, 頭部、姫騎士の頭部になる。
響き渡る姫騎士の絶叫。それをアニムは不思議がり、見ていた兵士は大笑いする。
兵士は姫騎士のリアクションに満足すると、大人しくしていろと念を押し、柵の扉の鍵を閉めて去っていった。
残った2人。叫び終わった姫騎士と、アニムとの間に、微妙な空気が漂う。
しばらく経って沈黙を破ったのは、姫騎士の方だった。
「あ……あなたは一体何ですの?」
恐る恐る聞く。
「おや? 喋ってもよろしいので?」
それなりに考えた結果、先程の悲鳴は自分のお喋りが原因だと気づいたアニム。どうやら気を使って黙っていたらしい。
「え、ええ。私の許可が必要と言うなら、許可致しますわ」
「わかりました。ならばお答え致しましょう。我が名はアニム! 喋る生首でございます!」
仰々しい喋りで名を名乗るアニム。
「アニム……さん、ですか。喋る生首というのは見たら分かりますが……それって何ですの?」
アニムと話すうち、段々と恐怖がなくなってきたらしい彼女。今度は好奇心が出てきたらしく、アニムのことを色々と聞いてくる。もちろんアニムも律儀に答えた。
「なるほど……。良く分かりませんが、アニムさんがアンデッドの一種だということは分かりましたわ」
「重要な部分は分かっていただけて何よりです」
「そう言えば、私の方は名乗っていませんでしたわね。私はエスペルと申します。短い間でしょうが、どうぞ宜しくお願いいたします」
アニムのことを普通に話せる相手と認識した女性は、エスペルと名乗った。
「おおっ、美しい名だ。名前を教えてもらえるとは光栄なことです。エスペル殿、名前を仰られたということは……あなたの事情を聞いても良いくらいには、俺を信用してくれた証と受け取ってもいいのですかな?」
名前を褒めつつ、かなりもったいぶった言い方をするアニム。
「え、ええ、構いませんが……。敵意も悪意もないと分かりましたし……」
「それでは不躾ながら質問しますが……、手足を縛られたまま馬車で移動とは、一体どういう事情がお有りなので?」
アニムのその質問に、エスペルは悔しげな表情を浮かべる。
「……そうですわね……。まぁ、秘密にすることもないのですが……、まず私はこの国の王女なのです」
「何と! 王女様でしたか!」
過剰なまでにリアクションを取り、驚きを顕にするアニム。喋ってるときは普通なのだが、一々オーバーに表情を変化させることが、彼の気持ち悪さを増していることに、彼自身は気づいていなかった。しかしそれもしょうがないことなのである。彼には体がないのだから。
エスペルはアニムのオーバーリアクションに、若干苦笑いを浮かべながら話を続ける。
「え、ええ。小さい国ではありますが……。それで、今この国は隣国に攻められておりまして、王都を包囲されてしまったのです。私は何とか王都を抜け出し、まだ領を攻められていない無事な貴族に助けを求めに行こうとしたのですが……。結局途中で捕まってしまい、こうして縛られて敵の陣地へ運ばれている途中というわけですわ」
「なるほど、そういうわけでしたか。俺の方も捕まって、運ばれる最中なのは一緒ですが……別に重たい事情があるわけでもないので、何だか申し訳ないですなぁ」
生首状態のアンデッドというだけで、色々重たい事情がありそうなものだが……。さすがにそこまで親しいわけでもないエスペルは、聞いたりせず曖昧に笑うだけだった。
会話はそこで途切れ、アニムはそこで黙り込んでしまう。何かを考えているようだった。
疑問に思い、訪ねようとしたエスペルだったが、その前にアニムが再び口を開いた。
「ときにエスペル殿」
「はい? 何でしょう」
「もしここから出て、兵士たちを倒す方法が有ったとしたら、どうしますか?」
真剣な面持ちで聞いてくるアニム。
「それは……もちろんそんな方法があるとしたら、やりますわ」
そう言いつつも、アニムの言葉を真剣には受け取っていないのか、どこか諦めた風に言うエスペル。
しかしそれでもその答えには満足したのか、アニムは満面の笑みを浮かべてこういった。
「そうですか! では一つ提案しましょう。麗しの君……、俺を頭部にしてみませんか?」
「はぁ……はい?」
アニムが何を言ったのか分からず、間の抜けた声で聞き返すエスペル。
「俺は理想の体を探す旅をしておりましてね。俺は108の秘技を修めておりますが、やはり十全に使いこなすには、体が必要です。そんな体の頭部になりたいと思い、旅をしているわけです。まぁ、簡単に見つかるとは思っておりませんが……。ともかく、そこで提案というのは、俺を頭部にしていただければ、俺の力を貸せる、ということなのです」
エスペルはしばしアニムの言葉を吟味していたが、すぐに顔を真赤にして怒り出す。
「なっ!? そ……それはつまり首をすげ替えて、私の体を乗っ取ろうということですの!? そんな案に乗れるわけがないでしょう!」
エスペルの怒鳴り声に、アニムは言葉が足りなかったかと反省し、言葉を加える。
「ああ、失礼。そういうつもりではありませんとも。俺も人に会い、生きている人間がそういうことをされるのを嫌うというのを、十分理解していますとも。そこでですね。俺は完璧な解決策を考えました! 人の体と頭を切り離さずに、かつ、俺も頭部になる方法! そう! 俺は頭部の頭部になれば良いのです!!!」
ドヤ顔で言う生首アニム。気持ち悪い満面の笑みが実に小憎らしい。
「……はい?」
またもや間の抜けた声を出すエスペル。今度こそ本当に何を言ってるのか分からなかった。
「だからですね、こう、人の体があるじゃないですか、そしてその上に首があって頭が乗ってるわけでしょ? さらにその上、頭上に生首の俺が乗る! つまり現在の人の姿に、頭がもう一つ分追加されるわけですよ! 縦に伸びるわけです! どうです? あなたの頭部にお一つ、俺でも如何ですか? 名案でしょう?」
丁寧に説明されたエスペルは、ようやく彼の言わんとしていることを理解する。そしてその、生首が自分の頭の上に引っ付いた状態を想像してみる。
「…………嫌です」
ドスの利いた声でエスペルは答えた。
「麗しの君?」
「嫌ですぅうううっ!!! あっありえませんわっ! 見た目が色々とアレじゃありませんかぁああ! 大体、それじゃ乗っ取ることの答えになってないじゃありませんか! 丸ごと乗っ取るつもりでしょう!」
涙目になりながら怒るエスペル。
その様子にアニムは慌てて反論する。
「いっいえいえっ! そんなつもりはありませんとも! 俺はあくまで力を貸すだけ。操ったりなど致しません! そもそもエスペル殿は女性ですし、俺は男。事が済んだら、すぐに分離すると約束しましょう!」
その後もアニムは、彼女を必死でなだめつつ何とか説得を試みる。その行動に感化されたのかどうなのか、落ち着きだけは取り戻すエスペル。
「うぅ……………………すみません。少々取り乱しましたわ……」
「いえいえ、仕方のないことです。……ですが麗しの君、あなたは今人生の岐路に立っているのです。俺を信じるか信じないか……。そのことで未来は変わることでしょう」
「…………」
アニムの言にとても悩んでいる様子のエスペル。それでも最終的に溜息を一つ吐き、答えを決める。
「はぁ……仕方ありませんわね。私の取れる選択肢はそもそも多くありませんし。結局、敵国の兵士たちに命を預けるか、あなたに命を預けるかという選択肢しかないのでしたら……、あなたを選びますわ……。たとえ唆されたとしても、私自身の選択によってそうなるなら、悔いることはないでしょう」
「よくぞ決断なさいました!」
目を輝かせて喜ぶアニムに対し、エスペルの目は半ば死んでいた。やるとはいっても、気は進まないようだ。
「それで……私はどうすればいいんですの?」
「ええ、俺の首の断面に、エスペル殿の頭が重なるよう寝転がってください。あとは俺の方でやりましょう」
「こ……こうかしら」
寝転がってモゾモゾと動くエスペル。手足を縛られた状態といっても、寝ることは問題なく出来る。アニムの首の部分に頭が来るようにするのは少々手間取ったが、何とか形になった。
「よろしい。では行きます! 108の秘技の1つ! 直結化!」
アニムがそう叫ぶとともに、2人を光が包んだ。
馬車から漏れる光に、周囲にいた兵士たちは驚く。そして中を覗き見ようとしたが、その前に大きな音を立てて馬車が破壊され、何かが飛び出してくる。
「なっ何だぁあ!?」
華麗にジャンプし、地面に降り立ったその影。きらびやかに髪をなびかせるその存在は、捕まえていたはずの姫騎士エスペルだった。
「なっ!? エスペル王女! 手足を縛っておいたはず! 一体どうやって!?」
縛っていたはずの手足を自由に動かし、兵士たちと対峙するエスペル。
しかし兵士たちはそんな彼女に、捕まえたときにはなかった『あるもの』が、彼女の頭頂部に乗っていることに気づく。
それは先程捕まえた、喋る生首。その生首が、エスペルの頭の上に鎮座していた。
「はぁああああああああっ!?」
頭が2つ連なっているという、思いもよらぬ出で立ちに困惑の声を上げる兵士たち。
そんな彼らをよそに、エスペルはアニムの力に歓喜する。
「すごい……。次から次へと力が溢れてきますわ! この力があれば……」
両手を握りしめ、その超人的な力に笑みを浮かべるエスペル。アニムもまた、そんな彼女の様子に満面の笑みを浮かべる。
「そう、これこそが我が秘技、直結化の力です。エスペル殿と一体化することで、俺の力をあなたに流し込んでいるのです。今のこの状態ならば、ここにいる兵士たちを恐れることはありません! 皆倒してしまいましょう!」
「なるほど……確かにこの力があれば可能でしょう。逃げることも容易くはありましょうが、すぐに追っ手がかかるだけ。ならば倒してしまったほうが都合が良いですわね」
「おや、姫様も中々好戦的な方ですなぁ。ハッハッハッ」
「ふふっ、褒め言葉と受け取っておきますわ」
二人して笑い合う。上下の頭が会話しあい、そして笑いあうというのは、中々珍妙な光景だった。
しかし兵士たちもいつまでも呆けてはいない。武器を構え、彼女を取り囲む。
「な…何があってそんな奇妙な状態になってるのか分からんが……このまま逃しはせぬぞ!」
冷や汗を浮かべながらも、戦闘態勢を取る兵士たち。
「おや、あちらもやる気のようですな。では、もっと力を解放しましょう」
「ああっ、もっとたくさん力が送られてきますわ!」
何やら光のオーラを噴出し、圧を増すエスペルたち。
「こうして繋がっている限り、力の供給も続きます。麗しの君、気兼ねなく思う存分戦ってください!」
「ありがとう! ふふっ、あなたを信じてよかったですわ。アニムさん、あなたは私の勇者様ね」
「ハハハッ。褒めても何も出ませんぞっ」
アニムを褒めまくるエスペル。ちなみ今の見た目については、彼女は考えることを放棄していたので、一切その事に言及することはなかった。
戦う前にも関わらず、すでに勝利を確信している2人。そんな2人も戦闘態勢を取り、兵士たちを睨みつける。
状況は一触即発の雰囲気。
すぐにでも戦端が開かれようとしたそんな時、ふと、闘志溢れるエスペルの脳内に、疑問が浮かんだ。
「……あら? そう言えばアニムさん。私、今ふと気付いたことがあるのですけれど」
「何ですか? 麗しの君」
「先程、直結化と仰ってましたわよね。つまり……私の頭に、直接くっついているということですわよね」
「そうなりますな。いわば、融合している状態なのです。エスペル殿がどれだけ激しく動いても、俺が取れるということはありませんのでご安心を」
「なるほど。そしてアニムさんはこうも仰いました。あくまで一時的なもので、事が終われば分離すると……」
「ええ、もちろん。この戦いが終われば分離しますとも。そのための技も修めております」
「なるほどなるほど……。ちなみにアニムさんは私の頭……つまり髪の毛の上からくっついたわけですが……。もし、融合だと言えるくらい、完璧にピッタリとくっついているというなら……取れた時、私の頭頂部は一体どのようになっているのでしょう?」
「…………」
アニムは沈黙した。
どんどん顔色が悪くなってくる姫騎士エスペル。
「まさか、髪の毛が無くなって、頭頂部だけ禿げている……なんてことはありませんわよね?」
長い沈黙が支配する。ちなみに兵士たちもゴクリとツバを飲み、二人のやり取りを見守っている。彼らも興味があったのだ。
「…………………………さぁ?」
沈黙の後、アニムはそう答えた。
「アニムーーーーーーーーーーッ!!!!!」
その答えに、エスペルは涙目になりながら、自分の頭の上の頭を掴んで揺らす。
「おっ落ち着いてください! 大丈夫! 短い間で離れるなら大丈夫なはずです! 多分!」
揺れる頭に目を回しながら、そう言うアニム。
「……短い間って……どれくらいですの?」
「……えーっと…………5分くらい?」
「5分ですわねっ!!! よしっ! すぐに片付けますわ! 覚悟しなさい!」
兵士たちに向き直り、戦意みなぎらせるエスペル。そこにいたのは麗しい姫ではなかった。世にも恐ろしい顔をしたモンスター。
そんなモンスターが兵士たちに襲いかかったのであった。
その後の戦いは、言うまでもなく一方的であった。
次々と兵士をなぎ倒していくエスペル。しかしただ倒すだけでは彼女は満足しない。1秒でも早く倒そうと、さらに力を求める彼女。
「足りない……。力を……もっと力を寄越すのですぅううう!!!」
送られる力では足らず、アニムからさらに力を吸い取り、戦闘力を上げ敵を薙ぎ払うエスペル。
「ちょっ!? エスペル殿ぉおお!? 吸いすぎですぅううう!!! あああっ!そんなに吸っちゃラメぇえええ!!!!!」
もはやエネルギーを送るまでもなく、逆に吸われることによって、どんどんやつれていくアニム。
「出ちゃうううっ!!! 俺からエネルギーが出まくっちゃうううう!!!!!」
アニムは半ば白目を剥き、エスペルにエネルギーを搾り取られながら、干からびていくのだった。
戦いの開始付近に倒された兵士は、後にこう語った。
「鬼気迫る様子の王女の頭上には、彼女を鼓舞する生首が乗っていた」と。
中盤付近に倒された兵士は、後にこう語った。
「恐ろしい形相をした王女の頭上には、干からびて目を回す生首が乗っていた」と。
最後に倒された兵士は、後にこう語った。
「頭に何かクルミの殻みたいな、しわがれた何かを乗せたモンスターに襲われた」と。
戦いは終わった。
少なくとも王女を追うものは、この近くにはいなくなった。
2人はどうやら無事に分離できたようで、きらびやかな長い髪の女性が、萎びた生首に必死に謝っている姿が見える。
「うぅ……………………すみません。少々取り乱しましたわ……」
「ハハハ、いやいや、麗しの君の髪に異変がなく、大変結構なことですとも」
ヨボヨボの老人のような見た目のアニムが、虚ろな目でそう言う。
「うぅう……本当にごめんなさい。私ったら、なんてはしたないことを……」
我に返って先程までの自分の有様を思い、顔を真っ赤にしながら涙目で謝り続けるエスペル。
「そんなにお気になさらず。……それよりもこれからどうします? 俺も力を貸しますぞ!」
正直割と酷い目にあった気もするアニムだったが、彼は躊躇せずエスペルにそう語る。
「え……? 私に付いてきてくれるのですか?」
「もちろんですとも! 麗しの君」
エスペルは先程までとは違った意味で涙目になると、アニムに手を伸ばし抱きしめる。
「ああ、ありがとう。アニムさん、やっぱりあなたは私の勇者様ね」
「ハハハッ。褒めても何も出ませんぞっ。…………いや、ほんとに力もエネルギーも出ないので、しばらくは役立たずですがね。ははははっ」
「うう……すみません。何かいっぱい搾り取ってしまって……」
そんな彼らに近づく影があった。人間ではない。
「ん? あれは……」
「どうしたんですの? アニムさん?」
アニムがその影に気づき、エスペルもそちらを見る。
「あれは……犬?」
大きな黒犬だった。その黒犬が、何か袋のようなものを引きずりながらこっちにやってくる。
「おおっ! フォルテじゃないか! お~い、フォルテ~!」
黒犬フォルテは2人のそばまで近寄ると、咥えていた袋を離し、お座りをする。
「アニムさんの知り合いですの?」
「ああ、兵士の飼い犬のフォルテだ。一体どうしたんだい?」
アニムがフォルテに問いかける。ちなみに彼は別に皮肉でもなんでもなく、素でそう聞いていた。
「ワフッ」
フォルテは袋の方に顔を向ける。
「この袋に何か入っているの?」
動けないアニムに代わり、エスペルが袋を開け、中を見てみる。
「これは……食料? それに、お金に……あ、捕まったときに取り上げられた私の武器も?」
そこにはフォルテが兵士たちから略奪した、色々な物資が入っていた。
「おおっ、これがあれば旅も楽になるだろう。俺たちが使っていいのかい?」
「ワフッ」
一声鳴く黒犬フォルテ。
「ふむ、じゃあ有り難くいただくとして……お前も一緒に来るかい?」
「ワフッ」
2人に付いていく気満々だったフォルテ。物資は取り入るための賄賂みたいなものである。
「大丈夫ですの?」
犬とアニムの関係を知らないエスペルはそう尋ねる。
「ああ、大丈夫ですとも。元々一緒に旅をしていた間柄ですからね。まぁ、兵士たちと戦う際、離反されて俺は捕まってしまいましたがね。Hahahahahaha!」
気持ちの悪い顔で笑うアニム。
「欠片も安心できる要素が見当たらないんですけれど……。まぁ、アニムさんがそれでいいなら……」
アニムの様子に呆れながらも、エスペルもまた了承する。
「ありがとうございます。それで、これからどうします? 麗しの君」
「そうですわね……。やはり当初の目的通り、貴族の方を頼ることに致しましょう。あの方は国内有数の勢力の持ち主。彼の力があれば…………」
「わかりました。では急いで出発することに致しましょう!」
「ええ」
そして武器を装備するエスペルの横で、アニムはフォルテに声をかける。
「少々困難な状況かもしれないが、また一緒に協力しようじゃないか! なぁ、フォルテ!」
アニムの呼びかけに、しかしフォルテは答えない。
「フォルテ?」
しかしやはり答えない。
「……よし、行こうか! マルコ!」
「ワフッ」
黒犬マルコは返事をし、アニムを咥える。現金なものである。
ちなみに物資はエスペルとマルコが半分ずつ背負う事となった。この事においてアニムは何ら役には立たない。
「何だかすごい格好ですわね。……いえ、アニムさんがそれでいいのなら、私は何も言いませんけれど」
黒犬マルコに咥えられ、プラプラと揺れるアニムを、引きつった笑みで見つめるエスペル。
「まぁ、これが基本スタイルというやつです。さて、準備も終わったようですし、出発しましょう」
「ええ」
「ワフッ」
こうして生首と、黒犬と、姫騎士という、奇妙な組み合わせの一行は、国を救うため歩き出すのであった。
ちなみにエスペルに搾り取られ萎んでいたアニムであるが、寝て起きたら元に戻っていた事を追記しておく。