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春麗のミステリーツアー【アンソロジー企画】  作者: 春麗のミステリーツアー参加者一同
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「~Children of the tear(中編)~」 IDEECHI51 【ヒューマンドラマ】

 あれから彼と会うことはなかった。連絡先を交換する事もなかった。あれから3年が経ち、彼女はこれまでしてきてきた仕事とは違う仕事を始めた。コンビニ店員だ。彼女は元来明るい彼女自身が戻ってきたような気がした――




 コンビニで働きだし、社会人の一員になる事でお金のいることが増えていった。

心身に余裕も出来た事だしと思って、2つのコンビニを掛け持ちすることにした。そして2つ目の働き先で、彼女は驚くような運命と巡りあう――



「あの、どこかで出会いませんでした?」

「へ?」

「あの、合コンで知り合って、映画をみせて貰って……」

「合コン? 映画? 俺には興味のない事ばかりだな~」



 短髪で金髪の先輩店員は八重歯の光る笑顔でそう返事した。驚くような運命でなかったようだ。しかし彼のその風貌はあの日知り合った彼そのものだった。



 違うというのだろうか? 単に似ている人間がいただけなのだろうか?



「ちょっと、人の話聞いている?」

「あ、はい! すいません!」



 あれこれ考えていたら、彼からつっこまれた。彼は江川悟という男。もとよりその風貌に似た男? にお世話になった経緯から彼女は悟を慕うようになった。



 働いて1カ月もしないうちに悟から社会人サークルの誘いがあった。



「え、ウチ、小説なんて書いたことないし……」

「そんなもん適当に書けばいいの! いまメールで送ったから読んでみ?」

「え? あ、本当だ。なんかきた!?」

「何かきたって……しょぼい返事だな」

「これは何?」

「俺が軽く書いた小説だよ。我ながら面白いと思ったけどな」



 悟がメールのURL越しに送ってきたのは「FBI犯罪科学研究所爆発物課」という爆破物処理班が活躍するネット小説だった。



 家に帰った彼女は画面越しにその小説を読む面白さへ惹きこまれた。



 そして次の出勤時、悟へ社会人サークルなる文芸サークルへ入部すると申しでた。悟は大喜びしてそれを受け入れてくれた。



 翌々日、サークルメンバーが集まる会合に参加した。会合というか飲み会か。どのメンバーも優しく接しやすい面子ばかりだった。特に本田恵美という女子とウマがあったが、どうやらちょっとやばいタイプの人種で注意が必要みたいだ。




 それから暫く順風満帆な毎日を過ごせていた。しかし自分がレジを打っているところに思わぬ人物が現れた。



「邦子ちゃん? 邦子ちゃんじゃないか? こんなトコで何をしているの?」



 数年前、彼女を捨てた男だ。彼女は頭が真っ白になった。何も返事ができない。



「あれからどうなっていたか心配していたよ。こんなところでこんな苦労をしているなんて……ほらここに俺の連絡先書くから、あとで連絡してよ!」

「…………って下さい」

「え?」

「帰れ!! お前の顔なんかもう見たくない!! 帰ってしまえ!!」



 彼女は男の胸座を掴み、彼の体を揺さぶる。しかし男はニタニタと笑うばかりだった。



「ちょっと店員さん!? この店員さんが俺に暴力をふるうのだけど!?」



 男は大きな声を張り上げて、訴えた。彼女はもうどうしようもない。そのまま職場から走り去っていった――



 どれだけ走っただろう? 路地裏にある小さな公園のブランコに座って、ただぼんやりと過ごした。すると、そこにコンビニ店員の服を着た男が息を切らして現れた。悟だ。悟も職場から彼女を追っかけてきたのか……



「はぁ……はぁ……逃げるな!! 逃げんじゃねぇ!!」

「!?」



 悟の一言でその場から逃げ去ろうとした彼女の足が止まった。



「お前どうした!? あの男と何があったか知らないけどさ、お店に迷惑かかるだろうが、何かあったなら、何で俺を呼ばなかった!?」



 彼女は何も答えない。いや何も答えられなかった。ただ涙を零すだけだった。



「いい、何も話したくないなら何も聞かない。だけど仮にも契約した時間でする事ぐらいはしろ。それが責任だろうが。倉庫裏でじっとするだけでもいいからな」

「わからないクセに!!」

「え!?」

「何もわからないクセに偉そうなことをいうな!!」

「痛い! やめろ! 俺が言っているのは当たり前の事だぞ!?」



 彼女は悟に掴みかかった。


挿絵(By みてみん)


「アンタさ、本当のこと言ってみ? どうせアンタだって腹の底ではウチのこと笑っているのだろ!! 馬鹿にしているのだろ!! 出会った事もはぐらかしているのだろ!! 言えよ!! 言え!!!」



 彼女は息を切らして項垂れた……



 顔をあげると悟も涙を流していた。



「馬鹿にしてない。馬鹿になんかしてない……かえろう」



 彼はそっと彼女の肩に両手を添えた。何だかそれだけで帰る気になれた。でも帰っていいのだろうか。彼女には不安しかなかった――


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