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春麗のミステリーツアー【アンソロジー企画】  作者: 春麗のミステリーツアー参加者一同
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「チェリーブロッサム消失の怪(前編)」 IDEECHI51 【推理】

 先週からジパングという国よりフェレンツのラプラス市へ桜の木が届けられた。明日は市をあげての植栽イベントがある。ジパングからは「鯉のぼり」で使う吹流しや「雛祭り」で使う雛人形、桜餅なるものが数多くラプラス市へと贈られるらしい。1カ月前よりはラプラス記念公園には桜の造花が51も飾られていた。



 連日レジャーシートを敷いて酒を片手に宴を開く者がラプラス記念公園に続出している。もともとそのような伝統はラプラス市にはなく、テレビでそういった行事が紹介されたのち広まったようである。



「まったく時代の変移というものは恐ろしいものですね」

「いいじゃないですか。酒を飲むのも自由。花を愛でるのも自由ですよ」

「そりゃそうだけど……そういえばお孫さんの入学式は明日でしたか?」

「明後日の2日です。明日の式典はテレビで観るとか。私も一緒する予定ですよ」

「ヘヘ、そりゃあいい。卒業式は出られなかったそうですね。リベンジしなきゃ」

「ええ、ですからそろそろここはひきあげますよ。刑事は?」

「僕はもう少し休んで帰りますよ。今日は疲れちゃったしね」

「ここで寝過ごされないように」

「ご心配どうも」



 ラプラス市警、ジョン・スパクロウ刑事とヴィン・アルシンド刑事補佐は署内休憩室にてテレビを観ながら会話を交わしていた。時間は午前2時、深夜になる。しかし生中継で映しだされているラプラス記念公園にはたくさんの花見客なる人だかりが映しだされていた。なかには小さな子供もいた。



 ここに関しては気にすべき案件もある。ラプラス市を脅かすアルクファミリーというマフィアが傘下ギャングを利用して悪事を働くかもしれないということだ。



 しかしここのところラプラス市で目立った刑事事件はその重さ軽さを含めて、全く生じてなかった。ジーノ・パチーノ逮捕の一件より、ラプラス市警はアルクファミリーへの取り締まりを強化し、膨れ上がっていたギャングの一掃に尽力を果たした。



 マフィアの組織は弱まった。しかし、中核を担う幹部の一部は未だに街の裏で権力を握り続けている。ジョンの闘いは静かでありながらも続いていた。



 今日は1日中、ラプラス市内をヴィンとまわりにまわった。南は港全域に北は山間部のいたる地域まで。ラプラス市の広さはフェレンツ15都市の中でも群を抜く断トツの面積を誇る。



 疲れないワケがなかった。明日は休みだが、ソファーに腰掛けたままジョンは眠気に身を委ねてしまった。




 朝、目を覚ますと署内の一室にジョンはいた。



 どうやら職場でそのまま寝過ごしたらしい。



 あたりをゆっくり見渡すとヴィンがいなかった。



 そう思っていた矢先にバタンとドアが開く音がした!



「スパクロウ刑事、大変です! 記念公園にて出動要請がでました!」

「え? え?」



 ジョンはヴィンに引っ張られるままにラプラス署近くに位置するラプラス記念公園までやってきた。




 そこにあったのは驚愕の光景だった。



「これは!?」



 ラプラス記念公園にあった桜の造花が51本まるまる消失していたのだ。公園には不自然なクレーターがいくつも出来ていた。そして目に余るほどの人だかりが出来ていた。



「非常線はしてないのですか!? 警察の配置もできてないですよ!?」

「ライトル司令官からアナウンスがあります! それからですよ!」

「ライトル司令官!?」



 ラプラス市警司令官ペリー・ライトル氏が公園に液晶画面に映った。ざわつく公園内の観衆。ジョンはただ何とも言えない違和感と緊張感に苛まれるだけだ。



『ラプラス市警、ペリー・ライトルです。このたびの「ラプラス記念公園記念樹レプリカ」が消失した件に関し、皆様に不安を感じさせたことへ心からお詫びと今回の経緯の説明を致します。今朝明朝に“本日のこのタイミングを見計らって”桜のレプリカを未確認飛行物体が引き上げたようにみせかけ、犯行に及んだ者がいました。その者を今しがた我が国の法に基づき逮捕しました。この者です!!』



 次の瞬間に縄で拘束された人物が現れて公園中が騒然とした。



 そうか。そうだったのか。



 何もかもがわかったジョンはヴィンへ率直な想いを告げた――




「読者への挑戦」

〇今回の桜レプリカ消失における全容を説明せよ。

〇ジョン刑事がヴィン刑事補佐に最後の場面で告げた台詞を予想せよ。

〇以上2点に関してユニークな解答を考えてみせよ。


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