帝都エイトクルスへ
春の木漏れ日が木々の間に見えて葉っぱとともに揺れている。
そんな中、俺たちは新しい街へと馬車で移動しているのだ。
ただ俺は全く楽しみではない。
俺の実家は比較的まだ四季があり春夏秋冬の区別があった、なのに、ここはまだ春のくせに気温は35度を超えそうである。
「あっちぃー、なんだこりゃまだ春だろ?」
「そうだねー、私たちの春は色とりどりなのに、ここの木は生い茂ってるよ。」
こんなことを言ったのは、俺の幼馴染であり今回、村で二人の入学生のうちの一人フロミアだ。
「フロミア、水ないか〜暑すぎて死んでしまう。」
「あんたがガブガブ飲むからないよ。」
高校生が、この暑い中樽入りを飲めないのは死活問題だ。
俺は高校にも行けずここで死ぬのかもしれないな・・・。
「見えてきたわよ、帝都エイトクルス!」
帝都エイトクルスは国内最大都市であり、ほぼなんでも揃っているし、人も多い。
「すげー、見たことないものしかないぞ!おいフロミア、こっちに魚が泳いでいるぞ!」
俺たちの実家は川もないので魚は焼いているものか、塩の中に埋もれているものばかりだ。
「よう!兄ちゃん。こいつは食いもんじゃなくてペットだぜ?」
「よかったね、飼いたいなら飼えば?」
フロミアがあきれながら言った。
「マジか、それなら・・・」
フロミアは、まるで少ないお金で大量のお菓子を買おうとする子供のような俺を見てため息をつきながらこう言った。
「もう荷物が多いから、先に宿泊所に行くよ、またあとでくればいいじゃん。」
「フロミア全部持ってってくれ。」
「今なんか言った?」
ヤバイと思って後ろを向くと、そこには顔面パンチがあった。
「旅館はどこなんですか、フロミアさん。まさか、野宿?」
「旅館ナグリだから・・・ここだね。」
人の話ガン無視な上にこの名前・・・うん、今の俺なら堂々と入れるなこれは。
「いらっしゃいませ、お酒・・・宿泊ですか?」
お、可愛いなーあの従業員の子、髪がふわふわしてて、目も綺麗で、きれいな肌色の手足・・・なんだあれは、服の下からでもはっきりわかるあの果実は!
「いっっってーーー」
「鼻の下伸ばしてキモい顔しながら、店員さんを見るな!」
足に渾身のかかと落としを食らった、ヤバイ痛いぞこれ。
「・・・えー、大丈夫ですか?」
お、女神がこっちを覗き込んできている・・・最高だな。
「この、どーしようもないバカはほっといていいよー。ところで、ここに泊まりたいんだけどー、部屋はある?」
「あ、えーと大丈夫です。では、お名前を教えてください。」
すごいな、この子。切り替えが早すぎる・・・
「私は、フロミアだよー、多分長くここに泊まることになるだろうからよろしく!」
「私はこの旅館の従業員のレイカといいます。こちらこそよろしくお願いします。」
うわー笑顔が綺麗。フロミアよりぜんぜんいいじゃん。
「そして、お連れのあなたは?」
レイカさんが聞いてきた、
「俺は…」
そしたら、遮るようにフロミアが言った。
「あーいいから、それより手続きを早くしよー、私疲れたー」
ん?なぜ止めたんだ?
「あー疲れた、早く寝たい。」
部屋に着いて真っ先にベットに飛び込んだフロミアと違い、俺はこの状況を理解ができなかった。
「なー、一つ聞いていいか?なんでお前と同じ部屋なんだ!」
そうすると彼女は不満げに言った。
「部屋が一つしかなかったからよ!」
「なんで了承したんだよ!」
「だって早く休憩したいし、それとも野宿がいい?」
いやいやいやいやなんで、開始初日からこんなにやばいんだよ!




