表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

序章-1 ケモノ兄妹とココア

拙く、読みづらい文章ですが、どうぞよろしくお願いいたします。

一話の文字数は調整中です。

昨日までのことは覚えている。

特に大きなトラブルもなく、毎日数人の友達と、そこそこ楽しい中学校生活を送っていた。


いたって普通の生活で、それはいつまでも続く───



はずだった。



           ✳


「.........んぅ」


心地よいリズムに揺られながら、真凛は寝返りをうつ。

電車のようなその揺れは、安心感をもたらしながら、覚醒しかけた意識を再び夢へと誘う。


「......」


真凛は微睡みの中で、昨日のことを回想しようとした。だが、何故か記憶がはっきりとしない。

まるで霧がかかったように不鮮明だった。


(...昨日は...塾から帰って...宿題は明日にしようと思って、すぐ部屋で寝た...はず...)


何かが引っ掛かってすっきりしない。

寝ぼけているからだろうか。


しばらくうとうととして、ふと気付いた。


(......何で揺れてるんだろ...?)


ゆっくりと、未だ醒めない頭が回転を始める。

まさかこの小刻みに長時間続く揺れで地震ということはあるまい。

となると、


(家ごと走行....)


「んなわけないッ!」

「お兄ちゃん、起きたよ」

「えっ?」


飛び起きると、目の前に小学生くらいの少女が立っていた。

......フサフサの、獣のような耳を頭につけて。


「ああ、ありがとう。ミィ。」


少し遠くから声が届き視線を上げると、キッチンの様な所にもう一人少年がいた。

......またもやフサフサの、獣のような耳を頭につけて。


「そろそろ起きる頃だと思ってたんだ。.......ココア飲む?」


その言葉が自分に向けられていることに少し遅れて気付き、戸惑いつつも頷く。


お兄ちゃんと呼ばれた少年は、その言葉通り、既に準備していたらしく、すぐにマグカップにココアを注ぎ始めた。


「ここは.......」


辺りを見回すと、そこは小さな部屋のようで、窓にはカーテンが閉まっている。そして真凛は、自分がソファに寝かされていたことにも気付く。


「はいどうぞ」

「あ、ありがとうございます...」


おずおずとマグカップを両手で受け取り、ココアを啜ると、次第に身体全体に熱がまわっていく。最後にココアを飲んだのはいつだっただろうか。最近はその味を忘れていた。


懐かしい美味しさに少し感動を覚えるが、それよりもまず、さしあたって気になることがひとつ。


「...狐...?」

「...ん、正解かな。僕たちには狐の血が混じってるからね」


自分の耳に触れ、少年は微笑んだ。

血が混じっている...

というとどういうことか。いまいち理解できない。

少年のその耳は狐のようだ。

とはいっても、狐をこの目で見たことはないが。


ちなみにその少年は見た目では真凛より少し年上のようだったが、


(かわいい...)


とどうしても感じてしまう。

たまにケモ耳のカチューシャを付けた人を見るが、それに数倍勝るリアリティと可愛さなのである。

まさか本物なのだろうか。

と、少女が自分をじっと見つめているのに気付く。


「......?」


だがその妹はプイッとそっぽを向いてしまい、何も話そうとしない。

代わりにその兄が、


「あ、ごめんね。この子かなり人見知りだから、初対面だとめったに喋らないんだ。」


と弁明する。


「そ、そうなんですか...」


その妹、確かミィといった子にも、同じ耳がついていた。だがそれは、兄よりも一回り大きい。

そして、


(あ、尻尾もあるんだ)


今さらながら尻尾の存在にも気付く。

やはりそれも、妹の方がやや大きい。


(......んん......!!)


突如、モフモフとしたミィの尻尾に顔をうずめたい衝動に駆られる。

が、初対面の人にそんなことはできないと思い留まった。

案外自分はそういうものが好きらしい。

もちろんいきなり飛び付くほど無礼ではない。決して。



少し落ち着き、ココアを飲み干してほっと息をつき、今のこの状態について、改めて思考する。


まずここは何処なのだろうか。そして目の前の二人。今もなお続く揺れも不可解である。

それについて、気さくに話し掛けてくれる、兄の方に問おうとしたその時。


「おーい、ニィ!そこの眠り姫は起きたんかー!?」


部屋の外から声が飛んできた。


「姫って......えっ私!?」


眠り姫とは何ともロマンチックな響きだが、その声はおじさん臭い。


というより、おじさんに姫と言われるのに戦慄を覚える。

それを見かねて、顔に苦笑を浮かべた、ニィというらしい兄が助け船を出す。


「あはは...まあ大丈夫、不審者ではないから...多分」

「いや多分ってなんですか」

「んん、危険はないよ。彼は僕らのリーダーだから。...挙動不審だけど」

「えっ怖い」


思わず怯えてしまった。


「まあまあ、とりあえず挨拶してきたら?彼、心配してたし」


確かにこんなに手厚い対応をしてくれている二人のリーダーなのだ。

礼は言わなくてはならない。

何故自分はここにいるのかは全くの謎だが。


「そうですね...行ってきます。え、えっと、そこの扉を出て、何処に行けば...」

「えっ?...ああ、ふふっ、出れば分かるよ」


少し驚き、そして納得したように笑ってこたえるニィ。

どういうことだろうか。


さらに怖くなって戸惑う。

だがそこで、


「あの~とりあえずさ」


ニィが申し訳なさそうに言う。


「はい?」



「その手、離してもらってあげていいかな...?ミィが恥ずかしそうなんだ」


「あっはい、すみません」


結局理性で抑えきれなかった、ミィの尻尾を長い間モフモフ触っていた手を離した。


「.........ふんっ」


顔を赤らめてそっぽを向くミィ。

少し嫌われてしまったかもしれないが、まあ致し方ない。


目の前にモフモフの尻尾があったあの状態で、誰が我慢できたというんだ!


           ✳


しばらくして、真凛は意を決して立ち上がった。

不審者もといリーダーは面倒臭そうだが、部屋の外のことも気になる。とりあえず出るしかなさそうだ。

ゆっくりと歩み寄り、ドアノブに手をかける。

そして、ドアを開け───



真凛は、異世界の第一歩を踏み出した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ