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第4章ー4

「そして、第二次世界大戦は終わり、夫は帰還してきたけど、それは安住の時では無かった。夫は、すぐにインドシナへ、アルジェリアへと転戦して行くことになった。夫は、戦争の合間、合間に帰還してきて、私とピエールを大事にし、サラも生まれたけど、夫の心は、どこか遠くにいるカサンドラとその子を、ずっと想っているのが、私には分かった。ピエールを、夫が大事にしたのは、そのまだ見ぬその子の代わりだったのかもしれないわ」

 義母の独り言は続いていて、私はそれに聞き入った。


「ピエールは成長して、軍人になり、西サハラに派遣された。そして、結婚したい相手が出来た、娼館の娘だけど、いい娘でスペイン空軍少尉なんだ、とピエールが手紙に書いて寄越したとき、夫と私は驚いた。夫は、どんな相手なのか、調べてみる、と言っていた。でも、暫くすると、夫は詳しいことを言わず、調べてみたら、いい娘さんのようだ、ピエールを結婚させよう、と続けて言ってきた。更に、バレンシアに用事が出来た、と言って、夫は慌てて出掛けて行った。そして、帰国してきたら、向こうの母と逢ってきたが、その人もいい人だった。ピエールを結婚させよう、としきりに私に言った。私には分かったわ。ピエールの相手が、夫の子だったのだと」

 そういうことだったのか、私には、ようやく全ての事情が見えてきた。


 私の母、カサンドラは、私が結婚したいといってきた相手、ピエールが、私の実父、アラン・ダヴーの息子と聞いて、慌てふためいて、とりあえず、この結婚に反対することにした。

 だって、ピエールと私は、母から見れば、母が違うとはいえ実の姉弟に思えたのだ。

 だからといって、あの時の私が、実は私がアラン・ダヴーの実の娘だ、と母に聞かされて、それが真実と信じられただろうか?

 嘘も大概にして、と却って私が猛反発して終わりだったろう。

 そう、私が思う間にも、義母の独り言は続いていた。


「私は、夫、アランに、私の疑問をぶつけ、問い詰めたわ。ピエールが結婚したいと言っている相手、アラナは、あなたの実の娘なのではないか、とね。でも、夫は頑なだった。多分、そうだろう。でも、アラナに父親らしいことは何一つ、自分はしていない。そんな自分は、アラナに実父だと名乗る資格は無い、とね」

 それを聞いた私は、息を呑んだ。


 だって、父アラン・ダヴーは、帰国する際に、大金を母に遺しているではないか。

 それなのに、何一つ、自分にしていないなんて、自分には口が裂けても言えないのに。

 それに時代が時代だ、第二次世界大戦が起こるのでは、というあの時代、そして、実際に起きてしまったあの時代に、祖国より恋人とそのお腹の子を選べる男が、どれだけいただろう?

 女の私でさえ、祖国を選ぶのが、当然だと思える。

 父は正しい選択をしている。


「取りあえずは、私は納得したつもりだったけど、今日の結婚式で、あなたに他人行儀極まりない態度を示す夫に我慢が出来なくなった。仮にも実の娘なのよ。もう少し、情愛溢れる態度を示すべきだと私は思う」

 義母は、腹の底に溜まったモノを吐き出すように言った。

 私は、義母の言葉に肯かざるを得なかった。


 義母は、微笑みながら言った。

「嘘と思われそうだけど、義妹サラや、義祖母ジャンヌの体型を見れば、あなたも納得できると思うわ。本当に、あなたは、2人とよく似ている」

 私は、結婚式に参列していた2人の体型を思い浮かべた。

 確かに、2人共、私の体型と同様に、グラマラスな肉感体型を誇っている(いた)。


「これで、心置きなく、私は天国に逝けるわ。息子のピエールをお願いね。それとあの2人のことも」

 義母は、私に言い、私は涙ぐみ、義母に頭を下げた。

 第4章の終わりです。

 次話で、エピローグを投稿して、完結させます。


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