第4章ー2(カサンドラ視点)
娘アラナと、ピエールの結婚式は、フランスのピエールの実家近くのカトリック教会で挙げられることになり、私は参列することになった。
分かり切っていたことだが、その結婚式に、アラン・ダヴー、彼は新郎の父として出席することになる。
本当は、新婦の実父なのにだ。
私は、止むを得ない事と内心に言い聞かせつつ参列したが、結婚式の間中、アランのアラナへの冷たい態度に、もう少し娘に対して実父らしく振る舞えないの、と内心で怒りを募らせる羽目になった。
「これからは、お父さん、と呼ばせてください」
「別にアランでいい」
例えば、アラナが折角、そう言うのに、アランはそう言う素っ気ない態度を示すだけだ。
精一杯、アランに好意的に考えれば、成長した娘に初めて会って、どういう態度を執るべきか分からずに冷たい態度になっているのかもしれないが、それにしても、と私は思ってしまう。
そんなこともあって、私は、新郎のピエール側の親族を皮肉な目で観察することになった。
アラナの体型が私に似ていないのは、本当だ。
アラナのバストは90台半ばのHカップ、ヒップも90台とメリハリのある体型をしている。
それこそ、アラナが「饗宴」で娼婦として働き、それなりの技巧を身に付ければ、文句なしに「饗宴」で一、二を争う娼婦に成れるだろう。
一方、私は今、着ているドレスからは、アラナの母らしく、バストはDカップあるように見せかけてはいるが、これは全くパットによるものだ。
実際の私のバストは、Bカップもなく、哀しいまでのAAカップで70台半ばもない。
ヒップもいい勝負で、寸胴鍋体型としか言いようがない。
私が娼婦時代に、ろくに売れなかったのは、この体型のせいもあった。
娼婦という商売上、いよいよという時には、裸にならざるを得ず、どうしてもパットがばれる以上、パットを使うわけにはいかない。
そして、ここまでの貧乳の娼婦を好む男がいない訳ではないが、やはり少数派なのは否定できない。
アラナの体型は、アラン譲り、正確に言うと、アランの母ジャンヌ譲りのものだった。
貧困に苦しんだのか、背が低い小柄な体型に、ジャンヌの体型は、一見する限りは、私には見える。
だが、トランジスタグラマーという言葉は、彼女の為にあるような言葉だ。
60歳を過ぎ、老いが忍び寄っているとはいえ、若かりし頃は、さぞや立派な体型だっただろう。
表向きは雑役婦時代に、アランの実父と知り合ったとのことだが、娼婦として知り合ったのだとしても、私の見る限り、全く違和感が無い。
そして、アラナの異母妹の筈のサラ、彼女も見事な体型を誇っている。
体型を見る限り、アラナの実の姉妹なのは間違いない。
将来的には、アラナを凌ぐバストとヒップの持ち主になるのではないか。
アランに激怒されるのは必至だが、「饗宴」の娼婦として、私はスカウトしたいくらいだ。
彼女が手塩にかけて育て上げられ、懸命に娼婦として働けば、自分の体重と同じ金塊の値段を凌ぐ生涯収入を得られるのは間違いないだろう。
そんな不謹慎なことを私が考えている内に、娘アラナの結婚式は無事に終わった。
これで娘は幸せな結婚ができ、一応、表向きは義理だが、アランとは父娘として、外見上は一緒に過ごすことができる。
そして、私とアランとは、娘を介して公然と会うことができる。
これ以上の事を私が望むのは、過ぎた希望と考えるべきだろう。
私は、そう内心を割り切ることにし、アランとその妻に儀礼的な挨拶を交わした後、教会を出て行き、予約してあったホテルに向かおうとしたところ、アラナが、アランの妻、義母に呼ばれて2人きりで話そうとするのが、私の視界に入り、私は話が済むのを待つことにした。
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