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第2章ー6

 1939年9月に勃発した第二次世界大戦で、スペインは言うまでも無く中立国の立場で終結まで過ごさざるを得なかった。

 何しろ、スペイン内戦の打撃は、スペイン国内経済に致命傷と言っても良い大打撃を与えるもので、そんな状況で、どちらか一方に味方しての参戦等、最初から論外だったのだ。


 とはいえ、スペイン内戦の恩義や、義理というしがらみが、フランコ総統率いるスペイン政府には、英日(米伊)といった連合国側にあった。

 このため、スペインは、連合国側に好意的な中立国として、第二次世界大戦の間を過ごした。

 だが、完全な中立国だったわけではない。

 その象徴ともいえるのが、スペイン青師団だった。


 第二次世界大戦の戦況が、明らかに米英日仏連合国側に傾くにつれ、スペイン国内でも、このまま連合国側に好意的な中立で良いのか、せめて義勇兵を連合国側の一員として参戦させるべきではないか、という声が徐々に高まった。

 更に、米英日仏連合国側も、兵員の損耗に悩みだしたことから、スペイン政府に対して、義勇兵を参戦させられないか、という非公式な打診を行った。

 フランコ総統は、連合国の足元を見て、兵器等全てを連合国側が負担するならば、義勇兵をスペインは参戦させても良い、と声明を出し、連合国側はそれを受け入れた。

 これによって、編制されたのが、スペイン青師団で、彼らは、対独戦には間に合わなかったが、対ソ戦で死闘を繰り広げ、義勇兵として派遣された将兵の約3分の1が死傷したとされている。


 その一方、スペイン経済立て直しには、この第二次世界大戦は福音となった。

 英仏を始めとする欧州の連合国は、国内経済生産の大部分を軍事に向けざるを得ず、スペインは、それによって不足する民生品を英仏等に売りつけることで、経済の復興を図ることができた。

 また、米英仏等もそれを歓迎し、スペインが資源を輸入することに便宜を図った。

 特に米国から原油がスペインに安定供給されたことは、スペイン経済にとって有り難い事だった。

 この状況は、第二次世界大戦終結後も、しばらく続き、それによって、スペインは、内戦勃発前よりも、経済を発展させることができた。


 そして、第二次世界大戦後の欧州の平和と経済の復興は、スペインの外国人による観光収入の増大を、徐々にだが自然ともたらした。

 スペイン内戦による被害があったとはいえ、第二次世界大戦程の惨禍に、スペイン全体が見舞われたわけではない。

 カサンドラがいるバレンシアにも、外国人の観光客が訪れることが少しずつ増えるようになった。


 ちなみに、フランコ総統自身は、売春の非合法化を考えていたらしいが、それによる闇経済の増大等を懸念する声が政府内で高かったことから、管理売春制度を、スペイン内戦後のスペインは実施していた。

 つまり、秘密娼館や街娼は違法であるとして厳重に摘発し、正式に政府から認可を受けた娼館における売春のみを認める、という制度である。

 だが、フランコの意向もあり、娼館は増えることは基本的に無く、独占に近い物があった。


 そのため、カサンドラが経営する娼館「饗宴」にしてみれば、新規参入が入ってくる余地が乏しく、安定した経営を考えることができた。

 こういった状況にあったが、カサンドラは、この世界で自分は生きるしかない以上、少しでも収入を増やして安定した暮らしができるように、経営の多角化を考えるようになり、娼館以外、食堂や酒場等の経営にも乗り出した。

 そもそも「饗宴」自体が、かつて、酒場兼娼館だったので、親和性はあったのだ。


 こうして、1960年現在、バレンシアでの有力者に、カサンドラはのし上がっていた。

 そこにアラナの問題が飛び込んだのである。 

 第2章の終わりです。

 次に間章を挟んで、第3章になります。


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