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第1話「紅の巨人(3)」

格納庫では既に対怪獣迎撃用戦闘機ガードバードAアサルト、ガードバードBバスターの発進準備が進められていた。一昔前のステルスを参考に作られた赤いマシンがAで、F1レースマシンのようなフォルムをした青いマシンがBだ。


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


 Aは火力重視マシンで、Bはスピード重視マシンとの事だ。この2機が現在のG.U.A.R.D極東基地の主力戦力である。1か月前まで3台目のガードバードCクラッシャーが存在したが、先の戦闘でコウモリ型の怪獣にやられて大破。現在は開発メーカーでオーバーホールと改良を加えた大規模なメンテナンスが行われている。よって、極東基地には現存しない。

 格納庫で2機のガードバードの前でチームサブリーダーであるオオガミ・タクミによるポジション付けが行われた。ガードバードは通常、操縦と狙撃のメインパイロットとそれを補助する係のサブパイロットの二人乗りで出撃する。


「Aには私がメイン。サブにアライデだ。頼むぞ、アライデ」

「了解!」


アライデ・シゲルはそう言われて大きな返事をした。アライデは真面目な熱血漢だ。少々熱苦しい所もあるのが玉に傷だが。


「続けて、Bのメインをライト。サブはセイジに任せる」

「了解!」

「了解・・・俺、また先輩のお守りっすか?」


ライトの返事と続けてそう言ったのはこの春に補充要員として入ってきたナント・セイジだ。セイジは士官学校を主席で卒業した天才児だった。その優秀な成績を認められて、G.U.A.R.D.極東基地の所属が認められた。


「口を慎め」

「はーい」


タクミに咎められ、セイジは軽い返事をした。セイジは成績が優秀だが性格に若干問題があった。自分でも絶対の自信があるのか、怪獣迎撃をゲームかなにかと勘違いしている節も見受けられた。「メインを任せるのは時期早々と判断。しばらくはサブで様子を見る」という事が隊長と副隊長により話し合って決定された。彼のこれ以上の増長を防ぐ為の処置でもある。


「では各員乗り込め!」

「ちょっと待ってぇ!」


タクミがそう指示したのを男が阻止した。機体の油によって汚れた白の帽子と白のツナギを着た男・・・G.U.A.R.D.の極東基地整備員班長のフクベ・ショウだった。もう60歳の古株だが、その腕は確かな物だった。彼は現場の人間から「フクベのオヤジ」又は「フクベのオヤっさん」と畏怖と敬愛を込めてそう呼ばれていた。彼の顔見て一同嫌な顔になった。出撃前のフクベの「ちょっと待てぇ!」はお説教タイム開始の合図だからだ。


「おやっさん、これから私たち出撃するんですけど!?」


 タクミがそうフクベに抗議したが、聞く耳を持たないというような感じだった。彼は機嫌悪そうな顔していた。フクベは唾を飛ばしながらタクミ達に説教を垂れる。


「てめぇら!この前みたいな戦闘機をお陀仏させたら承知しねーぞ!」


「戦闘機をお陀仏」とは先も記述した先月ガードバードCの大破の件である。あの時は機体の変わり果てた、あまりの酷さにフクベも半笑いになり、


「クラッシャーがクラッシュしてしまってどうすんだ!」


と回収された機体の残骸にスパナを投げつけて怒っていた。


「おい!あの時Cに乗っていたのはどこのどいつだ!?」


 フクベの言葉に、メンバーはあの時乗っていったのは・・・・と当時の状況を思い返した。その場にいる全員がある人物視線を集中させる。その人物は自分で自分を右手で指指して、「お、俺?」と動揺していた。新人で問題児のセイジだ。


「いや、確かに俺も乗っていましたけど。俺はサブで”アネゴ”がメインっすよ。それにあれは2回目の出撃でまだ慣れてなかったというか・・・」


 セイジの反論にフクベは顔をしかめる。他のメンバーは「アチャー・・・やってしまったな」という顔をしていた。フクベの説教など「はいはいわかりました。すいませんでした」と言えばその場はどうにかなるのだが、反論するのは逆効果だ。説教の延長フラグである。まだセイジは新人故にそこら辺を理解していなかった。


「てめぁ!他人のせいにするとかそれでも男か!?それに出撃回数の問題ではないぞ!確かにな怪獣迎撃は危険だ。何が起きるかわかったもんじゃねー!けどな、メカを大切にしない奴はメカに泣くんだ!そんな昔のテレビの特撮番組みたいに怪獣のせいで、戦闘機撃墜とかホイホイやられたらこっちは溜まったもんじゃねーぞ!科学の力の勝利って奴を俺に見せておくれよ!頼むぜ!それが俺が整備にかける・・・・」


とメカに対する熱い思いを込めた長い説教をセイジだけではなく、他のメンバーにも始めていた。(早く終わってくれ・・・怪獣が逃げるだろ!)とその場の全員が嫌な顔をしながら、長い説教をするフクベを見つめていた。そんなメンバーに助け舟が現れた。


「おじいちゃん!みんな困っているでしょ!」


 メガネをかけ、フクベ同様にツナギを着た女性がフクベを背後から羽交い締めした。フクベの孫のヒシミ・ユリだった。ユリはフクベの孫であり、彼女もこの整備班の一員だった。


「おい!ユリ!邪魔するんじゃねぇ!それに仕事中におじいちゃんはやめろ!」

「はいはい、フクベ班長様わかりましたよ。みなさん、ごめんなさいね。では頑張って行ってらっしゃい!」


と笑顔を一同に向けて「離せ!離せ!」と騒ぐ祖父兼班長を捕まえながらどこかへ連れて行った。それを見ながらメンバーは一同、ユリに対して心の中で「ナイスだ」サムズアップする。タクミが仕切り直す。


「よし、では今度こそ出撃!」


と彼女が言う。タクミとアライデがガードバードAに、ライトとセイジがガードバードBにそれぞれ梯子を使って乗り込んだ。


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