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4話

 昼休み、本人が直接交渉した方がいいと、ミスコンの出場交渉を名目に玲音と共に、生徒会室へ向かっていた。

 まぁミスコンなんて元々男の劣情が集結して開催されたもので、女子の反応は前々から悪く拒否されるのが当たり前なのであった。

 俺としては、さっさと済まして本題の勧誘に、どう話を進めるかしか考えていなかった。だが玲音は実行委員長をやる程度に、気合を入れてるようだ。


「全く、お前はあんなことがあった後だっていうのに、またこんなことに手を出しているとはな」

「あれとこれとはまた別さ、というよりももうライフワークと言ってもいい。女の子の可愛い姿は、誰だって拝みたいだろ?」


 玲音は全く堪えた様子は無く、ひょうひょうとしていたが、実際もはや習慣になってしまっているのだろう。

 生徒会室に着きドアを開けると、ちょうど作業が終わったところのようだ。

 弥生は茶を飲みながらこちらに視線を向け、とても綺麗な笑顔で出迎えた。


「あら、早乙女君。今日はどういた用事かしら?」


 なんとも見事な外面の良さで対応する姿に、俺は感服し、こちらの発言を促がす様子にありがたく感じ、ミスコンの話を切り出した。

 内容としては簡素なもので、文化祭までに各々で自己アピールをして貰う。

 そして当日に配布されるパンフレットのチケットで投票、結果を夕方にステージで発表というものだ。

 参加は自薦、他薦を問わず可能で他薦参加者に関しては、本人に了承を取ってからというのが通例だった。だから人気者に票が集まるのは、本人の意思に関係なく当然な結果であって…………。


「――だからそこで、学園のトップである生徒会長にやってもらたいなぁ……ってはい、すいません諦めますから辞書を下ろしてください」

「まったく、どうせ裏でコソコソとやられるくらいなら、って始まったものなんだから無理があるのよ」


 乗り気ではないのだろう。面倒事を起こす癖に巻きこまれるのは嫌という性格である弥生さんは、手元の辞書を放り投げて溜息を吐いた。

 まぁ正直、年頃の男子の視線に晒されるのは女子としては生理的に受け付けないし、受け付ける方が希だ。


「でもステージ用意したんですから、使わないなんて無理ですよ」


 今の人数じゃ飛び入りを想定したとしても、開催しても盛り上がりが欠ける。

 何かいい手はないだろうか? 派手にするにはいくらでも方法はあるが、どれも女子に嫌がられて、更に参加者が減るだけだろう。


「ならパートナーコンテストなんてどうかな?」

「日向さん」 


 背後からの急な声に振り返ると、二年のアイドルと噂の日向葵が書類を抱えて立っていた。ふっくらとした唇に指をあてて話す様子は愛らしさが漂い、少女らしい大きくクリッとした瞳は、宝石のように輝いていた。


「生徒会だったのか」

「うん、そうだよというか今まで知らなかったんだね、同じクラスなのに……」


 すこし残念そうに日向さんは呟くと、玲音はバツの悪い顔で、頭をかいた。

 正直玲音が女子の情報で知らない――しかもよりにもよって、学園で有名人である日向の情報が得られてないなんて、まずあることではなかった。


「玲音が女の子の情報で知らないことがあるなんて珍しいな」

「あぁ、いや、日向さんに関してはちょっとお邪魔虫なストーカーがいてな」


 玲音が悔しそうな顔をして、庶務の男子生徒を睨んでいた。

 視線を受けた庶務の生徒は、そんな視線もものともせずに、日向さんの方へ青少年かくあるべしといった、にこやかな笑顔を向けた。


「態々集計表持ってきてもらってすいません、日向さん。あとその手の輩は相手にしなくていいですよ、色情魔に喋るだけ無駄ですから」

「なんで一条君は、そういうキツイ言い方するかなぁ」


 日向さんには見えない角度で、不快ですという

 表情を隠しもせずに、一条と呼ばれた男子学生はこちらを見てくる。どうやら学園のアイドルにはボディーガードがついているようだ。まぁ日ごろから女子にちょっかい出している玲音の自業自得な気しかしないが、どうやらその一員として見られているようだ。


「待て待て、さらっと俺を含むな」

「違うのか?」


 疑惑の表情でこちらに目を細める一条に、こちらも心外そうな感じが伝わるよう、表情を返した。


「違う。 友人であっても俺はこいつみたいにのらりくらりと移らないぞ」

「おいエイジ、さり気なく俺をディスるな」

「さぁ? 俺は事実を言っただけだ……」


 なんかヘタレが言っているが気にしない、こればかりは本命にとっとといかないのが悪いのだ。一条は「そうか、類は友を呼ぶというが、少なくともヘタレのナンパではなさそうだ」と手元の資料に目を戻した。

 バンバンと机を叩く音が聞こえ、視線を向けるとムスッとした表情で、弥生がこちらを指さし、早くしろと話を促してきた。


「ほらそこ、無駄なおしゃべりしない。私はもう教室に帰りたいんだから」

「はいはい、じゃあミスコンはペアコンテストに変更ということで、……あぁ、そうだ」


 ここで俺はもう一つの本題を聞き出すことにした。日向をバンドに入れるために生徒会室に来たんだ。


「会長、俺とバンド組んでくれませんか? 今メンバー募集中で」

「面白そうだけど、遠慮しておくわ。どうせ梓たちは誘ってるんでしょ?」

「うん? まぁやってくれるってさ。乗り気ではないみたいだけど」

「ならメンバーとしては十分だと思うのだけれど、葵ちゃんなんかどうかしら?」

「えっ!?私?」


 バサァと、思いもよらぬ方向へのパスだったせいか、日向は書類ぶちまけてオロオロしていた。

 そんな日向を横目にサッと、一条は迅速に書類を拾って整えると、葵を落ち着かせて、また自分の定位置に戻る。


「うん、彼女の声って綺麗だからいいかなぁ? と思ったんだけど」

「う~ん、私は音楽とかよくわからないから……少し、一週間だけ考えてもいいかな?」


 書類をばらまいたのが恥ずかしかったのか、すこし顔を赤らめた日向さんが、申し訳なさそうにしていた。


「今すぐ断ってもいいんだぞ?」

「ううん、別に嫌って訳じゃないから……ただ少し恥ずかしいかなぁ、と」

「こっちこそ、会長が無茶苦茶言って飛び火させて悪い」


 正直バッサリ断られるだろうと思っていたから、保留なんて言葉が返ってくるなんて、思ってもいなかった。

 なんだか悪い気がしていると、勧誘のことを全部擦り付けたからか、弥生さんの方から、すごいプレッシャーがかかってきた。

 ゴゴゴゴゴッと音が聞こえてきそう……というか、ものすごいレベルで揺れてるな机。


「なんでお姉さんには、一言もないのかしら」


 どうやら本気では怒っていないようで、不満げに頬を膨らませて、こちらをにらんでくる。

 だが見た目の可愛さのせいか、あざとさだけが浮き彫りになっていた。


「まぁ、現状が現状ですからね」


 実際昨日の時点で、弥生さんが入らないことは解っていたので、特に無い。   

 取り敢えずは、四人で頑張っていくしかないようだ。

 生徒会の面々に一礼をし、残りのメンバー集めとして最後の砦、正真正銘の切り札を切りに部室へ足を向けた。


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