22.5話 少女達の語らい
『はい、片桐です』
「あ、姫路です。梓さんいらっしゃいますか?」
『…………』
「ねぇ……ちょっとお茶しない?」
『……別に、いい』
「話したいことがあるんだ」
『……』
「おねがい」
『わかった、すこし待ってて』
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「アイスティーとシフォンケーキください」
「オリジナルブレンドとパンケーキで」
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「最近どうしたの、めっきり来なくなってさ」
「……別に」
「めんどくさくなった?」
「曲が出来たんだ。後は練習するだけだろ」
「……でもそれ来ない理由に話なってないよな? 早乙女と顔合わせづらい?」
「別に、アイツは、関係ないだろ」
「でも歌詞渡してから、明らかに違う。じゃあ私の方か」
「それこそ……」
「お待たせいたしました。アイスティーとブレンドコーヒー。シフォンケーキとパンケーキでございます。以上の方でご注文よろしいですか?」
「……ハイ」
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「なぁ……」
「なに?」
「メープルかけすぎじゃない?」
「いいんだよ。コーヒーと釣り合いが取れてちょうどいいんだ」
「それは、無糖のブラックだから取れるのであって、マッ缶レベルのそれで言うものじゃ……、まぁいいか」
「それで、話ってさっきのでおしまい?」
「……あたしさ、早乙女の事が好きなんだ」
「…………」
「でもさ、それと同じくらい……、梓、アンタも好きなんだよ」
「ブフッ、ガッ、ゴホッゴホッ」
「ちょ、ちょっと、大丈夫か?」
「お前が変なこと言うから……で?」
「……子供の頃、クリスマスに演奏会があっただろ。あの時に見た梓の演奏がすごくかっこよくてさ、コイツには勝てないって思った」
「早乙女も隣で釘付けだったし、二人とも仲良かったから、この二人だったら別にいいかなって」
「べつに、仲がいいからって、付き合うとは限らないだろ。それにあの頃はアイツと仲良かったわけじゃないぞ?」
「うん、だから弥生さんと付き合った時はビックリした」
「…………」
「でもしばらくして別れて、その時に梓も音楽辞めて……、なんとなく察した」
「なにが」
「別に当たってるとかどうかじゃなくて、なんとなくだけど……、三人して意外と小心者というか、神経質というか」
「……うるさいな」
「そんなんだから、勘違いしちゃうんだよ。あたしでもいいのかなって」
「別に、勘違いでも何でもないだろ」
「梓みたいに好意を持たれてるわけでもない。日向さん……葵みたいに可愛げがあって、意識されてるわけでもない」
「直接の会話は少なかったとはいえ、子供のころから一緒なのに……、それも覚えられてるかどうか」
「……姫路」
「正直、葵が名前で呼んで欲しいって言ってた時に、羨ましかったんだ」
「あれは、特別だろ」
「でも羨ましかったんだよ。グイグイと行ける葵に、結果的にかもしれないけど、それで早乙女とも近くにいられて、それをアイツも憎く思ってなくて」
「だから、私も決めた。私は早乙女影冶が好きだ。絶対に、振り向かせて見せる」
「梓は、どうなんだ?」
「私は――」




