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5 真名
今回短いです。
ところが、実際のところ、すぐに神に会えたわけではなく、しばらくの間はあの男率いる『管理者』たちに、塔の中のしきたりや作法などを叩き込まれただけだった。
それは、本当にくだらないことばかりだったが、シュラインは神に会うために漏らすことなく覚えた。
本当は、シュラインは、塔に行くことは嫌だった。
得体の知れない、面倒な場所だと思っていたからである。
それなのに今、塔にいるのは、最後の巫女といわれる母プレア=フォレスタの預言によるものだった。
「お前の出現による流れの変化は、遠い未来、全ての人々を救う鍵となるでしょう。塔へ行きなさい。行って全てを受け入れなさい。」
彼は、己の名前の意味をよく知っていた。
それは『シュライン』ではない、父母しか知らない名前だった。
今はもう市民には禁止されている、日本名である。
彼の本当の名前は・・・・・『禊』という・・・。