3 予感
「昔の夢を見たわ。」
テルラは、朝一番にそう言った。
「おはよう、が先でしょう? 私も見たわ。お父様のお話の夢。」
アクワは平然と返した。
今まで一度も、違う夢を見たことがないのだから。
「今日は、新しい先見が来るって話よ。何か関係があるのかと思ったんだけど。何も感じない?」
「先見など、来ても何の役にも立ってないでしょう? お父様に会えるほどの方など、見つかりはしないわ。」
『先見』とは、予知能力を持つ人のことである。
詳しく言えば、それで生計を立てている人のことになる。
それほどたくさんはいないが、少なくもない。
多くはインチキ、サギといったものだが、ごく稀にすごい力を持つものがいる。
見分けるのは難しいが、簡単でもある。
『神』に会わせればいい。
その前に『管理者』たちがテストをするけれど。
「でもね、今回はちょっと違う予感がするんだ。」
テルラが悪戯っぽく瞳を輝かせた。
もちろんアクワもそんな感じはしていた。
だが、そんなに気に留めてはいなかった。
『先見』に関しては、いい思い出がない。
「女神様は、残念ながら十までは生きられますまい。」
「成人できたら、奇跡です。」
などと言われ続け、その度にどんなに傷ついてきたことか。
『信用するに足りない者』
それが彼女の、『先見』に対する見識だった。




