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25 管理者クラウデオ
無機質な部屋に、白衣の男が訪れた。
必要最小限のものしか置いていないこの部屋は、既に中年と言われる年になって久しい、クラウデオの仕事場兼研究室である。
彼は医療チームの主任ではあるが、『管理者』の一人として実務もこなさなければならない為、別室で研究をしているのだ。
「動いた、と?」
クラウデオは、白衣の男にそう返した。
白衣の男。
それは、先程、瞳とテルラのやり取りを、そして、仲間たちの会話を冷たい目で見ていた人物である。
「はい。只事はありません。」
「そうか。分かった。お前は監視を続けろ。何かあったら、すぐに知らせてくれ。」
クラウデオは天井を仰いだ。
とうとう事が起きるのか。
長い沈黙だった。
そう考えるうちに、彼の頭に十二年前のノクスの言葉が蘇った。
『あなたは知らない。この先、どんな未来になるのかを。でも、あの人は知っているわ。もう、あなたは負けている。・・・・あなたは、自分で、自分の首を締めたのよ・・・。」




