24 真相と決意
十二年前、まだアクワもテルラも二歳だった頃、ノクスは病に倒れた。
治療方法も見つからない、ただ死を待つばかりの毎日だった。
ノクスは言う。
「お願いよ、妙な考えはやめてね。私はこのままでいいの。お願い、何もしないで。このまま死なせて・・・・。」
だが、『管理者』のひとりである医療スタッフの主任・クラウデオはそれを許さなかった。
神の妻・聖母ノクスが死ぬなどあってはならないと、無理に延命する方法を取る。
いつか治療法が見つかるその時まで眠らせる、という暴挙に出たのである。
それは、『神』ルーカスの反対を押し切ってのことだった。
「私は止めることができなかった。瞳も止められなかった。だから、託したのだ。お前たちかその子供が、いつかはノクスを救うだろうと。」
ルーカスは、テルラを見つめながら言った。
テルラもルーカスから目を放すことはなかった。
彼の話を聞いて、頭の中に何故かその時の事が浮かぶ。
見ていた訳ではないのに。
見ていたとしても覚えている筈もない。
「どうやるの?」
テルラは言った。
「どうすれば、お母様を助けられるの?」
「テルラ?!」
「だって、助けなくちゃ。助けたいよ、私。どうやったらいいの? お父様?」
テルラは縋る様にルーカスを見つめる。
だが、ルーカスは苦しそうな表情で答える。
「お前は、分かって言ってるのか? ノクスを、母様を助けるのはとても危険な事なのだよ。失敗しても、成功しても、きっと殺される。」
「それを分かっていて、私たちに託したんでしょう? 躊躇う事なんかないじゃない。危険だというのなら、尚更、アクワに任せられないわ。」
「テルラ、お前・・・・・。」
ルーカスは、はっとした。
テルラの顔が今までとは違う。
さっきまでの頼りない子供の顔ではなくなっている。
それは、高貴ささえ感じられ、自分の娘ではない何か別の存在に見える。
彼女の大きな瞳は、有無を言わせない力を持っていた。
「本当はもう、心のどこかで分かってたの。アクワにはシュラインが必要だ、って。アクワは幸せになるんでしょう? だから、私が全部やる。今までだってそうだったもの。この先もずっと、私はアクワを守るの。」
そう言い切ったテルラに、一切の迷いはなかった。
「・・・本当に・・・いいのだね・・・・?」
ルーカスは、穏やかに問う。
テルラは、一息置いてはっきりと答えた。
「アクワを 塔から出して、お父様。」
もう、混乱していたテルラはいない。
今のテルラは、『女神』の名に相応しい者へと変わっていたーーーー。




