21 不穏
瞳=G=ガーランドが長として務める医療チームがある、『女神』の居住階よりも数階下のこの階は、普段からとても静かだった。
用があるのは研究員だけで、他の者はまず訪れない。
研究中にお喋りをする者もいない。
音といえば、ビーカーや試験管のぶつかる音と、パソコンのキーボードを叩く音くらいだった。
もちろん瞳自身も、特に話す相手もなく、研究に熱中する日々だった。
だが、その静寂を破って、一人の娘が飛び込んだ。
「おじ様! お話があります!」
突然の訪問者に、瞳は一瞬戸惑った。
それは、手にしていた試験管を落としてしまうほどだった。
小気味いい音が部屋に響くが、原因となった人物は気にも留めない。
「テ・・・テルラ・・?」
「お話があります! よろしいですか?!」
有無を言わせぬ口調に少しばかりたじろぐ瞳だが、テルラから何かただならぬものを感じていた。
「ここでは何だから、場所を変えよう。あ・・・と、少し出てくるが・・・」
「はい、ごゆっくり。床のものも片付けておきますわ。」
そう研究員のエリニュスに言われて初めて、瞳は、自分が手の中の物を落としていたことに気が付いた。
「あぁ・・・、いや、後で片付ける。そのままにしておいてくれ。」
エリニュスにそう言うと、瞳はテルラを促し部屋を後にした。
残された研究員たちは少しぼうっとしてから話し出した。
「俺、あの人があんなに取り乱すの、初めて見た・・・・・。」
「うん・・・・・。」
「まるで、親子みたいね。それとも、恋人同士ってところかしら。」
「エリニュスッッッ?!」
そんな仲間たちのやり取りの中、一人だけ怪しくドアを見つめる男がいた・・・・。




