20 混乱
「おかしい。」
テルラは一人呟いた。
「どう考えても、最近のアクワはおかしいわ。」
テルラは思う。
顔色が違う、元気すぎる。
表情が違う、少し余所余所しくなった。
何よりも、前よりもっと綺麗になった。
「何か隠してるわ。目の合わせ方が違うもん。」
テルラは決めた。
アクワが言わないのなら、言わせるまでのこと。
生まれた時から一緒だった自分に、話せないことがあるなんてあり得ない。
今まで、そんなことはなかった。
何でも話し合うのが普通だった。
隠し事はしないのが暗黙の了解だったのに。
テルラは部屋を出ると、真っ直ぐアクワの部屋に向かった。
アクワの部屋の前に着くと、ドアが少し開いていることに気付いた。
それはほんの数ミリだったが、中にアクワ以外の誰かがいるのはわかった。
誰だろう。
自分以外にアクワの部屋へ入れる者は限られていた。
そっと中を窺ったテルラは、その光景に驚いた。
嬉しそうに笑うアクワの横には、シュラインがいる。
テルラは自分の目を疑った。
どうしてシュラインがアクワの部屋にいるのか。
そして、自分に見せるのとは違うアクワの笑顔。
それが何を意味するのか、全然わからなかった。
ただ見てはいけない気がして、ドアから目を話した。
何がどうなっているのかわからない。
混乱するテルラの耳に、二人の会話が届いた。
「いつまでもこうしていられたら、それだけで幸せなのに。」
「水穂、それができないのはわかっているだろう?」
「ええ。・・・・私は、テルラを置いていく訳にはいかないわ。あの子にこれ以上、押し付けられない。お母様を救うことまで、させたくないの。」
テルラは足が震えた。
アクワが何を言っているのか、頭がついていかない。
『お母様を救う』?
一体何のことだろう。
わからない。
どうしたらいいのか、わからない。
腰が抜けそうになりながらも、テルラはなんとか歩いて、その場を離れた。
とりあえず、自分の部屋へと戻ったが、中に入るなり、へなへなとその場に座りこんでしまった。
「何よ・・・・何なの・・・・? ・・・何なのよぉぉ・・・・・」
テルラの頭の中はぐちゃぐちゃだった。




