19 告白
シュラインがルーカスの元へと通うようになってから、一年が経つ頃。
それは、アクワとテルラが塔の外に出た日から半年余り後、アクワはシュラインが来るのが待ち遠しくて仕方がないようになっていた。
いつの頃からだったか、テルラがいなくてもシュラインはアクワの部屋を訪れるようになり、それは誰も知らない秘密の時間となった。
今までテルラに隠し事などなかったアクワは少し心苦しかったが、それでも自分の気持ちに嘘はつけなかった。
できるだけ長くシュラインと一緒にいたい。
そんな気持ちにただ素直でいたかった。
「今日はもう帰ってしまわれるの?」
アクワはシュラインを見つめて問う。
シュラインもまた、アクワを見つめ答える。
「ルーカス様の御用は済みましたが、すぐに戻る用事もありませんからね。しばらくは大丈夫です。」
それを聞くとアクワの顔は明るくなった。
アクワにはもう分かっていたのだ。
自分がシュラインに対して持っている感情は、父が母に対して持っている感情と同じだということを。
アクワにとって今一番大切なのは、父でも母でも、そしてあれほど側にいた妹ではなく、ただ一人信用できる先見・シュラインだった。
何よりも誰よりも側にいて欲しかった。
言葉には出せないけど。
「お母様はお元気ですの?」
アクワの口から出た言葉はこれだった。
「元気ですよ。何をしていても、あの人は元気です。どんなことが起きても、それを素直に受け止める人ですから、預言という力を授かったのでしょうし。だから、その預言に従うのも当然なわけで・・・・」
「シュライン? あの、言ってることがよく分からないのですが・・・・・。」
「つまりは、その忠告に従うのが当然で。」
「何を言いたいのか分かりませんわ。」
「だから、自分の心に素直に言います!」
シュラインはそう叫ぶと、アクワの肩を掴んだ。
「好きです。」
アクワは目を瞠った。
その目にゆっくりと涙が滲み、溢れてくる。
「本当です。迷惑かもしれません。でも、やっぱりどうしてもこの気持ちは消せない。」
アクワの目からは涙が零れる。
キュッと目を閉じて、次に目を開けた時に言葉が零れた。
「私も、ずっと好きでした・・・・。」
「アクワ・・・様・・・・。」
「水穂と呼んで。」
アクワは微笑む。
「水穂・・・・。」
シュラインはそう囁きながら、アクワを抱きしめた。
「私のことは禊と呼んでください。」
「禊・・・?」
「私の本当の名です。両親が付けた真の名。」
時の流れは変わったーーーーーーー
急展開すぎな感が否めませんが、やっとくっついてくれました。
お互い自分の気持ちに鈍感で、気になっているのにずっとそれが何かわからなかったという焦れったい二人です。




