14 神の社
どのくらい歩いただろう。
テルラもアクワも歩くことに飽きた頃、長い階段が見えてきた。
そこは、遠くから見えた森の始まりとも言えた。
「あれが、私の家です。」
シュラインは階段の上の赤いものを指した。
「あれって・・・・あの赤いの、門なの? 変わった形してる・・・。」
テルラが不思議そうに問いかけた。
「門といえば門なのですが・・・あれは『鳥居』といって、個人の家の門ではなくて、えーと・・・神社の門なのですよ。」
「神社? 何、それ?」
「神様をお祀りしている所だよ。今はもうここしか残っていないけれどね。」
ルーカスが説明する。
だが、昔の『日本』というものを知らないテルラやアクワにとっては、不思議としか思えなかった。
「じゃあ、お父様は何なの?」
「何って、ただの人間ではないか。それはわかっているだろう?」
「わかってるけど、だったら、何の為にお父様が『神』にさせられたの? おかしいわ。」
「本当の神は、誰にでも力を貸すわけではないからですよ。」
若い女の声が聞こえた。
驚いて顔を向ければ、いつのまにか、すぐ側に美しい女が立っていた。
地面に引き摺るほど長い黒髪を腕に絡ませ、赤い袴姿の凛とした姿。
その服装は、いつものシュラインと同じだった。
穏やかで切れ長の目、白い肌に赤い唇がとても映えている。
若く見えるが、その毅然とした態度からするとそれほど若くもないようである。
「母上!」
シュラインはそう叫ぶと、その傍に駆け寄った。
「何をされてるんです! 社を出てはいけません!」
「何を言います。あなたがぼうっとしているのがいけないのでしょう? 早くそちらの方を休ませてさしあげないと駄目ではないですか。」
そう言って彼女が見た先には、すでに倒れこんだアクワがいた。
「アクワさま!!」
「アクワ!」
瞳がアクワの様子を診る。
険しいながらも安心した顔で診断を述べた。
「少しはしゃぎすぎたようだ。いつもの発熱だな。」
「家の方へ。床の支度もできております。」
そして、
「さあ。」
シュラインの母は、一同を鳥居の奥へと促した。




