13 町
翌日、いつものように変わらぬ太陽が照りつけていた。
それは偽りの、作り物の光だったが、とても暖かい。
アクワもテルラも初めて感じる暖かさだった。
空気も違った。
今までが澱んでいたように思える。
町の中は、アクワとテルラにとって何もかもが初めてのもの、初めてのことで、じっとなどしていられない。
露店も多く、そのほとんどが二人にとって珍しいものなのだから、ルーカスとシュラインは堪らない。
もちろん、余裕な顔をしている瞳も。
「二人とも、あんまりはしゃぐなーっ!」
ルーカスの声もあまり効果がないようだった。
二人の娘は町娘と同じように、髪飾りや耳飾りなど装飾品に目を奪われている。
「お嬢さんたち可愛いから、よし、半額にしちゃおう。」
店の親父が言う。
けれど、金を持たない二人には買うことはできない。
「いいものあった?」
シュラインの声がした。
気が付けば二人の隣にいて、中を覗きこんでいる。
手にとっている品を見て、にっこり笑った。
「おじさん、この二つね。」
「毎度ーっ。」
支払いをするシュラインに、アクワもテルラもさすがに驚いた。
「い、いいわよ、別にっ。」
「そんな・・・悪いわ・・。」
「気にしないで。今日の記念だよ。」
二人はじっと、手の中のものを見た。
テルラは、可愛らしい動物の顔が丁寧に彫られた、木製のバレッタ。
アクワは、青い糸のステッチが施された、木の皮で編まれたブレスレット。
それは素朴なものであったが、今まで見た何よりも高価に見えた。
「ありがとう。」
二人は微笑みながら、シュラインにお礼を言った。
テルラがシュラインに微笑んだのは、これが始めてのことだった。
「買ってもらったのかい?」
ルーカスが訊く。
「はい。」
「今日の記念だって。」
「そうかい。良かったね。ちゃんとシュラインにお礼は言ったかい?」
「もちろん。ね、アクワ?」
「ええ。・・・・お父様、なんだかとっても体が楽なの。もうしばらく、町を見ていていい?」
ルーカスは瞳を見る。
瞳は身を屈めて、アクワの顔に自分の顔を近付け、その目を見て諭すように言った。
「それはできないよ、アクワ。無理をしてはいけない。私の言うことがわかるね?」
アクワは、瞳から目を逸らした。
「はい・・・・おじ様・・・・」
それはとても悲しくて辛かった。
でも、アクワにはわかっていた。
その決断を下したおじも辛いのだということを。
そして、父も妹もシュラインも同じ気持ちだということを。
だから、無理をしてでも笑顔を作るしかなかった。
心配させないために。
「では、うちに向かいましょう。」
シュラインは、前方に見える大きな森を眺め、そう促した。
本文中に入れられませんでしたが、ルーカスは特徴のある左目を隠すために、目深にフードを被っています。
『神』として表に顔を晒すことのない彼ですが、その特徴は広く知られているので隠さないといけないのです。
他の面々はそういった心配がないので、ごく普通の庶民的な服を着ていれば問題ない・・・・ということで、実はシュラインも今回は袴姿ではないんです・・。
文章力、構成力がない為、盛り込めませんでした。反省・・・。




