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12 外へ


シュラインが先見(さきみ)をしてから半年が経った頃には、彼は塔の中の事が大体わかるようになっていた。

『管理者』たちの態度から、『(デウス)』ルーカスたちの束縛された毎日を知ることも容易にできた。

それは塔に来る前に思っていたよりも、ずっと自由のないものだった。

そして、度々起こるアクワの発熱に何の理由もないということにも気付いた。

ただそこにいるだけでも、起きているだけでも、彼女は熱を出す。


シュラインはそれが心配だった。

だから長い間考えて、自分にできることを見つけ出した。


それは・・・・・・



「塔の外に出る?!」

「はい、お忍びで。少し町を歩かれてから、私の家へ参ります。そこで三日過ごすのですよ。」



シュラインは、にこやかに答えた。

テルラは信じられないという顔で、尚も問う。



「できるわけないじゃないっ、そんなこと!」

「ちゃんと承諾は得ましたよ。ルーカス様もガーランド博士もご一緒ですし。ああ、管理者の皆様には、快く了承していただきましたよ。」

「嘘ぉ・・・・」



テルラは、アクワと顔を見合わせた。

そんなことがある訳がない。


そして、実際の所、彼らは快諾した訳ではなかった。

頷かせたのはシュラインの言葉だった。


『あなた方は、アクワ様が死ぬことを望んでいるということですか。』



シュラインは、こう考えたのだ。

人口とはいえ太陽の光に当たらないでいれば、体に良い訳がない。

外の空気に触れれば気分も変わるだろう、と。



「明日出発になります。今日は早めにお休みください。お迎えに上がります。」



シュラインは一礼するとアクワの部屋を出て行った。

残されたテルラとアクワは、しばらくぼうっとしていたが、やがて我に返ったテルラは言った。



「本当に出られるのね? 夢みたい・・・・。お父様も一緒なんて・・・。」

「あの人・・・・先見(さきみ)をするだけではないのね・・・・。」

「え?」

「力強い何かを持っている気がするの。そう・・・力強い何かを・・・・。」



アクワは、シュラインの出て行った扉を見つめたままつぶやいた。

シュラインが自分の先見(さきみ)をしてくれたあの日から、ずっと心に残っていた何かがやっと形を成してきたようだった。

けれど、まだそれは表現できる気持ちではなかった。

何故なら、アクワはその気持ちが何かを知らなかったのだから。





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