11 疑問
父親の部屋を出てすぐ、アクワはその場にへたり込んだ。
足に力が入らない。
鼓動が早いまま収まらない。
どうにもこうにもならない状態で、両手で顔を押さえたまま動けない。
「アクワ、大丈夫? どうしちゃったの?」
テルラはアクワの今までにない様子に、どうしたらいいのか迷っていた。
「な・・・なんでもないの。なんでもないんだけど、立てないの・・・」
「熱、あるんじゃない? 顔が真っ赤よ。早く部屋に戻ろう。」
アクワを支えてなんとか立たせる。
アクワはずっと考えていた。
これは一体なんなのだろう。
何が起こったのだろう。
この・・・・気持ちは・・・・・?
「君は、自分の意思ではなかったといっていたね?」
ルーカスがシュラインに言った。
「ここに来ることを決めたのは、確か・・・」
「はい、母の勧めです。母の言葉がなかったら、ここには来なかったでしょう。」
ルーカスはそのまま考え込んでしまった。
シュラインは少し待ってみたが、ルーカスに変化はなかった。
「あの、ルーカス様?」
シュラインが声をかけると同時に、ルーカスが声を発した。
「君の母親は、何の規制もなく先見ができるのかい?」
シュラインは少し驚いたが、顔には出さずそれに答えた。
「いえ、母は先見ではありません。私のように未来を見るのではなく、預言をするのです。母は巫女ですから、神から言葉を預かるのです。」
ルーカスはその言葉を聞くと、深く頷き、ふと洩らした。
「そうか、そうだったのか。そういうことか・・・・」
そして、
「ありがとう。今日はもういいよ。済まなかったね。」
それだけ言うと、また何か考え込んでしまった。




