序
破壊され尽くし汚染された大地。
風は止むことを知らず、容赦なく男たちに吹き付けた。
彼らは体型も分からない防護服を着込み、背中には酸素ボンベを装備していた。
それが彼らの命を守る全てである。
彼らが踏みしめているのは、アスファルトでも土でもなく、砂だった。
「ひでぇな・・・」
誰かがつぶやいた。
草一本も生えていないここは、まさしく、地球だった。
「青い地球」「緑の地球」
そう呼ばれていたのは、つい16年前のことだというのに。
全てが人々の犯した罪である。
愚かしい戦争の果てが、この荒涼とした砂漠だった。
「俺ははじめっから調査に来てるけどよ、全然変わりゃしないぜ。見ろ、あの汚ねぇ海。昔はもっとずっと綺麗だったんだ。夏になれば海水浴だなんて言って、皆して集まったもんだ。もったいねぇことしちまったぜ。」
まだ二十歳にも満たない青年が、それに答える。
「僕はまだ小さくて何も覚えてないけど、でも、こんなになってしまった星が故郷だなんて・・・・。本当に、元に戻るんでしょうかね。」
「いつかは戻るだろうよ。その頃、俺もお前も生きちゃいまいがな。でもよ、この星を痛めつけたのは人間だ。直接手ぇ下した訳じゃねぇけど、償っていかなきゃなんねぇ。同じ人間だからな・・・・」
男たちは水質を調査し、地質調査用のサンプルを採った後、街へと急いだ。
酸素が残り少なくなっている。
そして、どちらともなくつぶやいた。
「ノクス様がお眠りになって、十二年か・・・・」
風の向こうに見える夜色のドームへ、男たちの姿は消えて行った・・・・。
昔、初めて書き上げた長編です。
当時の文章を最小限の加筆修正でお届けします。
次からは、ここまで固い話ではありませんので、続きを読んでいただけると嬉しいです。
双児ちゃんが登場です。