No,7 ショー
「それでは、次のショーです! ミス・シェリー、こちらへどうぞ!」
シェリーは唖然としたまま、ロバートの所に来る。
「落ち着いて。後で説明する。ほら、50000Cのため!」
ロバートは小声でシェリーに話し掛ける。
シェリーは小さく頷き、演技がかった口調で話し出す。
「さぁ、次は何をするんですか? ミスター・ロバート?」
「そうですね、その辺の石どれでもいいですから、あの噴水の横の水の中に投げ入れて下さい!」
「これでいいんですね?」
シェリーはその辺の石を拾い、ロバートに見せる。
「はい、いいですよ!」
シェリーは勢い良く、石を水の中に投げ入れる。
『ボチャンッ』
水のはねる音がして、近くには水滴の跡が点々と付く。水面には波紋が広がる。
特におかしい所は見られない。
「さて、次は私、ロバートがやって見せましょう」
ロバートは、シェリーと同じようにその辺の石を拾い、水の中に投げ入れる。
「ここからが違うんです。ご注目下さい」
水面には波紋は広がらず、何の音もない。
・・・石が消えた・・・
皆がそう思った瞬間。
水の中から石が音もなく飛び出し、ロバートの所へ戻っていく。まるで、巻き戻しをしているようだ。
勢い良く飛んでくる石を右手で受け止め、ゆっくりと地面に落とす。
『カツンッ』
石は地面にぶつかり、転がる。転がる。転がり続ける。別に坂道ではないのだが、石はずっと転がり続ける。
しばらくしてある位置まで来ると、ぴたりと止まった。
「・・・あれ・・・・・・? もしかして、最初の所に戻った・・・・・・?ええ、そうよ!同じ場所に戻って来てるわ!!」
ロバートはニッと笑う。
「ピンポーン! 正解です! ミス・シェリー!」
しばらく、金持ち連中は黙りこくる。
「あれ〜? これは面白くありませんでしたか〜?」
ロバートはわざとらしい喋り方で言う。
黙っていた一人が、置いてあった帽子に札束を投げ入れる。
「楽しいショーの礼だ、持っていけ! 1000000Cだ!」
ロバートは楽しそうに、ヒュ〜っと口笛を吹く。
「俺もやるよ! 100000Cだ!」
「500000Cだ!」
(多いなー。帽子、大きいので良かった)
騒ぐ金持ち連中の間から、一人の少女が顔を出す。
「んしょっと・・・・・・ロ、ロバートさん?」
ロバートは少女と同じ目線になるように地面に座り込む。
「うん、そうだよ。初めまして!」
ロバートが優しく笑いかけると、その少女も嬉しそうにはにかんで見せる。
「初めまして! 私、リオーネといいます! さっきのショー、感動しました! ・・・・・・でも私、あんまりお金無いので、100Cしか払えません。いつかまた見かけたら、もっとお金払います!」
「い、いや、ちょっと・・・・・・」
「だから、私がもっとお金を払う時、も一回ショー見せて下さい! 楽しみにしてますね!」
リオーネと名乗った少女はロバートに100Cのコインを渡し、どこかへ走り去っていった。
「ふぅっ・・・・・・。やれやれ、だな・・・・・・」
リオーネから貰った100Cのコインをしばらく見つめると、ロバートはそれをポケットにしまった。