No,6 金持ちの住宅街
二人が来たのは、金持ちの家が多く立ち並ぶ住宅街の中心にある公園だった。
豪華な噴水まである。
「よし、ここにしよう!」
ロバートとシェリーは、なぜか落ち葉や小石を手いっぱいに持っている。
「シェリー、俺、準備してるから、金持ち連中呼び出して来てくれ。『外で、今からおもしろいことをします』とか言えば、たぶん人集まるから」
「・・・・・・メンドクサイ」
「だったら約50000Cの稼ぎは全部俺だけの物・・・・・・」
「それでは行ってきま〜す!!」
「うん、いってらっしゃ〜い」
そう言ってロバートは、とてもいい笑顔でシェリーを送り出す。
しばらくして、シェリーの声が遠くから聞こえてきた。一応頑張って、金持ち連中を家から引っ張り出しているようだ。
ロバートはふっと笑って、それから自分の準備に取りかかった。
「ロバート! お客さん連れてきたよ!」
シェリーは、茶髪のセミロングをなびかせながら、ロバートのほうに走ってくる。
「おかえり〜。たくさんいるね」
シェリーの後からは、高級そうな服を身にまとった金持ち連中がぞろぞろと付いて来る。
「・・・ロバートの準備って、その帽子置くだけ?」
「そうだけど・・・・・・それがどうかした?」
「それだけだったら、手伝ってくれてもいいじゃない!!」
「俺が行ったら、みんな忘れて誰もこないよ?」
「うっ・・・・・・。それもそうだね。じゃっ、はじめようよ!」
「うん、そだね」
(シェリーって、結構アホだ。俺がついてっても、シェリーの事は憶えてるから別に大丈夫なんだよね・・・・・・)
ロバートは、内心でシェリーの事を笑いながらショーを始める。
「それじゃあ皆さん!! ご注目下さい!! これから私共が、見た事のないような、奇想天外なショーを始めます!! どうぞ、ご覧下さい!!」
ロバートは、シェリーが驚くほどの大声で言う。
「それでは、まず一つめ! ミス・シェリー、前へどうぞ!」
「えっ、私!?」
金持ち連中の目が、シェリーに向けられる。
ロバートは小さく頷く。
シェリーは、取りあえずロバートの所へ行き、小声で話しかける。
「なんで私もなのよ」
「その方が、都合がいい」
ロバートは短く返事をして、ショーを進める。
「それでは、ミス・シェリー、そのへんの落ち葉を踏みながら歩いて下さい」
シェリーは、言われたとうりにする。
『クシャッ』
乾いた、いい音がした。
「それを、今度は私、ロバートが同じ事をしますので、よ〜くみてて下さい」
金持ち連中は、ある程度静かになり始めたので、大声を出す必要はなかった。
『クシャッ』
ロバートが落ち葉を踏むと、シェリーの時と同じ、いい音がした。だが次の瞬間、まだ少しうるさかった金持ち連中とシェリーが絶句する。
踏み潰されて粉々になった落ち葉が、一つ一つざわざわと動き出し、くっついて、元通り、潰される前の形になった。
数瞬の間、誰も声を出す事が出来なかった。そしてロバートは、二ッと笑う。
「この奇想天外な出来事、どうでしたか?」
金持ち連中は一斉に拍手したり、あらかじめ用意されていた帽子に、 大量のお金を投げ入れたりする。
「皆さん!! どうもありがとうございます!! ありがとうございます!!」
ロバートは拍手がやむまでずっとそうしている。その傍らで、シェリーは唖然としている。
少し、拍手がおさまってきた。