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なんばー59  作る子

「・・・そう、小麦粉は篩って・・・・・・あっ、それはちょと目が粗いから・・・・・・」

「えぇと・・・これ?」

「あ、うんそれくらい」

 架那は目の細かい篩いを見せて了解を得ると、予め分量を量っておいた小麦粉を篩う。慣れない行為に最初戸惑っていたが、続けていくにつれて手順も迷う事なく滑らかな動作になっていった。

「あ、もう終わってきた? ・・・えと、じゃあ・・・次は、それにそこの卵の黄身入れて・・・あれ? バター・・・・・・?」

 もうすぐで篩い終わる小麦粉を見て次の材料を教えようとするが、覚えていなかったようでレシピを捲る。

 開いたのは、イチゴケーキと小さく題字のあるページ。ふんだんにクリームを使いイチゴを散りばめられた豪勢な完成図の写真が目立つ。

 クラウドは『作り方』と記された部分に指をなぞらせながら今ある材料に目を向けると、幾度かレシピと見比べながら

「ベーキングパウダー・・・・・・?」

 小さく呟いた。2人っきりなので、答えたのは架那。

「それなら、確かさっきそこの棚で見たよ?」

「あ、良かったあったんだ・・・・・・」

 安堵のため息を洩らして微笑むと、架那は使い終わった篩いを洗いながらクスクスと笑い返した。それがいたたまれずに赤い顔を背けると、クラウドは思い出したように声を上げた。

「あっ、さっきの話の続き・・・・・・」

「え? ・・・あ、そうだったね・・・・・・。えっと、どこまで話したっけ・・・・・・?」

「その・・・架那のお父さんとお母さんが・・・亡くなって、お姉ちゃんとの2人暮らしが始まったって所から」

「そうだったね・・・・・・。私はその時小さくて・・・6歳くらいだったかな」

 手を洗って拭い、架那はキッチンの端にあった椅子を引っ張ってきてちょこんと座る。その前に立ってケーキ作りを続けているクラウドを見上げると、懐かしい出来事や悲しかった事を思い出す人特有の細い目で、囁くように語り出した。

「私は3姉妹なんだけど、一緒に住んでた春姉はたまに恐くて凄く優しくて、転勤して遠くに行った百合姉もやっぱり優しくて・・・・・・、2人共恋人もいたの。百合姉の恋人は話で聞いただけで分からないけど、春姉の恋人は私がいた国では珍しい髪と瞳の色でサンローズさんって言ってたっけ。私と春姉の二人暮しで、サンローズさんはすごく頼りになってたな・・・・・・」

 うっすらと、遠くを見る目は僅かに潤んでいる。

 架那の祖国というのは、恐らく日本の事だろうとクラウドは予想した。

 ルーディーの話では、日本人の特徴は名前や言語からして独特のものがあり、見た目は黒髪に黒い瞳の人がそうなのだと言う。同時にヤマトナデシコという言葉も習ったが、クラウドの中ではそれが架那を日本人と思う決定打となった。

 そうこう考えている間にも、架那の話は続く。クラウドの手は止まっている。

「でもね、ある日・・・私はその日をよく憶えてないんだけど、急に春姉とサンローズさんがいなくなったの」

「・・・・・・え? どうして・・・・・・」

 いつの間にかクラウドも椅子を引っ張ってきて、架那と向かい合うようにちょこんと腰掛けていた。

「分からない・・・・・・。でも、何でか分からないけど・・・・・・その日は赤かったってのと温かかったのしか憶えていないんだけど・・・・・・春姉達とはもう、会えないんだって・・・・・・」

 そう思ったの。

 そう言う架那の表情は哀愁が漂っていて、実際よりも年上めいていた。声は震えていて耳までほんのり赤く染まっていたが、泣いてはいない。

 我慢しているわけじゃなく、自然な表情。

 本人の中では既に決着のついた事なのだろうがクラウドは妙に悲しく、近くの棚から一枚ハンカチを出して架那に差し出した。グレイの部屋は多少慣れたようだ、その動作は慌てていながらも間違う事はない。

 気付いた架那はふわりと微笑むと、受け取って礼を言った。

「ありがとう・・・・・・」

「う、うん・・・・・・」

 年相応のその表情にクラウドは安堵すると、また続きを促すようにじっと視線を合わせた。

「あの・・・・・・それで・・・・・・?」

「うん・・・・・・。それでその日から、この施設の中にいたの。始めはね、・・・・・・その、私こんなだから他の人に話し掛けられないし頼りになる人もいなくてすごく寂しかったんだけど・・・・・・。いつの間にかここの人達のお手伝いとか雑用する事になって、同じ部屋のおばちゃん達とも仲良くなってきたの」

 話が進むに連れ、浮いた涙を拭っていたときとは違い照れたような少女の顔になっていた。

「あの日から随分経ったけど誰も春姉達の事を教えてくれなかったな・・・・・・。知らない人の方が多いけど、でも知っていそうな人もいて・・・・・・。それで今回、他の適任の人がいなくてNo.0118様の部屋に来たんだけど・・・知ってるのかな・・・・・・」

「ねえ、架那」

 思案顔になる架那の言葉を、不意にクラウドの声が遮った。

 不審に思っていると、ずいと顔を近付けて尋ねてくる。

「あの、さっきも言ったけど・・・・・・なんでグレイさんの事、なんばーぜろいちいちはちさまって呼ぶの?」

「え? 何でって・・・だって・・・」

 眉を寄せるクラウドに思わず口篭もるが、フト顔を上げて質問で返す。

「クラウドだって・・・なんでNo.0118様って呼ばないの?」

「何でって・・・グレイさんが、そう言ったから・・・・・・? 私の名前って言ってたよ?」

「教えられたのっ!?」

「ふぇっ? う、うん・・・・・・」

 突然身を乗り出した架那に反射で身を引くが、向けられた驚きの瞳は更に近付く。

「本当に!? 知らなかったの!?」

 両の頬をガッシリと掴まれ半分泣きそうな顔で脅えるクラウドは、なんとかその拘束から逃れようとしながら必死に答えた。

「だだだだって僕は初対面だったしここは小さい頃しかいなかったし・・・・・・っ!」

「嘘っ! ここの人でNo.0118様の事を知らない人がいたんだ!」

 いい加減泣きそうなクラウドからぱっと手を離すと、どこか頼もしげな表情で紙とペンを用意し、薄いインクをさらさらと滑らせた。

 大き目の紙の中心にまず書かれたのは、強調させるように円で囲ったオリジナルナンバーという文字。

 そこをペン先で示しながら、架那は口を開いた。

「オリジナルナンバー・・・は、分かる?」






 それから架那による実験塔解説は始まり、暫くの押し問答を繰り返しながらも、ケーキの下地作りと共に終了した。

あらためまして、緋水カノンです!


 61話目から足跡のキャラを使ってあとがき連載を始めようかという企画(?)、どうでしょうか?


 一応、今の所猫関係か幼児関係、もしくは別の意見があればそれで本編とあまり関係のない話(番外編)をしようという企画です!


 ええ、確実に僕の趣味です(←え


 止めて欲しい、もっとキャラを増やしてから始めて欲しい、猫や幼児じゃなくこんなのはどうか、という事があれば、どうかお知らせください。


 なければ勝手に始めます(←え

 一応、友人の意見等では幼児で定着しかけていますが……


 60話目には何連載かを決めて、タイトルを発表したいと思います!


 分かりにくいという点があれば説明いたしますので


 ではでは!

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