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なんばー46  取材という名目の・・・

「ほら、ここが、私の部屋だ。あの辺のソファにでも座って待っていてくれ、酒を持って来させよう。・・・ミリア、ワインは大丈夫かね?」

「ええ、平気ですわ」

 ジノンに促されてミリアはソファに体を沈ませると、小さな手帳やペンをバッグから取り出す。

 同時に細長いケースの中から銀色のフレームの眼鏡を取り出し、慣れた手付きでさっとかける。

「さてと、待たせて済まなかったね。もうしばらくすれば、ワインも届くだろう。早速、取材を始めるかね?」

「はい、よろしくお願いします。では早速・・・・・・」

 しばらくはジノンの会社、レッド・テンについての質問が繰り返され、酒が入ってからは余計な雑談を交えながらの取材になった。

「・・・成る程、そうしてレッド・テンは今のような大きな企業へとなっていったのですね。・・・じゃあ、製薬会社であるレッド・テンにとっては、やはり世界開発兼実験団体の存在は大きすぎるものなのですか?」

「世界・・・開発、兼実験団体? ・・・悪いが、そちらの質問にはあまり答えられないな」

「え、それはなぜです?」

「いや・・・詳しくはまだ教える事は出来ないが・・・・・・」

「・・・と、言うと? 何か世界開発兼実験団体の薬を上回る何かを開発したのですか?」

 ミリアの言葉を聞いて、ジノンは愉快そうにワイングラスを揺らす。

 中には、真っ赤なワイン。

「いいや、そういうわけではない。私のレッド・テンはそこまで高い技術を持ってはいない。・・・いや、今考えれば、世界開発兼実験団体の薬の完成度が異常に高いことも頷ける。・・・まさかあんな秘密を持っていたとは、誰も思ってはいないだろうな」

「・・・・・・」

 黙って何かを考えながら、ミリアはワイングラスに口を付ける。

 そんなミリアを気にも止めず、ジノンは初めは答えられないと言っていた事をアルコールの勢いに任せて喋り続ける。

「薬しか取り扱っていないレッド・テンには、到底出来ない事だったんだよ、アレは。世界開発兼実験団体は食品や製菓、子供向けの玩具や農業用・工事用の機械、そして今はまだ数の少ない自動車にまで手を伸ばし、アレをする事が出来る程の資金と人材を持っている。世界開発兼実験団体がアレをする可能性は充分にある。それになぁ・・・ついこの間、とうとうアレをしていたという事を裏付ける、決定的な証拠を手に入れたのだよ、我が社が極秘に送り出したスパイでね」

「アレ・・・とは・・・・・・世界開発兼実験団体が超極秘で行っている、人体実験・・・の事、ですか?」

 突然告げられたミリアの言葉に、ジノンは当然、驚きを隠しきれない。

 ワイングラスを持つ手は小刻みに震え、ミリアを見る目は微妙に焦点が合っていない。

「ミ・・・ミリア・・・・・・? なぜ・・・その事を・・・・・・!?」

 明らかに動揺しているジノンのその様子にミリアは目を細くし、さも楽しそうにクスクスと笑みを溢す。

 その笑みは先程までの優しげなものではなく、まるで下劣なものを見るような、とても冷たい眼差しだった。

「世界開発兼実験団体・・・いいえ、もう貴方にとっては実験塔、ですか? ・・・実験塔の事は、どこまで調べましたか?」

「・・・まさかお前は・・・・・・っ!! あっ、あのオリジナルナンバーなのか!?」

「へぇ・・・もうそこまで調べたんですか・・・・・・。残念ですね、貴方には即刻死んでもらわなければいけません」

「ひっ、ひいぃ!!」

 ニタリと歪められた卑屈な笑みに脅え、ジノンは悲鳴を上げながら座っていたソファから逃げ出す。

 だがその巨体はミリアに簡単に蹴倒され、先程の従者を呼ぼうと懐に突っ込まれた手は弾かれて押さえ込まれる。

「うわ、うわあぁ!! 誰かっ、誰か・・・っうぐっ!?」

 叫ぶジノンの口を掌で塞ぎ、尚も質問を続けてその手を放す。

「先程、極秘にスパイを送り出した、と言いましたよね? スパイの名前は? ついでに、潜入している場所や細かい特徴まで教えて下さい」

「うあ・・・あぁあ・・・!! やめてくれ・・・殺さないでくれえ!!」

「・・・うるさいですよ、黙って答えて下さい」

 あくまで冷静に、ミリアはかかとのヒールでジノンの腿を強く蹴り付ける。だがその力は余りに強く、ヒールはズボンの布地を突き破って直に腿の肉を抉る。

「うぐっ!? がっああぁああっ!! あぁあっ・・・んぐっ・・・!!」

 高い悲鳴を上げるジノンの口を再度塞ぎ、血がダラダラと垂れる傷口に、更に強くヒールを捩じ込む。

「黙って答えろ、と言ったでしょう・・・・・・? さあ、早く。こちらも時間がおしているんです」

 痛みと恐怖にガタガタと震えているが、ようやく静かになったジノンの口からそっと手を放す。

「ぁ・・・ぁ・・・」

「答えていただけますね?」

「あぁあっ・・・ス・・・スパイの名前は・・・ギル・ゴードだ・・・・・・っ! 送ったのは2人で・・・もう一人は女、アンネ・モア・・・・・・、ギルはっ・・・確か、装備兵達の監視員として勤めていたはず、だ・・・・・・。アンネは・・・開発部に入ったと連絡が・・・・・・っ」

「2人の髪、瞳の色は何か、憶えていますか? あと、実験塔の事は外に漏れていますか? 他に知られていれば、そこも教えて下さい」

「がっ、外部には知られていないはずだ!! 知っているのは、レッド・テンの極秘調査班と私だけのはずだっ・・・・・・!! ギっ、ギルは明るい色の茶髪に深いブラウンの瞳・・・・・・、アンネはブロンドでセミロング、瞳は薄いブルーだっ・・・・・・!!」

 先程よりは幾分落ち着いて、だが自分の身の危険を感じて声は無意識に上擦っている。

「そうですか、分かりました。・・・少しの間、黙って待っていて下さい。・・・抵抗、などは・・・諦めたほうがいいと思いますよ、今のうちに」

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