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なんばー45  そしてその頃、実験塔は

 世界開発兼実験団体。

 表向きには安心・安全な食料の供給、そして子供向けの玩具から大型の農業・工事用機械まで様々な分野に手を伸ばし、その全てで大手企業を名乗る事の出来る、信用できる団体。

 特に薬に関しての完成度は非常に高く、他の企業や団体は風邪薬1つ取っても勝る事はない。

 だが、表向きの華やかなイメージとはかけ離れて、裏ではその関係者に『実験棟』の文字を似せて『実験塔』と呼ばれる程に人体実験が繰り返されていた。

 当然、世界開発兼実験団体によって生み出された薬の完成度の高さを不審に思って、極秘に調べに来る者もいた。だが、人体実験の事実を世に知られるわけにはいかない。

 そうして、世界開発兼実験団体ではなく、実験塔としての裏の象徴、『original number』が出来た。

 オリジナルナンバーとは、実験塔の秘密を暴いた者、調べに来た者、薬の完成度の高さを不審に思った者達全てを秘密裏に排除する為の、実験塔でも特に極秘の集団。

 それぞれ差はあるが全員戦闘に長けており、稀に実験棟に薬を与えられ、特殊な能力、またはその人間にあった特徴を持つ者がいる。




「No,0118、今回の任務の詳細はこれに書いてある。もう秘密を知られているかも知れない。今日にでも行ってもらいたい。どうだ?」

「分かりました。・・・服は?」

 腰まである長い白髪を後ろでまとめている青年・・・グレイは、オリジナルナンバーに直接任務を言い渡す博士に書類のようなものを差し出されて丁寧に受け取り、内容を目で追いながら尋ねる。

「今回は作らせてはいない。前の黒いドレスでいいだろう」

「はい。・・・それでは」

「ああ、行って来い。今回の髪はこの色だ」

「ありがとうございます」

 液体の入った容器を渡されると、グレイは深々と頭を下げて博士のいる部屋から出て行った。

 オリジナルナンバーのNo,0118であるグレイは、ロバートのいないその中では最も戦闘に長けており、女装しての任務が主、という特徴を持つ。

 髪は女装・変装時に何色にでも染まるよう薬で真っ白に染め上げられ、専用の物でしか色を染められないようになっている。当然色なども簡単には落ちないし、髪も痛む事はない。

 グレイは足早に自室へ向かう。任務へ行く準備をする為。

『ガチャッ・・・』

 鍵を開けてドアを開くと、中はクローゼットの多い、グレイの広い部屋。

 グレイは鍵の束を懐に仕舞いながら部屋に入り、いくつかのクローゼットの中から黒い上質なドレスを取り出す。

 それからシャワー、着替え、化粧と淡々と準備をしていき、やがて全ての仕度を整えると、グレイは自室を後にした。




 それから数時間後、とある大きなホテルの前に、黒いリムジンが停まった。

 降りてきたのは、黒いドレスを来たブロンドの女性。

 丁寧な化粧で色付けられたその顔は美しく、元々背が高い上にヒールを履き、鮮やかな黒で引き締められて体の曲線が露になったその姿は、才色兼備の言葉では足りない程の美しさだった。

「お待たせいたしました。私、取材のアポを取った、記者のミリア・レスティーナです。初めまして」

 自らをミリアと名乗るその女性は、ふわりと優しげな笑みを浮かべながら慣れた手付きでバッグを探り、名詞を差し出す。

 ホテルの前で従者を連れて待っていた男性は、ミリアの名詞を受け取りながら素直な感想を漏らした。

「あ、あぁ、初めまして、製薬会社レッド・テンの社長を勤めている、ジノン・オールウェディーだ。・・・はは、記者が取材に来るとは聞いていたが、まさか君のような美女だとは思わなかったな。驚いたよ、ミス・レスティーナ記者」

「イヤですわ、ジノン様ったら・・・・・・。改まった呼び方は苦手ですの。ミリア、と呼んでくださって結構ですわ」

 ミリアがクスリと上品な笑みを浮かべると、気を良くしたジノンはミリアの手を取ってその甲に軽く口付け、離さないままホテルの中へと引いていった。

「それではどうぞ、ミリア。私の部屋でお酒でも飲みながら・・・・・・。どうだい?」

 その美しい顔に絶えず優しげな笑みを浮かべるミリアは、少々驚きながらも頬を染めて小さく頷く。

「夜明けまでならお付き合いしますわ。でも、取材にはちゃんと答えてくださいね?」

「ああ、もちろんだとも」

 従者の者達をさがらせて、ジノンは愉快そうにホテルへと入っていった。




 その2人の後ろ姿を見送る不審な陰が1つ。

「・・・こちらNo,0118の班です。午後7時2分、只今ターゲットのホテルへと入りました。No,0118の通信機からの会話によると、夜明けまでのようです。それでは、任務中のNo,0118の通信機へ切り替えます」

 ミリアを乗せて来たリムジンの運転手は、口元に当てた通信機に言葉を伝えたかと思うとすぐに切り、違うボタンを押してミリア達の会話を流す。

 そしてリムジンは不審に思われる前に、早々に走り去って行った。

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