表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/60

なんばー42  序章

 ロバートとシェリーが去った後の住宅街の大通り、そのから人だかりが消える事はなく、幾人もの人間の呻き声や怒鳴り声が鳴り響いていた。

 そしてその数十分後、南側の城門の近くの家で、人の血が大量に流れ出た。

 それが治療する時に流れ出た血なのか、それとも罰せられた家族から流れ出た血なのかは、今はもう、ロバート達には知るよしもなかった。




 住宅街の大通りから離れてジープに乗り込んだロバート達は、次の国に向かって車を走らせていた。

 この国に来た時と同じ、運転席にはシェリー、助手席にはロバートが座っていた。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 シェリーは何を話していいのか分からずにロバートを見るが、当のロバートは窓から入ってくる風に髪をなびかせ、無言で進行方向を眺めていた。

「――・・・、シェリー、ごめん」

 唐突に、ロバートが口を開く。

「え? ・・・何が?」

「いや・・・俺のせいで、シェリーが犯罪者まがいなことした事になったし・・・・・・。最後に俺が無駄な事しなければ、まだよかったかも知れない」

「・・・・・・」

 シェリーがハンドルの先から目を離してロバートを見ると、とても苦い顔をしていた。

でも、何か許せなかったんだ。あの宗教の本当の意味も知らない子供までが神様だの自然に生きるだの言って、誰も自分や他人の死と向き合おうとしていない・・・・・・!! あの国では全部他人事なんだ!!」

「あ・・・あの宗教の本当の意味・・・・・・?」

 シェリーは昂ぶった感情を露わにしたロバートに戸惑いながらも、ふと感じた疑問を口にする。

 ロバートは1度シェリーの方を向いてため息を吐き、もう1度視線を下に移す。

「・・・あの宗教の出来た時の事、話そうか・・・・・・?」

 ロバートが顔を俯けたままポツリと言うと、シェリーは緊張に息を飲む。

(確かに・・・普通は傷付いた人を治療しないなんて宗教は成り立たないはず・・・・・・。なのに、なんでこの国は・・・・・・)

 シェリーの運転するジープはとっく国の城門の外に出ており、今は夕日の眺めが美しい荒野を走っていた。

 風に揺れる木々は、国の中の騒動など欠片も感じさせはしない。

「私・・・私、は・・・・・・聞きたい・・・・・・!!」

(一つの国の歴史を・・・その国に何があったのかを、知りたい・・・・・・!)

 揺れる木々から1枚の葉が風にさらわれ、やがて音もなく地に落ちた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ