ナンバー38 だから付いて来ちゃダメだって・・・
やがて2人は全ての仕度を終え、荷物を満載したジープに乗り込む。
「じゃー出よっか、ロバート!」
「んー」
ジープはガタガタとい砂利を踏みつけ、ゆっくりと動き出す。
「・・・あのさ、シェリー」
外の流れる景色を眺めていたロバートが、ふいにシェリーに話し掛ける。
「やっぱり観光はナシにして、買い出しだけにしよっか。必要なモノとかは全部俺が買いに行くからさ、シェリー、ジープの中で待ってて」
「え!? 何で!? 私も買い物行きたいのに!!」
「いや、いい。・・・シェリー、着いて来たらダメだよ」
「え〜!? ひどいよロバート〜!? ・・・何か、私が来たら不都合になる事があるの?」
「・・・いや、不都合と言うよりは・・・・・・、来ないほうがいいと思う。シェリーの為に」
ロバートのその言葉に、シェリーはムーッと口をへの字に曲げる。
「・・・分からないよ・・・・・・」
あの後ロバート達は目的地の大きな店から少し離れた所でジープを停め、ロバート、1人だけ降りた。
途中、袖のない服から見える包帯を気にしてか一度コートを着に戻り、また大きな店に戻って行った。
1人車に残され、ロバートの意図が全く読めないシェリーは、淡々と歩いて行くロバートのその後ろ姿をぼんやりと眺めながら、小さくため息を吐いた。
その、ほんの少し後。
「・・・・・・ハァ・・・・・・」
先程のシェリーと同じように、人込みに紛れて歩いていたロバートが、小さくため息を吐いていた。
(・・・当然かも知れないけど・・・やっぱ付いて来てる・・・・・・)
ロバートは気付かれないようにチラリと振り向き、またため息を吐く。
その視線の遥か後方には、何気に後を尾けてくるシェリーの姿があった。
(元オリジナルナンバーの俺が気付かないと思ってるのか・・・・・・。・・・あー、そっか・・・・・・。シェリーってバカだったんだ)
「・・・ほっとこ」
ロバートはポツリと呟き、ふとある店の前で立ち止まる。
「・・・果物屋」
サンタニア――・・・前いた国で毎日通っていたせいか、なんとなくそこで足が止まってしまう。
すぐに立ち去ろうとしたが、思い直し、屋台のようなその店の前に並べられた果物の1つ、リンゴを手に取る。
「ヘイ、いらっしゃーい!」
奥にいた中年太りした男性がロバートに気付き、声を張り上げた。
そしてロバートは、ハッとした様子で顔を上げる。
(・・・無意識?・・・もう俺は、果物屋には行かなくていいはずなのに・・・・・・)
「・・・じゃあ、リンゴ1つ・・・いや、2つお願いします」
「はいよぉ!・・・リンゴ2つ、毎度ありー!」
ロバートが金を払って立ち去ると、果物屋はニカッと笑って送り出した。
(どこの国でも、果物屋のあの性格は変わらないのか・・・・・・)
そんなことを考えながら、ロバートはおもむろに1つのリンゴをかじる。
「・・・甘」
オヤジのトコのより甘い・・・そんな事を考えながら、ロバートは大きな店の前で立ち止まる。
そして、自分が食べていないほうのリンゴをジッと見る。
(後方約30m前後、道の端に沿って、こっちに向かって移動中)
「せぇ――・・・の!!」
ロバートはそのリンゴを後ろ向きに思いきり投げ、空高く飛んでいくそれを、ゆっくりと眺める。
『ゴッ』
「ぶっ!!」
そのリンゴは、ロバートの後を尾けていたシェリーの頭に見事に命中した。