ナンバー37 包帯グルグル
(・・・本当に、寝てる間に包帯代えられてた・・・・・・)
あの後ロバートは、部屋の中まで付いて来たシェリーをやんわりと追い出し、ベッドの上に座って1人で包帯を代えていた。
その傍らには、グレイが置いていったらしいケースに入った10錠の抗剤と、未だ未使用の包帯が4つと半分ほど使われただろう包帯が1つ、無造作に置かれていた。
ロバートは、夜中グレイが代えたであろう包帯をすべて取り、露になったその傷を見る。
「・・・・・・」
グレイが傷を付け、シェリーが縫ったその傷口からは既に糸が抜かれており、縦に伸びた刺された跡と針で縫った跡が生々しく残っている。
今もまだ完治してはいないが、その傷は一生残るものになるだろう。
ロバートはそれをひとしきり眺めた後、グルグルと適当に包帯を巻き、いつもの、黒地に白いラインの入った服を着る。
ちなみにこの服は、ロバートが実験塔にいた頃の黒装束をあちこち自分で変えたものだ。
袖はない。
本人いわく、そのほうが着心地がよくて動きやすいらしい。
『コンコンッ』
「ロバート、ちょっと入ってもいい?」
ロバートは、前開きのその服のジッパーを適当な位置まで閉める。
「はーい。どーぞー」
『ガチャッ』
「何、どうしたの?」
ロバートは、包帯を片付けながら言う。
「荷物はどうするの? 全部ジープに乗せといたほうがいいかな?」
「ん・・・、そうだなぁ・・・・・・。んじゃ、いつでも国出られるように、ついでに全部のっけとこっか」
「え!? もうこの国出るの!? ・・・もうちょっと、観光とかしようよー!!」
シェリーは、だだっこのようにジダンダを踏む。
「・・・面倒くさい・・・・・・」
ボソリと言うロバート。
そんなロバートの本音をチラリと聞いたシェリーが、やはりだだっこのようにジダンダを踏む。
「なんでー!? もうちょっとくらいこの国にいてもいいでしょー!?」
「うるさいうるさい分かった分かった。んじゃあ、観光とか買い出し終わったら、すぐにでもこの国は出るよ? ・・・こんな国で怪我なんかしても、治療できないし・・・・・・」
「あー・・・・・・、そっか・・・・・・。うん、分かった! じゃあ私、準備してくるね!」
「は!? まだ準備してなかったの!?」
「えー? ・・・うん。」
シェリーは、えへへ・・・とイタズラっぽく笑い、準備をしに行くのだろう、急いでロバートがいる部屋から出て行こうとする。
「あっ、シェリー、ちょっと待って!!」
『ガクッ』
「なっ、何!?」
シェリーがとっさにドアをつかんで走り出すのを止めると、足を滑らしそうになる。
「・・・これ・・・・・・」
ロバートはケースの中から抗剤を1錠取り出し、シェリーに差し出す。
「え? ・・・何で? 私はロバートのこと忘れてないよ?」
ロバートはシェリーのほうへ歩み寄り、その手にそっと抗剤を持たせる。
「まあ、保険みたいなモノ。・・・死にはしないから、とりあえず飲んどいて」
「いや、死にはしないって言葉が余計に怖いよ!! ・・・えっと、これって普通に飲んでも大丈夫なの?」
シェリーは妥当なところにツッコミつつ、ここはおとなしく飲む事にする。
「(多分)大丈夫だって。グレイが作って俺に渡したものだから変なのは入っていない」
「そんな・・・断言できるモノなんだ・・・・・・」
シェリーは軽く苦笑した後、ロバートに渡された抗剤をポイッと口に放り込み、一気に飲み込む。
『・・・ゴクンッ』
「・・・なんか、喉が気持ち悪・・・・・・」
「まぁ、気持ち良くはならないと思うけど。・・・はい、飲んだらさっさと出てって準備準備〜」
ロバートは、シェリーの背中を押しながらスタスタとドアへと向かう。
「え? ちょっ、ロバー・・・」
『バタンッ』
「準備できたら呼んでね。じゃ」
無情にもシェリーを部屋から追い出したロバートはそう言い放つと、自分がすでに準備しておいたかばんを、たすき掛けに肩に掛けた。