ナンバー33 少しずつ剥がれてきた仮面
「それじゃ、シェリーさん、何から聞きたいですか?ロバートの失敗談なら、大方全部・・・・・・」
楽しそうに話すグレイの言葉をさえぎり、ポツリと言う。
「・・・ロバート、他にもなんか隠してる・・・・・・」
グレイは少しつまらなさそうに言う。
「・・・・・・そりゃそうですよ、ロバートですよ? 本当に大切なことだけは・・・言いたくない事は、絶対に言ってはくれませんよ」
グレイはベッドに入りながら言う。
「私でもわかる、ロバートが言わない理由は、まず、一つあります。・・・一つめは、今はまだ、シェリーさんに知られたくないからです」
「私に知られたくない? ・・・二つめは・・・・・・?」
グレイは、さも当然のことのように答える。
「二つめは、ただ単に、ロバートが面倒だったからです」
「へっ!?」
シェリーは間の抜けた声を出す。
「だっ、だって、最初はあんなマジメな顔して、・・・なんだっけ、えっと、実験棟のこととか、リリーってゆーののこととか、あと私が知りたい事全部話すって・・・・・・」
「だから、面倒だったんでしょう」
シェリーは数秒間黙り込み、ガックリと肩を落とす。
「何よソレ〜・・・・・・。ロバートのバカぁ〜・・・・・・」
小さなため息まで吐いている。
そんなシェリーを見てさすがに哀れに思ったのか、グレイは遠慮がちに言う。
「ロバートのこと、本人に差しつかえない程度になら教えてあげられますよ?」
「え!? ホント!?」
「はい。夜はまだ長いですし、大丈夫ですよ」
「・・・・・・あ〜。でも・・・・・・」
シェリーは少し考えるように俯く。
「・・・? ・・・どうかしましたか?」
「・・・今は、それよりも、グレイの話が聞きたい」
シェリーは、まっすぐにグレイの瞳を見て言う。
「え・・・? 私の、ですか?」
グレイは戸惑いながら、慎重に尋ねる。
「なぜ、私なんですか? ロバートではないんですか?」
グレイの2度の質問に、シェリーは微かに首を横に振る。
「・・・確かにロバートは、大切なことは私に言わなかった。私はそれを知りたいし、できるならロバートの力になってあげたい。でも、私は・・・ロバート本人の口から聞きたいの」
「・・・・・・!」
「ロバートも・・・グレイも、自分のことはあまり言おうとしないのが目に見えてわかるの。私だけ・・・部外者みたいで、イヤなの・・・・・・」
シェリーは今にも泣き出しそうな顔で俯いている。
「・・・私もロバートも、恐らく人に話せるような立派な人生は送っていませんよ?」
「旅をしてる人なんて、みんなそうだよ! なにかしてしまって自分の国から追い出されたり、自分から出て行ったり・・・・・・」
シェリーは途中まで言うとハッとして口をつぐみ、黙り込む。
グレイは、薄く目を細めてシェリーを見る。
「やっぱり・・・・・・あなたも、でしたか・・・・・・」
シェリーはそれっきり、何も言わなくなる。
グレイは静かに息を吐くと、優しくシェリーに笑いかける。
「わかりました。私の話は聞いていて楽しいものではありませんが、聞きたいというなら話しますよ」
シェリーは、パッと顔を上げる。
「ホント!?」
「はい、シェリーさんの気の済むまで、いつまででも!」
「ありがと! グレイ!」
グレイもシェリーも、嬉々として笑い合っている。
・・・だが。