ナンバー30 実際のロバートの過去
長いです。
シェリーは真剣な顔をして、ロバートに質問する。
「・・・オリジナルナンバー・・・。じゃあ、ロバートもいっぱい殺したの? その、秘密をバラそうとした人を・・・・・・」
「・・・ん、たくさん殺したよ・・・たくさん・・・・・・。こっからは俺個人の話だけど・・・・・・一応、今話したトコまではちゃんと理解できた?ちょっと早口すぎた?」
ロバートは、シェリーの様子を窺いながら聞く。
「う・・・ん・・・・・・。大方わかった、と思う」
「一応これで一区切りついたけど、ちょっと休憩する?」
「ん・・・・・・。いい。そのまま続けても大丈夫だよ」
「そっか・・・・・・。わかった、じゃあ続きから」
「さっき、被験体はみんな、名前代わりにナンバーが付いてるって言ったけど、一応みんな親からもらった名前はちゃんとあった。でも俺の場合、生まれる前、お腹の中に居るときに、人の記憶に残らない薬、自分の記憶が消える事のない薬、『絶対記憶』って言う薬を投入されていたから、親から名前をもらうことはなかった。ただ、オリジナルナンバー0117・・・正式には、『original No,0117』としか呼ばれなかった」
「名前が、なかったんだ・・・・・・」
「うん。”人の記憶に残らない”からね。でも、皆が皆、実験塔の博士達まで俺のことを忘れたら意味がない。だから、新しい薬をセットにした。いま、俺のことを憶えてる人間は、みんなその薬・・・・・・、絶対記憶の効果を打ち消す薬を投入されている。・・・そのおかげで、博士達やグレイは、俺のことを憶えていられる」
「そうだったんだ、それで・・・・・・」
「俺は・・・『No,0117』は、その薬のせいで他のオリジナルナンバーの 人間達より任務の数が圧倒的に多かった。人の記憶に残らないから、目撃者などの心配はなくなるし、なにより、当然のように覚えが早いから、上達の仕方もハンパなく早い。そして、その次に強かったのが、グレイ」
ロバートは、いつの間にか自分のベッドに突っ伏して眠っているグレイを見る。
ベッドを挟んで向かい側に座っていたシェリーも、ロバートの視線に合わせてグレイを見る。
「オリジナルナンバーの人間はみんな1人1人部屋があるんだけど、俺とグレイは部屋が隣合わせだった。そのせいか、普段からよく話したり、一緒に遊んだりしてた。・・・グレイは、『original No,0118』。生まれたのは俺が少し先だけど、年的には同じ。生まれた頃からずっと一緒だったから、仲もすごく良かった・・・・・・」
ロバートは、腰まであるグレイの白く長い髪を、指に絡ませて遊ばせている。
だがそれに気付かないのか、グレイの寝息は穏やかだ。
「でも、俺は11歳の時、実験塔から脱走しようと決意した。親父・・・ルーディーとクラウド、俺の弟が、実験塔から脱走したから。・・・けど、それをグレイに話したら、思い切り反対された。”向こうからしてみれば、他人同然の存在なのに、行っても意味ない” って言われた。・・・でも俺は、ルーディーが、その頃まだ5歳のクラウドを連れて、実験塔から逃げきれるはずがないと思った。だから、俺はグレイの声を無視して、さっさとルーディー達のあとを追って脱走した。・・・思ったよりも、ルーディー達を助けながらの旅は大変だった。飢えで死にかけもしたし、俺が実験塔の使いだと思われて、ルーディー達に殺されかけたこともあった」
「・・・・・・っ!」
「皮肉な話さ。こっちは必死で助け続けてたのに、まさか殺されそうになるとは・・・・・・。そうこうしている間に、脱走5年目にして、俺は実験塔に捕まった」