No,3 再会
「え・・・・・・?」
シェリーは訝しげな顔をする。
「私のこと・・・憶えて、ないの・・・?」
「・・・なぜ、憶えているんですか? まずはそれからです」
ロバートの不審な質問に、シェリーは少し迷って答える。
「昨日の夜、私は山に入ったら道に迷って、ここ、あなたの家に来たの。そしたらあなたは、その時丁寧に教えてくれた。その後私はそのまま行ったけど、後から孤児の子達があなたのもとに行った。そしたら・・・・・・。・・・これが、昨日あなたと会ったときのことよ」
ロバートは表情を変えずに話しを聞いていた。
「・・・わかりました。確かに当たってますね。もう一度質問します。なぜ、憶えているんですか? その理由が、自分でわかりますか?」
「憶えている理由・・・? あなたは私の恩人だし、何より昨日のことだよ?忘れるわけないよ」
ロバートは、シェリーに向けていた銃をおろす。
「そう、ですか・・・・・・。では、二つ目の質問です。なぜまたここに来たんです?」
シェリーは、少しの間、黙り込む。
「・・・あなたに嘘は通じなさそうだし、正直に言うよ」
銃口は降ろされたが、未だに警戒心を剥き出しにしているロバートのその目をジッと見据える。
「この間の孤児の子達・・・・・・、帰る途中にはもう、あなたの事を忘れていたの・・・・・・。今日は、その理由を聞きに来たの」
「・・・・・・」
ロバートはしばらくシェリーを見ていたが、やがてフッと笑う。
「ずいぶんとストレートに聞いてきますね」
「答えてくれるの? ・・・嫌なら諦めるけど・・・・・・」
「ん――・・・そうですねぇ・・・・・・」
ロバートは少し考える。
「明日・・・明日まで俺の事を憶えていたら、教えてあげますよ」
「え? なんで今は?」
「嫌な言い方だったら謝ります。今はあなたのことが信用できないからです」
「・・・明日、ですか?ホントに?」
「? ・・・何か不満でも?」
「えぇ〜っと・・・寝袋貸シテ下サイ」
シェリーは、なぜかそこだけ棒読みで喋る。
「・・・はぁ?」
「今お金ないからホテルに泊まれなくて・・・・・・。庭の隅でいいから、居ていい? 家に泊まらせてなんて言わないから〜! お願い!」
ロバートは慌てた様子で答えようとするが、シェリーがそれを遮る。
「いや、外だと風邪ひくから・・・」
「ねー、お願い! ・・・ダメ?」
なんとなく、シェリーの上目遣いから思わず顔を背ける。
やっている本人は、まったく自覚はない。
「い、良いけど・・・外だと風邪ひくから、中にしてください」
「ぃえーい!! やったぁー!! アリガトー! ロバート!」
嬉しさのあまりシェリーがロバートに抱きつこうとするが、ひらりとそれを避けられてしまう。
『ゴンッ』
「いった・・・! ていうかひどぉ〜い!」
「さっき言ったでしょう、信用してないって」
「うわーん!!」
いつの間にか、シェリーの喋り方に敬語が減ってきているが、これも本人まったく自覚がない。
そんなこんなで、その日シェリーはロバートの家で一泊したのだった。