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ナンバー28  その涙の理由は

「・・・・・・ゴメンナサイ・・・・・・」

 ロバートは真っ赤な顔でぐったりとベッドに横になり、その脇でため息をついているグレイとシェリーに小さな声で謝る。

「いや・・・なんて言うか、コーヒー煎れるくらいならできると思って・・・・・・、あの・・・・・・ゴメンナサイ」

 グレイは多少疲れたような呆れ顔でロバートを見る。

「熱があってグダグダの時まで、ムリしないで下さい。コーヒー煎れるくらいなら私でも出来るんですから」

 ロバートは低く唸って、黙り込む。

「・・・・・・」

 先程からずっと俯き、何もしゃべらないシェリーに、グレイが話し掛ける。

「シェリーさん、どうかしましたか?」

「・・・・・・ロバート、さ・・・・・・」

 シェリーは俯いたまま、ロバートに言う。

「ロバートさ、私に自分のこととか話さなきゃいけないってなってから、なんかよそよそしくなった気がする。・・・・・・自分からコーヒー煎れに行ったり、出来ても、少し冷めるまで戻って来なかったり・・・・・・」

 ロバートは額に乗せられていた濡れ布巾を取りながら、ゆっくりとベッドから起き上がる。

「言いたくないんなら、別に言わなくてもいいから・・・・・・、お願いだから、私から離れようとしないでよ・・・・・・。・・・グレイから、ほんの少しだけ聞いたんだけど・・・・・・、実験塔っていう所からロバートのお父さんと弟と、ロバートの3人で脱走したって聞いた・・・・・・」

「・・・・・・」

「それがどういう所かは私は全然知らないけど、ロバートが今まで私に自分の過去を隠しているのは、多分そこのせいなんだっのは分かるよ・・・・・・」

 ロバートは、涙で潤んだシェリーの瞳をジッと見つめる。

 その場は、シェリー以外は誰も話さず、ただシェリーの嗚咽だけが聞こえる。

「私、ロバートのこと知らないから・・・・・・、何も知らないままでいいから・・・・・・っ! お願いだからっ! ・・・・・・お願いだから、私から、遠い人にならないでよ・・・・・・」

 シェリーはずっと俯けていた顔を上げ、悲しげにロバートを見つめる。

 その目からは、いつの間にか涙が溢れ、赤くなった顔を伝っていた。

 シェリーは嗚咽を繰り返しながら、両手の甲で目元を拭い続ける。

 その姿は、泣いているのを隠しているようにも見える。

 ロバートは、赤くなったシェリーの顔に手を添え、ゆっくりとこぼれる涙を拭う。

 シェリーはビクリと震え、ギュッと目を閉じる。

 そしてゆっくりと目を開くと、少し悲しそうな、だがとても優しく微笑むロバートの顔が、にじんだ涙の向こうに見えた。

「・・・・・・ごめん、シェリー・・・・・・。なかなか言う決心がつかなくて、少し迷ってた」

シェリーの瞳からは、また1つ、涙の雫がこぼれる。

「やだ・・・・・・聞きたくないよ・・・・・・っ! ・・・・・・ロバートの辛そうな顔、見たくない・・・・・・っ!」

「・・・ごめん。でも、多分もう今以外の時には、俺が居るか分かんないから・・・・・・」

 シェリーは目を見開く。

 ロバートはシェリーの頬に添えていた手を下げ、その潤んだ瞳を見つめ、静かに話し出す。

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