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ナンバー27  グレイの来た理由

 あの後、しばらくの沈黙が流れていたが、ロバートの声でそれは破られる。

「コーヒー煎れてくる。グレイ、何がいい?」

「あ、私は大丈夫です。持参してますから」

 グレイはどこから取り出したのか、銀色の水筒をその手に掲げる。

「OK、シェリーは何がいい?」

「う、うん・・・ホットで・・・・・・」

「了〜解〜」

 ロバートは少しふらついてはいるが、壁に片手を付けながらキッチンに歩いていく。

「・・・・・・」

(・・・この前ロバートが戦ってた人じゃないのかな・・・・・・。しかも普通に友達っぽい。ロバートのことを憶えているんだ。・・・なんで? ロバートは人の記憶に残らないんじゃなかったっけ? ・・・それもなんで? そういえば、サンタニアにいた時のショーのネタとかその他色々、まだ教えてもらってない!)

「シェリーさん?」

「ふぁい!?」

(あ、噛んじゃった・・・・・・)

 グレイは、首をかしげてシェリーを見る。

「どうかしましたか?」

「えっ、いや、何も・・・・・・。あの〜、失礼なこと言ってたら謝ります。その・・・・・・」

(腰まである長い白髪、整った顔立ち、細長い手足、笑い方・・・・・・。すごく綺麗な女の人みたい。・・・でも) 

「男の人・・・ですよね・・・・・・?」

 シェリーが恐る恐る尋ねると、グレイは驚いたように目を見開く。

「あっ、ちっ、違うんなら別に・・・・・・!」

「なぜ、分かったんですか?」

「え?」

 シェリーは、間の抜けた声を出す。

「いやただ、一発で私を男だと気付いた人は本当に久しぶりだったので、少し驚いてしまって・・・・・・。なんで分かったんだろうって」

「あぁ、なるほど。・・・じゃあ、ちょっと手、出してみてください」

「手、ですか?」

 グレイがよく分からないまま少し手を出すと、シェリーはそれを自分の手元まで引っ張り、自分の手を横に並べて見せる。

「ほら、並べて見ると、なんとな〜くゴツイ感じがするでしょ?それで少し気になって、よく見たら男の人っぽいな〜と思って・・・・・・」

「ふ〜ん・・・・・・。そういうものですかね・・・・・・」

「今までの人は、多分全体的にしか見ていなかったんじゃないんですか?パッと見、スゴク綺麗な女の人だし・・・・・・」

「・・・・・・」

 グレイは自分の手とシェリーの手を見比べて、なんとなく理解する。

「あの・・・・・・、もう1つ聞いても良いですか?」

「・・・? ・・・・・・いいですよ?」

「最初に聞くの忘れてたけど・・・あの、この前ロバートと戦ってた人ですか? それとも・・・・・・」

「はい、この前ロバートと戦って怪我をさせたのは、私です」

「・・・へ・・・・・・?」

 意外とアッサリ白状するグレイに、シェリーはガクッとする。

「どうしたんですか? あ、私のこと、覚えていませんか?」

「ちょっ、ちょっと聞いてもいいですか? えっと、あなたは・・・・・・」

「グレイ、です。呼び捨てでいいですよ。あとその敬語も」

 グレイは水筒にいれてあったオレンジジュースを、ついていたコップに移しながら言う。

「あ、そっか・・・ありがと、グレイ!」

 グレイはコップに口を付けて、ニコッと笑う。

「じゃあ早速質問するけど、グレイがこの前ロバートと戦ってた人ってことは確認できたけど・・・・・・、なんでそんな人が普通にロバートの友達のように遊びに来てるの? 何だか・・・あまりにも不自然」

「不自然、ですかぁ・・・・・・。一応、私とロバートは友達です。少なくとも、私はそう思っています」

「友達・・・友達なら、なんであんなっ・・・・・・!」

「任務だから、ですよ・・・・・・」

 シェリーは、訳がわからない、という顔をする。

「実験塔のことや、それ以外の詳しいことは後でロバートが説明しますので、分からなくても聞き流して下さい」

 グレイは短く前置きを言うと、軽く唇を舐め、そして話し出す。

「実験塔っていう組織があります。その正式な名称は後でロバートが言うと思いますが、その名称事態はシェリーさんも聞いたことがあるでしょう。・・・その組織に私はいて、今回は、そこからの脱走者である、『ロバート』、『ルーディー』さん、『クラウド』さんの3人を捕獲しろ、という任務を受けて、私は来ました」

 シェリーの体が、一瞬緊張に包まれる。

 そこでグレイはため息を1つつき、また話し出す。

「ですが、その任務は失敗に終わりました。ルーディーさん、クラウドさんまでの捕獲は順調にこなす事が出来ましたが、さすがにロバートは、一筋縄ではいきませんでしたね。マグナム使うのはなんとなく分かっていましたが、まさかいきなりアサルトライフルを出すとは思っても見ませんでしたよ、それに・・・・・・」

「ちょ、ちょっと待って、グレイ」

「はい、なんでしょうか?」

「ルーディーさんとかクラウドさんって、誰なの?ロバートの知り合いの人?」

 シェリーがそう言うと、グレイは意外、とでも言うようにシェリーを見る。

「ロバートから聞いていないんですか? ・・・まぁ、いいでしょう。ルーディーさんはロバートの父親で、クラウドさんはロバートの弟です。名前、知らなかったんですね」

「・・・・・・えっ!? それってどういうこと!?」

「いや、だからルーディーはロバートの父親で・・・・・・」

「そこじゃなくて!!・・・ロバートの父親って、あの果物屋のおじさんだよね? でクラウドって人は分かんないけど・・・・・・。2人は、もう捕まったってこと!?」

 グレイは少し俯き、シェリーから目を逸らすように横を向く。

「・・・私の今回の任務は、脱走した3人の捕獲です。ロバートの所へ行く前に先に2人を捕獲し、実験塔に連れて行きました」

 その語尾は、微かに震えている。

(・・・何? 脱走者・・・・・・? ・・・もしかして・・・・・・)

「脱走者って、もしかしてあのおじさんとロバートの弟も・・・・・・、ロバートも、その実験塔にいたってことなの・・・・・・?」

 グレイは横を向いたまま、コクリと頷く。

(え・・・・・・。なんかもう、意味わかんなくなってきたぁ〜・・・・・・。えっと、何? 今の話まとめると、ロバートは元は実験塔って所の人で、何でか知らないけど、そこから逃げちゃったから、それをグレイ達が捕まえに来たってことかな? OK、少し分かってきた気がする!)

 グレイはふと顔を上げると、あたりをキョロキョロと見回し始める。

「・・・ロバート、来ませんね」

「そういえば、確かに遅いような気が・・・・・・」

「熱、ありましたよね、ロバート・・・・・・」

「うん、すごいフラフラしてた・・・・・・」

「さすがに心配ですので、様子見に行って来ますね」

グレイはスッと立ち上がって、キッチンへ行こうとする。

「あ、私も・・・・・・」

「いえ、そこにいてもいいですよ?何かあれば呼びますし・・・・・・」

「う、うん、わかった・・・・・・」

 シェリーが小さく返事をすると、グレイは早足でキッチンに消えて行った。

 淡いコーヒーの香りが漂ってくるキッチンには、2人の人間がいるとは思えないほど静かで、1人居間のソファに残されたシェリーは、すするコーヒーもなく、ただひたすら静かに座っているのだった。

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