ナンバー21 イジメ合戦
数秒後。
「へ〜ぇ、俺の血まみれの姿に見とれた、か。へ〜ぇ」
ロバートは、わざとらしくシェリーをいたぶる。
シェリーは顔を真っ赤にして、プルプルと震えている。
「うるさいっ!! 別にいいでしょ!? 私がどう思っていようと!!」
シェリーは噛み付くように怒鳴る。そんなシェリーを見て、ロバートは一瞬静かになる。
「・・・・・・ぷっ、あははっ!!」
・・・もはや、好きな子をイジめる小学生のようだ。シェリーはム――ッと言いながら、怒っている。
「もういいでしょ!? 早く縫合終わらせちゃってよ!!」
「・・・へぇ〜い」
ロバートは、いまだ笑いを含んでいる声で、だるそうに返事をする。
「ったく、もー!!」
シェリーは、静かに息を付く。
急に、シェリーの前にロバートの手が差し出される。
よく見るとその手には、シェリーが買ってきた針がある。
「シェリー、俺右手使えないから、代わりにこれ消毒して」
「えっ? どうやって?」
「・・・ダサッ・・・・・・。えと、ほら、さっきシェリーの腕消毒する時に使ったやつ」
「ちょっ・・・・・・!? 何よ、ダサッて! スゴク酷い!!」
シェリーはロバートの小声での文句を聞き逃さず、ツッコミを入れる。
「別に、気にしなくてもいいのに」
「・・・余計に酷いよ・・・・・・」
シェリーはブツブツと言いながらも、ちゃんと消毒をしている。
「終わったら、糸通して俺に渡して」
「うん、わかった。・・・はいっ、できたよ!」
「ん。ありがとう」
ロバートはそれを左手で持つと、早速縫い始めようとする。
「ちょっ、ちょっと!? 麻酔は!?」
「・・・我慢する」
「我慢って・・・・・・。・・・もういいや、じゃあ、左手で縫えるの?」
「俺は両利き」
「やりにくいなら、私がやるよ?」
ロバートは少し迷って、答える。
「・・・ん。じゃあお願い」
「・・・了解」
そう言うとシェリーは、ロバートに、ソファに寝るようす。
ロバートは普段なら肘を置くところに頭を乗せ、ゴロリと横になる。
「えっとさ、普通に、服縫うときみたいでいいの?」
「まぁ・・・・・・、そんな感じかな」
「・・・あいかわらず適当ね・・・・・・」
シェリーは少し呆れ顔で言う。ロバートは少し考え、そうかもしれない、と言う。
シェリーはクスリと笑い、その辺のタオルを取る。
「麻酔ないから痛いよ? 叫ばないように、このタオル噛んでてね」
「・・・俺、タオル噛むの嫌いだな・・・・・・。・・・んぶっ!?」
シェリーはニッコリ笑って、ロバートの口にタオルを突っ込む。
「おとなしく・・・してようね・・・・・・?」
「・・・んぐ・・・(・・・はい・・・)」
シェリーはそれを見て、嬉しそうに笑う。
「よしっ! じゃあ始めるよ!」
「ん」
ロバートは短く返事をして、タオルを噛みしめる。
『ギリッ』
奥歯からは、鈍い音がする。