表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/60

No,20  シェリーの軽いウソが・・・・・・

「さてっと」

 ロバートは右肩に刺さったままのナイフのグリップを握り、少しずつ引き抜いていく。

『・・・ズッ・・・グチュッ・・・』

「ぐッ・・・う・・・うぁ・・・・・・!」

 ナイフは、徐々にロバートの体から抜き出されていく。

 それと同時に、今までロバートの中で抑えられていた痛みが訴えられる。

『・・・ズグッ・・・ズッ・・・ズズッ・・・』

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・・・・。ッう、ああッ!!」

 長いナイフが、少しずつ姿を現し始める。

「うあッ! あああああぁああああああああああああぁああッ!!」

『ズズズっ・・・ズッ、グチュッ・・・ズボッ』

 ナイフはロバートの血を刃先に滴らせ、完全にその姿を現す。

「ぶはっ! はぁ・・・はぁ・・・はぁっ・・・・・・。いっ痛ぇ――っ!!」

 ロバートは出血を止めようと左手で傷口を押さえるが、傷口からは容赦なく真っ赤な血が溢れ出し、その細い指を赤く染めていく。

 急に、部屋の外に軽い足音が鳴り響く。

 ロバートは目を閉じて耳を澄まし、小さな声で言う。

「シェリー、か・・・・・・」

 そう言うとスッとソファから立ち、ドアの前まで歩いていく。

『ガチャッ』

「ただい・・・んぎゃあ!!」

 シェリーは帰ってきて早々、血だらけでドアの前に立っていたロバートを見て悲鳴をあげる。

「ん、おかえりー・・・・・・。もうナイフ抜いといたから、早く輸血の準備しよっか」

 あくまで冷静なロバートに対し、少しグロテスクなロバートの傷口を見て、とても動揺しているシェリー。だがその手には、ロバートに頼まれた白い箱が、しっかりと抱えられている。

「ちっ、ちち血がァ! きっ、傷口っ、ちりょっ、治療しなきゃっ!?」

「血、傷口、治療・・・・・・? 血が出てる、治療しなきゃ、で当たってる?」

「・・・・・・!?」

「ま、いっか」

「っあ、ちょっと!」

 ロバートはシェリーの手から白い箱を取り上げ、中を探り出す。

「んーと、注射器はーっと」

 ロバートは血がベットリと付いたままの手で、中にあるらしい注射器を探している。

 そのせいで、中に入っている器具や包帯が、血で汚れていく。

「ロっ、ロバート! あの、私が探すから、ちょっと待ってて」

「ん〜・・・・・・。ん。わかった」

 そう言うとロバートは、白い箱の蓋を開けたままシェリーに手渡し、ヨロヨロとソファへと戻っていく。

 床には、ロバートの血が点々と続いている。

「・・・・・・」

「どうしたの? シェリー?」

 ロバートはシェリーの視線に気付き、尋ねる。

「え!? いやっ、ただそのっ・・・・・・」

「・・・? ・・・・・・何?」

(うっ・・・・・・! 血まみれの姿に見とれてた、なんて言えない!)

「っその、・・・・・・傷、痛くないのかなぁって思って、さ・・・・・・」

 シェリーは目を泳がせながら、変な笑いを浮かべる。

「ふぅ〜ん・・・・・・。んで、本当はぁ?」

「うぇ!? なんで知って・・・いや、違くてっ・・・・・・! あ! ほら! 注射器あったよ!」

 シェリーは、途中で話を変える。

「あぁ、ありがとう。それ持って、こっち来てー」

 ロバートは左隣をポスポスと叩く。

 シェリーはその様子を見て、とりあえずホッと胸をなでおろす。そして、ボフッと音をたててソファに座り、注射器と左腕を差し出す。

「んじゃ、血ィ取るよー」

 そう言うとロバートは、ゴムのようなものでシェリーの左腕を縛り、手早く消毒液で拭く。

「少し痛いけど、まぁ我慢してね」

『プスッ』

「ったぁ・・・・・・やっぱり痛い・・・・・・!」

「ん〜・・・もう少し・・・・・・。・・・はいっ、終了〜」

 ロバートはそう言うと、シェリーの腕から注射針を抜き、少し血の出たところに、ガーゼを宛がう。

「輸血はこんな感じかな・・・・・・。・・・ところでシェリー、さっきのウソは何だったの?」

 シェリーは一瞬硬直し、ぎこちない笑みを浮かべる。

「そっ、それはなんの事かしら〜!?」

 ロバートはニッコリ笑って、シェリーに問いかける。

「・・・さっきのウソは、ナ〜ニ?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ