No,2 金の稼ぎ方
翌日。
ロバートは家から金を持って森を出ると、いつもの果物屋のオヤジの所へ行く。
「よお、にいちゃん! 見ない顔だな、旅人かい!?」
ロバートは苦笑いをし、返事をする。
「ええ、そうなんですよ。ところでオヤジさん、ここの店、よく品物が大量に盗まれるんですよね。
俺が今日一日、店番をしていましょうか?」
「ありがてえとは思うが、盗まれたモンは今まで一度も犯人が見つかっていねぇんだ。・・・警戒するにこしたことはねぇ」
「そうですか・・・・・・」
果物屋の言葉を聞くと、ロバートは少し悲しそうな顔をする。
そして何を思ったのか、果物屋に持ってきた金を渡す。
「これを預けておきます。店番の仕事が終わったら、中に入っている分の5割を足してくれれば結構です。今渡したのは、俺の信用のためです。・・・どうですか?」
ロバートは渡した金を、果物屋に握らせる。
「旅をするには、色々とお金が必要なんですよ・・・・・・」
一見、悪人のようにも見える。
果物屋のオヤジは鼻から息をフンッと吐いて、ロバートからの金を受け取る。
「しょうがねぇな。ただし、1時間ごとに様子見に来るからな。変な気は起こすなよ」
そう言って果物屋は、向こうを向いて歩いていった。
「ありがとう、オヤジさん。そして・・・・・・、すいません」
ロバートは果物屋のオヤジを見送ると、大きな麻袋を取り出す。そしてそれに、リンゴやなし、スイカなどを一気に流し込む。
その手つきは素早い。
恐らく、やりなれているのだろう。
袋がいっぱいになると、ロバートは思いそれを肩に担ぎ、もと来た道を走り出した。
その頃の果物屋のオヤジ。
「って、え!? 何で帰ってんの!? 俺!! それにこの金何!?・・・・・・またいつもの、ヤツの仕業かっ!」
そしてまた、自分の店へと帰っていった。
ロバートが家に着くのは、夕方頃だった。
だが、玄関の前でぴたりと立ち止まる。
(この気配は・・・・・・シェリー、だよな。何で今更ここに・・・・・・。俺の事を憶えてる?
・・・いや、そんなはずはない。・・・・・・確かめよう)
ロバートは肩の荷物をおろし、右腿に吊ってあるホルスターから、一つの銃を取り出す。
愛銃、マグナム。
ロバートは一つ、深呼吸すると、勢い良くドアを開ける。
『バンッ』
「キャア!!」
ドアを開けると同時に、中にいたシェリーが甲高く短い悲鳴をあげる。
「あれ? ・・・ロバー・・・」
「強盗や、その類だったら帰ってください」
マグナムの銃口をシェリーに定めると、シェリーは驚きと恐怖で顔を強ばらせる。
「ロ・・・ロバート・・・・・・?」
ロバートは、少し眉をひそめる。
(本当に、俺を憶えていた・・・?)
「・・・なぜ、憶えているんですか・・・・・・?」