No,19 治療の説明中。
ロバートは、スゥッと息を吸う。
「まずはー、適当に麻酔薬でも調合してー(ウソ)、針と糸を用意してー、ナイフ抜いてー、縫合手術開始〜♪・・・みたいな感じの予定?」
シェリーはロバートの今からの予定を聞いて、唖然とする。
「あああのさぁ、今からでも別の国に行かない? そのほうがいいよ、絶対にいい!」
シェリーはしどろもどろになりながらも、必死にロバートを説得しようと試みる。
だが逆に、ロバートに丸め込まれてしまう。
「シェリーが帰ってくる前、ここのホテルの支配人に最寄の国を聞いたらさ、俺らがもといた国、サンタニアだけらしいんだ(ウソ)。当然、もう向こうには戻れないし、2番目に近い国は、今から行けば2、3日はするらしい(ウソ)。その間に、俺が出血多量で死ねば(ウソ)、元も子もない。・・・今、ここでやるしかないんだ(大ウソ)」
「・・・そっか・・・・・・」
シェリーは、ロバートの数々のウソをすべて信じ、しょんぼりとする。
「っでもロバート、自分で自分の縫合手術なんてできるの!? 途中で気絶なんかしたら・・・・・・!」
「うん。そこで! シェリーの出番って訳」
ロバートは、シェリーの肩をポンポンと叩く。
シェリーは一瞬、石のように固まり、一気に青ざめた顔になる。
「・・・私が、やるの・・・・・・?」
「たぶんね。その時の状況によるけど」
「・・・どんな時?」
「例えば、俺が何らかの原因で途中気絶したとする。その時の後始末とか。縫合手術の経験、もしくはそれに関する知識があるなら、すべて任せる」
「・・・えっと、知識も経験もないからー・・・・・・、ロバートが気絶した時の後始末?」
「んー・・・・・・。そうなるね」
シェリーはしばらく黙り込む。
反対に、ロバートはニコニコと笑っている。
「・・・わかったわよ! だから、私のやるべき事を具体的に説明して!」
「うん。わかった・・・・・・。始める前は外にいても部屋の中にいてもいいよ。血とか苦手なら、外で待っててもいい。できれば、いつでも駆け付けられる状態で」
「うん、それで?」
「俺は立ちながら縫合するから、何か大きい音がしたら来て。例えば、俺が倒れた時とか、ね。」
「わ、わかったケド・・・・・・。実際そうなったら、私は続きとかしればいいの? もしくは止血とか・・・・・・」
「うん、そうして」
そういうとロバートは、右肩に刺さったままのナイフを見下ろす。
「そのナイフ抜いたら、輸血必要になるくらい、血、たくさん出るね・・・・・・」
「んー・・・、確かに。・・・シェリー、血液型は何?」
「O型だけど、ロバートは同じなの?」
「ん、O型。シェリー、ジープの中に、白いこれくらいの箱があるからさ、それちょっと取ってきてくれる? その中に注射器があるからさ。」
ロバートは言いながら、胸の前で少し大きめの箱を表す。
「わかった、白い箱ね」
そう言うとシェリーは部屋のドアを開け、外へと走っていった。