No,15 戦いの前奏
「あ〜・・・なるほど、だから弾がもったいないわけね」
ロバートは1人呟きながら、左手のアサルトライフルを抱えなおす。
そして大きく息を吸うと、装備兵にも聞こえるように、大声で言う。
「みーなさーん! いつまでも茂みに隠れてると、結構危ないよ〜!?」
が、誰1人、いや、グレイ以外は姿を見せない。銃声もやまない。
ロバートはふぅっとため息を吐き、
『ジャキッ』
アサルトライフルを敵に向け、
『ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ』
撃ちまくる。
『ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ』
少し楽しそうに撃ちまくる。
『ガガガガガガガガガガガガガガガッカララララララッ・・・』
・・・が、途中で弾切れになったようだ。
「・・・ん? あぁ、弾切れか・・・・・・」
ロバートはいつもの無表情に戻り、空になったマガジンを入れ替える。
茂みからはロバートの危なさ・・・ もとい、ロバートの強さを知った装備兵達が、小さくうめき声をあげながらヨロヨロと出てくる。
全員、手や足、あるいは腹に、ロバートの撃った弾が命中している。
ロバートはニッと笑い、1発も弾が当たっていないグレイを見る。
「グレイも相変わらず、ナイフ、使ってたんだ」
グレイのその両手には、刃渡り30cm程のサバイバルナイフが握られている。
おそらくそのサバイバルナイフで、アサルトライフルの弾を斬り落としたのだろう。
「当然でしょう、私はナイフしか使えないんです。それはあなたも知っているでしょう?」
「ん。知ってる。・・・で、グレイ以外みんな戦えなさそうだけど、まだ続ける?」
グレイは少し考える。
「私の任務は脱走した被験体達の捕獲です。それができないような状況に陥れば、その任務は一時中断となります」
ロバートは顔をしかめて言う。
「だーかーらー! グレイはその任務を一時中断して帰んの? それともー・・・・・・、グレイは戦えるって事?」
グレイはフッと笑い、サバイバルナイフを構える。
「私は戦えますので」
ロバートもニッと笑い、左手で抱えていたアサルトライフルをその辺に放り投げ、右手のマグナムを構える。
「・・・やっぱりな」
ロバートは、自分の姿がグレイに見えるように、割れた窓から現れる。
グレイは細く長く息を吸い、ピタリととめる。
そしてサバイバルナイフを逆手に持ち、
『ダッ』
一気にロバートの下へ走りくる。
「おー、前より速くなったねー」
ロバートは気の抜けた声で話しながらも、マグナムの銃口を正確にグレイに向ける。