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No,12  2人の帰宅、そして『クラウド』

 あたりは暗くなり、もうとっくに日は沈んでいた。

 ロバートとシェリーは街を出て山を上り、やっとの思いで家にたどり着く。

「やぁ――っと家に着いたぁ――!!」

 ロバートは静かにドアを閉め、小さな声でシェリーを呼ぶ。

「・・・シェリー、荷物置いてこっちに来て」

 シェリーは不思議に思ったが、とりあえず言われた通りにする。

 静かに、音を立てないようにロバートの下へと行く。

「・・・どうしたの?」

 シェリーは声を潜めて尋ねる。

「気づいてた?」

「え? ・・・何を?」

「オヤジ・・・ルーディーのところから、ずっと誰かが尾けてきてる」

 シェリーは静かに、だが素早く窓の近くへ行く。

 外を見ると、何かが反射したのか、それともライトの光なのかは解らないが、キラリと光るものが見え隠れする。

「・・・何アレ・・・・・・。ロバートの知り合い?」

 その光るものは、明らかに銃身が反射したものだとわかる。

 シェリーが脂汗をかきながら冗談混じりにいうと、ロバートは少し考える。

「ん――・・・・・・。たぶんね」

「・・・え? 何、私達、今から襲われちゃう、みたいな?」

 シェリーは冗談でしょ、というように瞬きをする。

「ん――・・・・・・。ん、襲われると思うよ、この家は確実に」

 シェリーは最後の希望を切り捨てられ、少しの間、呆然とする。

「襲われたときの対策はあるの?」

「あるけど・・・・・・シェリー、銃とかの武器使ったことある?」

「銃? 銃ならあるよ」

 そう言うとシェリーは、右腰に吊っているホルスターから、ハンドガンを一丁取り出す。

「オートマチックか・・・・・・。弾の残り数は?」

 シェリーはあごに手を当てて考える。

「えっ・・・と、確かぁ〜〜〜・・・・・・! あっ、そだ! 一昨日に結構買ったよ! かるく200はあると思うよ!」

「200か・・・・・・確かに結構あるね。でも――・・・・・・、足りない」




 その頃、グレイ達は――

「・・・クラウド・・・? まさかその子は、クラウドなのか!?」

 拘束されていながらも必死に叫ぶルーディーを、グレイは哀れむような目で見下ろす。

「・・・静かにしてください」

 グレイがそう言うと、黒装束の男の一人がルーディーの腹に蹴りをいれる。

「・・・ぐっ・・・!!」

 ルーディーが悶え苦しむ様を見ながら、グレイは静かに話し出す。

「確かに、あの子はクラウドさんです。今回の私の任務は、あなた達2人と、もう1人の脱走者の捕獲なんですよ」

「もう1人の脱走者・・・・・・!?俺達以外にも、実験塔から脱走した奴がいたのか・・・!?」

「・・・あなたの知らない人ですよ」

 グレイは、ルーディーからフイッと目を逸らし、小さな声で言う。

 ルーディーはじっと黙り込む。

「・・・俺とクラウドは、また実験塔に行くのか・・・・・・」

「実の子供と一緒に行けるんですから、いいじゃないですか」

「俺は・・・俺は、もうあんな所に帰るのは散々だ! ・・・せっかくクラウドを連れて逃げる事が出来たのに・・・・・・!!」

 ルーディーは絶望に満ちた顔を俯ける。

「・・・あなたの、もう1人の・・・・・・」

 グレイがポツリと呟くと、つられてルーディーは力なく顔を上げる。

「あなたのもう1人の息子はどうするんですか・・・・・・?」

 グレイはルーディーを見ながら、ほんの少し、悲しそうな顔で言う。

「・・・俺の、もう1人の息子・・・・・・?」

 グレイはハッとして、椿を返す。

「急ぎましょう。この2人はジープに乗せて、先に実験塔に行かせてください」

 グレイはスタスタと歩きながら、近くの黒装束の男達に指示を出す。

「おいっ! まてっ、グレイ!! 何なんだ、さっきのは・・・・・・!」

 叫ぶルーディーとグレイの間に、黒装束の男が立ちはだかる。

『ガッ』

 ルーディーは別の男に、後頭部に手刀を入れられ、ガクリと気絶する。

 そんなルーディーをグレイは横目で見ている。

 やがてそれから目を離すと、はっきりした声で黒装束の男達に言い放つ。

「次は、No,0117・・・ロバートの捕獲です。急ぎましょう」

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