No,10 ちゃんとした手伝い
「ほらっ、オヤジさんいったわよ!」
「シェリー、結構ノリ気だね」
ロバートはニッと笑って言う。
「違うわよ! 私はあまり盗みをしない主義なの!手伝うのもちょっとイヤなの!」
「まぁまぁ、これが最後の顔合わせかもしれないんだから。できれば、今日はここでゆっくりしていようよ」
「・・・・・・そうね、最後かもしれないしね」
「・・・・・・ありがとう、シェリー」
「・・・あっ、そーだ! 最後の親孝行なら、ちゃんと手伝ってみようよ!そのほうがスッキリ旅に出られるんじゃない?」
ロバートはしばらく言葉の意味が解らない様子だったが、やがて、はっとしたように目を見開く。
「そうか、・・・・・・そうなんだ。今はシェリーがいるから、俺のことを憶えていなくても大丈夫なんだ・・・・・・」
ロバートは、最後に柔らかく微笑み、シェリーを見つめる。
「ありがとう、シェリー・・・・・・」
シェリーは初め驚いていたが、ロバートが微笑むのを見て、少しはにかんで見せる。
(本当はそこまで考えていた訳じゃないけど・・・結果オーライ?)
「それじゃ、マジメに商売しましょうか!」
「ん、そだね!」
それから二人は、1時間ごとに果物屋のオヤジが来るのを楽しみにしながら、頑張って商売を続けた。
ちなみにロバートは、1時間ごとに来る果物屋のオヤジに「初めまして」とあいさつをしていたのだった。